ヒロアカaqua


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筆記試験を終え演習試験当日
校舎前のロータリーに集合した私達は全員コスチュームを身に纏っている
唄ちゃんは憂鬱そうだ

「それじゃあ演習試験を始めていく
この試験でももちろん赤点はある、林間合宿行きたけりゃみっともねえヘマはするなよ」

そう告げた相澤先生の隣には他の雄英教師の面々
流石にこれには生徒達も疑問を抱く

「諸君なら事前に情報仕入れて何するか薄々わかってるとは思うが」

「入試みてぇなロボ無双だろ!」

「花火!カレー!肝試しー!!!」

既に合格した気満々の上鳴くんと三奈ちゃんが叫ぶけれど、相澤先生の首元の布の中からひょこっと校長先生が登場した

「残念!諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」

「変更って…」

戸惑う一同
私もそうだ、対ロボだと思っていたけど違うとすれば心構えが変わってしまう

変更理由はヴィラン活性化の恐れがあること、それを加味するとロボとの戦闘訓練は実戦的ではないということ
これからは対人戦闘・活動を見据えたより実戦に近い教えを重視するらしい

「というわけで諸君にはこれから2人1組でここにいる教師1人と戦闘を行ってもらう!」

一気に緊張が走る生徒達
先生達との戦闘だなんて想像すらしていなかった
相手はプロヒーロー、一筋縄なんかじゃいかない

「尚ペアの組と対戦する教師は既に決定済み
動きの傾向や成績、親密度、諸々を踏まえて独断で組ませてもらったから発表してくぞ
まず轟と八百万がチームで俺とだ」

不敵に笑う相澤先生
焦凍くんと百ちゃん、その組み合わせに心がチクッとしたので慌てて落ち着ける

「(これは試験、そういうんじゃないから!)」

前に学級委員選抜の際も似たような感情を抱いたのを覚えてる
焦凍くんと百ちゃん、同じ推薦組で美男美女
ずーんと落ちていくテンションのまま話を聞く

「そして緑谷と爆豪がチーム」

「デ…!?」

「かっ…!?」

この組み合わせにはクラス中がギョッとした
不仲すぎる2人がまさか同じだなんて誰が想像できただろうか…そして

「で、相手は「私がする!協力して勝ちに来いよお2人さん!!」

その場に現れたのはオールマイト
よりによって2人の相手はオールマイト、No.1ヒーロー

一波乱ありそうな組み合わせに冷や汗が伝う

「そして舞羽と海色がチーム、相手は「あら、遅れちゃったかしら」

再び遮られた相澤先生の言葉
聞こえた声に振り返るとテレビや雑誌でよく見かけるギルティルージュがいた

「な…なんでギルティルージュが…!?」

「私非常勤講師なのよ、校長に呼ばれたから来ちゃった」

にっこり微笑むギルティルージュに峰田くんが盛り上がってる
唄ちゃんの顔色がよくないのでこちらも一筋縄じゃいかなさそうだと気合いを入れ直す

その後他の面々も割り振られていく

「それぞれステージを用意してある、11組一斉スタートだ
試験の概要については各々の対戦相手から説明される、移動は学内バスだ
時間が勿体ない速やかに乗れ」

唄ちゃんと合流し、ギルティルージュについてバスに乗り込む

「やっほー唄!どう?驚いた?」

「驚きますよ!非常勤講師って何ですか!初耳ですって」

「私ここの卒業生でね、今は雄英の広報も兼任してるのよ
CMとかポスターとか、あとは雄英のTV特集とかその辺り考えてるの私だもの」

「過労死しますよ」

ヒーロー活動に女優に雄英の広報だなんて多忙すぎるなあと2人のやりとりを眺めているとギルティルージュがこちらを見た

「それと、あなたが海色雫ちゃんね」

「あ、はい!」

「唄から聞いてるわ、今日はよろしく」

にっこりと微笑むギルティルージュ
綺麗だとは思ってたけど、本物は更に綺麗でちょっと心が解れていく
ギルティルージュと会ったなんて知ったらお父さんが羨ましがりそうだ

「到着する前に説明するわね
制限時間は30分、あなた達は"このハンドカフスを私に掛ける"もしくは"どちらか1人がステージから脱出"することで勝利となるわ」

「逃げても良いってことですか?」

「ええ、そりゃあ格上だもの」

さらりとそう告げたギルティルージュにハッとした
これは試験、遊びじゃない
先ほどまでは綺麗な人としか思ってなかったのに急に彼女が怖く思えてきた

「今回は実戦に近い状態での試験、私をヴィランそのものだと考えなさい
会敵したと仮定し、そこで戦い勝てるなら良しだけど実力差が大きすぎる場合は逃げて応援を呼んだ方が賢明よ」

そこまで説明を受けた時、バスが目的地へ到着する
雄英の数多くある運動場の1つであるそこはテーマパークのような建造物が並んでいる

「あの、けれどそれじゃあ逃げる以外の選択肢がないんじゃ…」

「そうね、だからこんなものを渡されてるわ」

ギルティルージュが取り出したのはおもり
体重の約半分の重量を装着するハンデらしい

それを両手足に着けたギルティルージュは「意外とずっしりくるわね」と呟いている

ステージ中央に移動し、その場で待機する私と唄ちゃん
このステージのゲートは1か所のみ、ギルティルージュから逃げ切ってそのゲートを潜る必要がある

『皆位置についたね』

スピーカーからリカバリーガールの声が聞こえてくる

『それじゃあ今から雄英高1年、期末テストを始めるよ!
レディイイ…ゴォ!!!!』

開幕

すぐに唄ちゃんと物影に隠れ相手の出方を窺う

「唄ちゃん、ギルティルージュの個性って」

「サキュバス…魅了系だけれど、他にも羽で飛べたり、眷属の」

そこまで言ったと同時に唄ちゃんと私を囲うように無数のコウモリが現れる

「なっ」

「えっ」

先手を取られた
そう思ったのも束の間
そのコウモリたちが一斉に襲いかかって来た











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