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それから2年の歳月が流れる
私は中学3年生になっていた
「では次の問題を海色さん」
先生に指名され黒板の前まで行ってから答えを書く
少し難しい問題らしいけれど予習もしているし問題はない
記入し終えれば先生は満足そうに頷いた
「正解、流石ね」
「ありがとうございます」
にこりと微笑んでから自分の席に戻れば友達の視線を感じたのでピースしておいた
ここ凝山中学は静岡県内でトップに入る進学校
ヒーロー科へも多く輩出している上に偏差値も高い
そんな学校に進学できたのは一生懸命勉強したのとこの個性のおかげだろう
授業が終わり、お昼ご飯を食べようと友達と食堂へ向かう
「ってかこの前のテストやばかったんだけど」
「わかる!志望校絶対いい判定でないよ…」
両サイドで項垂れる友達を他所に今日の昼ごはんは何を食べようか考えていると、ふと窓の外に目立つ髪色の彼を見つけた
「あ、ごめん、今日は私パスで」
「え!?」
「ちょ、雫!?」
走り去る私に驚いた友達はぽかんとした後に顔を見合わせる
先ほど見えた中庭に行けば案の定彼がベンチに腰掛けていた
「焦凍くん」
声をかければびくっとした後で綺麗なオッドアイの瞳がこちらへ向けられた
「雫か」
「何してるの?」
「昼休みここで待っててほしいと言われた」
「(あ、それ告白なんじゃ…)」
辺りを見渡せばこちらに近づきたそうな女子生徒がいることに気が付き邪魔しちゃったなーと少し反省する
「飯もう食ったか?」
「え、まだだけど」
「なら食堂行くか?」
そう告げた焦凍くんが立ち上がろうとするので慌ててベンチに押し戻す
「私トイレに行ってくるからもうちょっとここで待っててくれないかな?」
「別に構わねえけど…」
「ありがとう!」
なるべく急いでその場を離れてそーっと様子を窺うと、女子生徒が焦凍くんに話しかけていた
やぱり雰囲気的に告白で間違いなさそうなので自分の行動に称賛を送る
焦凍くんは私の許嫁
あの日家にやってきたエンデヴァーが言ったように焦凍くんの子供を産むことが私の役目らしい
けれど後日顔合わせをした私に対して焦凍くんは「結婚なんてしねぇ、クソ親父の思い通りにはならない」と告げた
そのため私達は互いに許嫁というものになるつもりは毛頭ない
けれど現状エンデヴァーに対抗することもできないのであくまで形上、許嫁というものに収まっている
「(あの子可愛かったし焦凍くんほんとに付き合ったりして)」
そうなれば許嫁の件は白紙に戻るだろう
こちらとしても好都合なので焦凍くんには是非積極的に恋愛をしてもらいたい
とはいえ別に焦凍くんを嫌いなんてことはない、むしろ気が合うし一緒にいて楽しいので仲はいい方…だと思っている
少し時間を置いてから中庭に戻れば焦凍くんが何事もなかったかのようにこちらに顔を向けた
女子生徒はもういなくなっているので2人だけだ
「遅かったな、腹痛ェのか?」
「そういうことは女の子に言うものじゃないよ」
ド天然すぎるのがたまに傷だけど、焦凍くんは基本的にはいい人だ
エンデヴァーのことが絡むと雰囲気も変わって荒々しくなるけれど
焦凍くんとエンデヴァーの間に何があったのかは知らない
きっとそれは聞くべきではないし、話してくれたとしても私にはどうすることもできない
「(私は何もできないから)」
強者に淘汰されるこの世界で私は無力だ
強い個性を持っていようが、上手く使えようがそんなことは関係ない
「そうか、なら早く食堂行くぞ」
「うん」
焦凍くんは控えめに言ってもイケメン、だから注目の的になる
一緒に歩いていれば色んな視線を向けられて気分がいいものじゃないけどそれが焦凍くんと仲良くしない理由にはならない
私は焦凍くんと友達だし、それを羨ましいと思うのなら自分から話しかければいいだけだ
「ね、さっきの子と付き合うの?」
「お前、まさかわざとか」
「ううん、なんとなく告白だろうなって思っただけ」
焦凍くんは呆れたようにため息をついてから興味なさそうに「恋愛とか興味ねえよ」と言い放った
中学3年、流石に異性への興味はあるだろうにそう言うのは、恋愛をするほどの余裕がないからだろう
それほどまでに焦凍くんの中でエンデヴァーという存在は大きい
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