ヒロアカaqua


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世界総人口の約8割が何らかの特異体質である超人社会となったこの世界

その特異体質のことを"個性"と呼ぶ

また、若年層ではほとんどが個性が発現しており、齢4歳までに何らかの個性が現れると言われている



そんな世界でも序列はある

金・名声・人望、旧社会でもこれらは指標とされていたがここに個性が加わることで大きく序列か変わった

個性にも様々な種類があるが四元素系の個性は重宝されてきた

風・火・地・水、よくゲームなどに採用されるそれはシンプルでありながら強力な個性である

その一角を担う水系個性の家柄は複数存在し、その中に海色家があった

由緒正しい立派な豪邸ではなく、少し大きいごく普通の一軒家

個性発現の第1世代より受け継がれてきた海色家の個性は第5世代と呼ばれる少女にも遺伝していた

「お母さん、みてみて!」

洗濯物を干していた母親に嬉しそうに駆け寄ってきた少女は海色雫

海色家の娘にして彼女もまた水の個性の持ち主である

雫が手をかざせば何もない空気中から水泡が出来上がる、そしてそれはどんどん温度を下げ今度は氷結した

水だけでなくその温度を変え氷も水蒸気も操る彼女はまさに天才

あまりに強大すぎる力は危険が伴う

そのため雫は幼少期から個性を使いこなすべく特訓を重ねていた

普通の子供が公園で遊んでいるような時間でも雫は父親と特訓を繰り返す

そんな日が続き、本当なら性格に難が生じてもおかしくないはずだが雫は違った

「嫌じゃないよ、だってできることが増えるの楽しいもん」

上昇志向の強い雫はみるみるうちに個性を使いこなし、将来はヒーローになりたいと言うようになっていた

海色家からはまだヒーローは誕生していない

ヒーロー以外にも選択があり、そういった選択をする者が多かった故である

海色の家系である雫の父親もごく普通の商社マンであった

「雫はどうしてヒーローになりたいの?」

母親の問いかけに5歳前後の少女は笑顔を浮かべた

「私がヒーローになったらお父さんとお母さんが楽できるでしょ?」

無邪気に、けれどはっきりとそう告げる雫は理想的な子供だろう

両親思いで優しく努力家

そんな彼女のことを両親は愛情もって育て上げた

何もかもが順風満帆だった雫だが、彼女が中学の入学式を終えたその日

彼は現れた

「キミが雫か」

入学式を終え、両親と帰宅してからしばらくして訪ねてきた一人の男

テレビで見たことのある通り威圧感が凄まじいその男に雫は驚くが、男は続ける

「キミはうちの息子の許嫁だ」

雫にとって恋愛とはお伽話のようなものだった

少女漫画を読んでは自分を重ね、いつか自分にもそんな相手が現れるのだろうかと想像するほどには憧れていた

しかしいきなり許嫁がいると言われても困ってしまう

許嫁ということは両親は合意なんだろう、何も聞かされていないことに困惑するが話はどんどん進んでしまう

「あの、待ってください…そんな…急に言われても」

「急ではない、これはずっと前から決まっていた」

自分の意見が通らないことは今までなかった

何故なら雫はとても頭が良く、自分がどうすれば最前かを導き出せる少女だったからだ

両親もいつだって雫を尊重してきたはずで、とてもじゃないが許嫁を決めるような両親には思えない

「あの…本当にお父さんとお母さんは納得したんですか?」

雫のその問いに男はぴくりと眉を動かした

「でなければ許嫁にはならないだろう」

チラッと両親を見れば申し訳なさそうな顔をしており、雫はやはりこれが両親の決めたこととは思えなかった

「どうして私なんですか」

「理由が必要か?」

「当たり前です!」

雫がそう告げると男は息を吐く

そしてその青い瞳を雫に向けた

「キミには焦凍の子を産んでもらう、それが理由だ」

どこまでも冷たい物言いに雫は全身が硬直するのを感じた

その後言いたいことを言って帰っていった男は近々顔合わせをすると言い残して行った

家族3人になった途端、父親が頭を下げる

「昔あの人には命を助けてもらったんだ…その恩があって断りきれなかった…!」

そう告げた父親

「ごめんなさい、ごめんなさい!」

謝罪し涙を流す母親

一体何故こうなってしまったのだろうか

ただわかることは両親はやはり従うしかなかったということだった

自分が許嫁になることを拒否すれば両親に迷惑がかかる





人生で初めて思い通りにならないことに直面した海色雫はこの日を機に考えを改める

どれだけ自分が努力をしようと所詮強者に淘汰されるだけなのだと、抗うためには力が必要だと

12歳の誕生日を迎えたばかりの少女は心を隠し良い子であり続けた、大好きな両親のために本心をぐっと堪えて










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