ヒロアカaqua


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6月最終週
期末テストまで残り1週間を切った状況

クラスが阿鼻叫喚に包まれる中、昼ごはんを食べにきた私たち
いつも適当に声をかけて行けるメンバーで食堂に行くことが多いけれど、保須での一件以降緑谷くんと飯田くんといることが増えた気がする
焦凍くんは相変わらず一緒だ
そこに元々緑谷くんと仲の良いお茶子ちゃんも加わることが多い

「普通科目は授業範囲内からでまだなんとかなるけど…演習試験が内容不透明で怖いね」

「突飛なことはしないと思うがなぁ」

「普通科目はまだなんとかなるんやな…」

好成績の緑谷くんと飯田くんに遠い目をしたお茶子ちゃん

「1学期でやったことの総合的内容とだけしか教えてくれないんだもの相澤先生」

「戦闘訓練と救助訓練、あとはほぼ基礎トレだよね」

梅雨ちゃんとそう話して1学期のことを思い出す
特に目立ったことはしていないはずだけど…どんな内容なんだろう
目の前で蕎麦を啜る焦凍くんを眺めつつ考えていると、ゴッとすごい音がして緑谷くんの頭にクリーンヒットしたのはB組の物間くんの肘

「ああごめん、頭が大きいから当たってしまった」

「物間くん!よくも!」

物間くん、確か何かとA組に突っかかってくる子だった気がする

「君らヒーロー殺しに遭遇したんだってね、体育祭に続いて注目を浴びる要素ばかり増えてくよねA組って、ただその注目って決して期待値とかじゃなくてトラブルを引きつける的なものだよね
あー怖い!いつか君たちが呼ぶトラブルに巻き込まれて僕らにまで被害が及ぶかもしれないなあ!ああ怖…ふっ!」

「シャレにならん、飯田の件知らないの?」

現れたのは拳藤さん
手刀で物間くんが落ちていく姿にポカンとした
ああやって人が倒れるのを見るのは何気に初めてなのでびっくりしてしまう

「ごめんなA組、こいつちょっと心がアレなんだよ」

「拳藤くん!」

心がアレとはどういうことだろうか
というか物間くん大丈夫?生きてる?

「あんたらさ、さっき期末の演習試験不透明とか言ってたね
入試ん時みたいな対ロボットの実践演習らしいよ」

「え!?本当!?何で知ってるの!!?」

「私先輩に知り合いいるからさ、聞いた
ちょっとズルだけど」

「ズルじゃないよ!そうだきっと前情報の収集も試験の一環に織り込まれてたんだ
そっか先輩に聞けばよかったんだ、何で気付かなかったんだ」

ブツブツ言い始めた緑谷くんの通常運転に慣れっこのA組はともかく拳藤さんは明らかに引いている
初見はびっくりするよねーと微笑ましく見守りながらご飯を食べ進めた

「バカなのかい拳藤、せっかくの情報アドバンテージを!
ココこそ憎きA組を出し抜くチャンスだったんだ…」

「憎くはないっつーの」

再び手刀を入れた彼女に苦笑いしてしまう
B組の姉御的存在なんだろうなあ

「てゆーか、雫ちゃんいっぱい食べるねえ」

「え」

私の前には空のお皿が数枚積み上がっている状況
今まではみんなと同じように一食分しか食べてなかったんだけれど、取り繕うのをやめてからは本当に食べたい量だけ食べるようにしていた

「個性の影響かわかんないけどすぐお腹空いちゃうんだ、それに全然足りなくて…」

「それでもそのスタイルを維持できているのが凄いわ、何かやっているの?」

「んー?体質なのかな?」

特別なことをやった覚えはないし、家で訓練も続けてはいるけれど別にそれでカロリーを消費しているわけでもない
おそらく食べても太らないアレなんだと思う





その日の放課後、B組の拳藤さんから聞いた話をみんなに伝える

「んだよロボならラクチンだぜ!!」

安心したというような笑顔を浮かべる三奈ちゃんと上鳴くん

「お前らは対人だと"個性"の調整大変そうだからな…」

「ああ!ロボならぶっぱで楽勝だ!」

「あとは勉強教えてもらって、これで林間合宿バッチリだ!!」

盛り上がっている一同
その横を通り過ぎる爆豪くんは「人でもロボでもぶっとばすのは同じだろ、何がラクチンだアホが」と言う

「アホとは何だアホとは!」

「うるせえな!調整なんか勝手に出来るもんだろアホだろ!!なあ!?デク!
個性の使い方…ちょっとわかってきたか知らねえけどよ、てめェはつくづく俺の神経逆撫でするな」

爆豪くんがそう告げたことで緑谷くんがビクッとする
最近見てなかったけれどいつぞやの戦闘訓練の時の私怨丸出しの2人を思い出した

「体育祭みてえなハンパな結果はいらねえ…!
次の期末なら個人成績で否が応にも優劣つく
完膚なきまでに差ァつけて、てめェぶち殺してやる!」

「ちょっと勝己、いい加減に」

唄ちゃんが止めようとするけれど、キッとした目が彼女に向けられる

「うるせー!オメーは黙ってろ!!
あとぶち殺すのは轟ィ!てめェもだァ!!」

急に矛先が焦凍くんに向けられたのでびっくりするけれど、爆豪くんの中ではやっぱり体育祭の件が納得できていないんだろう

「久々にガチなバクゴーだ」

「焦燥…?あるいは憎悪…」

出て行った爆豪くん、黙りこんだままその場に立ち尽くす唄ちゃんを心配そうにみる緑谷くん

「唄ちゃん…?」

「何で私には宣言しないわけ!!?」

「「「「あ、そこなんだ」」」」

負けず嫌いな唄ちゃんらしいけれど爆豪くんとの戦いは体育祭の時に見た感じだと怪獣大戦みたくなるから勘弁してほしい
2人とも窮地に陥ると笑っちゃうような戦闘狂なため下手すると周りまで巻き込まれかねないもんね…










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