ヒロアカaqua


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職場体験3日目




「今日は見回りに行く!」

勢いよく告げたエンデヴァー
最近保須市でのヒーロー殺しが出現していることが原因だろうけど

ヒーロー殺しと言えば飯田くんのお兄さん
インゲニウムがヒーロー殺しにやられたらしい
一命は取り留めたものの、もうヒーロー活動は出来ないとのこと

「雫!聞いているのか!」

「っ、はい!」

「あ、馬鹿」

サイドキックの人の静止が聞こえた2秒後
ゴンッと振り下ろされた拳が頭に直撃した

「エンデヴァーさん、女の子相手にも容赦ねぇ…」

「可哀想に」

とか聞こえるけど、なんで殴られたのか誰か教えてほしい

「馬鹿者!見回り時はヒーロー名で名乗れと言っただろう!」

なるほど、雫と呼ばれたことに反応してしまったから怒られたのか
なら本名で呼ばないでほしい

「大丈夫か」

「ありがとう、でも大丈夫だよ」

心配そうな焦凍くんに微笑んでエンデヴァーと向き合う

「すいません、もう大丈夫です」

「よし、すぐに出る準備しろ」

それから保須市に移動してきた私たち
昼間の保須はいたって平和で犯罪なんて起こりそうにない

「平和だね」

「ああ」

エンデヴァーの活動に同行していると、子供がわらわらと集まってきた

「このねーちゃんテレビで見た」

「3位だった!」

「このにーちゃんもテレビで見た」

「2位だった!」

私と焦凍くんを見上げるちびっ子たち
エンデヴァーたちもこの様子を見ている

私は子供に目線を合わせるようにしゃがんだ

「私シャボンって言うの、宜しくね」

私がそう名乗ったのを見ていた焦凍くんは同じようにしゃがんで「ショートだ」と名乗る
ちびっ子たちは私たちを見て顔をキラキラと輝かせた

「俺ね!絶対ヒーローになる!」

「俺も!俺も!!」

夢あるちびっ子たちが微笑ましい
前にも言ったが私は子供が好きだ、無邪気で自由で素直な姿がとても可愛い

「(あ、唄ちゃんを好きなのもそれが理由か)」

子供達に手を振ってから再びエンデヴァーの列に着く

「シャボンちゃん今の対応満点だよ」

「ありがとうございます!」

あんまりエンデヴァーはファンに媚びないらしいけれど、私は好かれるヒーローになりたい
だからファンには優しくしようと決めた



その後も特に何事もなく平和に時が過ぎる保須市

「平和でなにより、そろそろ事務所に」

エンデヴァーがなにか告げようとした時、爆発音が聞こえた

「焦凍!雫!事件だついてこい!ヒーローというものを見せてやる!」

爆発音の現場に向かって走るエンデヴァーたち、私と焦凍くんも後を追う

「(というか今名前で呼んだ気が)」

あれ、私それが原因で殴られた気がするんですけど

と、突如震えた携帯
非常事態だけれど一応内容を確認する
そこには緑谷くんからA組のみんなへ一斉送信された位置情報

「焦凍くん…これ」

どういう意味か分からず考え込む焦凍くんと私
さっぱりだけれど、緑谷くんに限って何の考えもなしにこんなことするわけが無い

なんの情報もかかれていないメッセージ
つまり打つ時間が無いか打てない状況下か

「…行くぞ」

「うん!」

向かっていた方向とは別の方へ走りだした私たちにエンデヴァーは叫んだ

「どこ行くんだ雫!焦凍ォ!」

「江向通り4-2-10の細道!」

「そっちが済むか手の空いたプロがいたら応援頼む、おまえならすぐ解決出来んだろ」

走り続けたまま叫ぶ私たちにエンデヴァーは驚いた表情になる

「友だちがピンチかもしれねえ」




走って走って走って
ひどく長く感じたけれど
たどり着いた先には彼らがいた

状況を認識した時にはもう体は動いていた
焦凍くんの炎、氷結、私の大波が今にも飯田くんを殺そうとしているヒーロー殺しに襲いかかる

「次から次へと…今日はよく邪魔が入る…」

倒れている飯田くんと緑谷くんとプロヒーローの3人
近くにいるのはヒーロー殺しだろう
私達はすぐに臨戦態勢に入った

「緑谷こういうのはもっと詳しく書くべきだ、遅くなっちまっただろ」

私たちの姿を見て驚く飯田くんと緑谷くん

「轟くんに海色さんまで…」

「何で君たちが…!それに…左…!」

焦凍くんの左側には炎熱が宿る

「何でって…こっちの台詞だ」

「そうそう、数秒意味を考えたよ…一括送信で位置情報だけ送ってくるんだもん」

ぐぐっと構える焦凍くん、このモーションは氷結だと思い彼の後ろに下がる

「意味無くそういうことする奴じゃねえからなお前は、ピンチだから応援呼べってことだろ」

焦凍くんが踏み込んだところから地面が凍っていき緑谷くんとプロヒーローの人を巻き込んだ

「大丈夫だ、数分もすりゃプロも現着する」

今度は炎熱を放った焦凍くん、ヒーロー殺しを攻撃しつつもその熱さで緑谷くんとプロヒーローの2人を拘束していた氷が溶け、2人とも私たちの背後に転がってきた
着地による衝撃を和らげるためにシャボン玉でクッションを作って2人をそっと地面に寝かせる

「情報通りのナリだな、こいつらは殺させねえぞヒーロー殺し」

これで人質は全員回収した
焦凍くんの隣に立ちヒーロー殺しを見据える

「轟くん!海色さん!そいつに血ィ見せちゃダメだ!多分血の経口摂取で相手の自由を奪う!皆やられた!」

「それで刃物か、俺なら距離保ったまま…」

直後、焦凍くんの頬をナイフがかする

「(速いっ!!!)」

私にも向かってきていたので咄嗟に避けたものの、体制を崩した焦凍くんにヒーロー殺しは襲いかかる

「良い友人をもったじゃないかインゲニウム」

「(しまっ…)」

「させない!」

即座に焦凍くんの右側にある水分を凍らせ壁を作りその刀を封じる
しかしヒーロー殺しは空中を見上げたそこには刀
ナイフと同時に投げていたそれに焦凍くんの気が向けられる

視線誘導にハマった焦凍くんの傷口に舌を伸ばすヒーロー殺しだが舐め取られる前に炎熱を出すことで防いだ

「っぶねえ(1つ1つの動きが2択、3択を迫ってくる、強え)」

「大丈夫?」

「ああ」

焦凍くんが体勢を立て直すまでこちらに集中するよう攻撃をしていく
一瞬でも気を抜けば殺される
USJの襲撃の時よりも伝わってくる緊張感に冷や汗が伝った










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