ヒロアカaqua


▼ 34



体育祭翌日



焦凍くんから電話が来た

そこで教えてもらった過去のこと
そしてずっと会えてなかったお母さんに会いに行ったこと
1つずつ前に進んで行こうと思ってること

全てを話してくれた

焦凍くんのその一言一言の重みを実感し、上手く返せないでいる私を見透かしたように彼は「これから俺がどう進むのか、見守っててほしい」と告げた

それに力強く返事をした




そして翌日





「(見守っててほしい…かあ)」

それはまだ傍にいてもいいということだろうか
都合よく解釈して頬が緩んでしまう
浮かれちゃダメだ、焦凍くんは真剣に話していてそんな深い意味は無いんだから

「雫」

「っひゃあ!」

急に話しかけられて驚きのあまり変な声が出る
そこにはぽかんとした焦凍くんがいた
いつもの待ち合わせ場所にいるんだから焦凍くんがくるのは当たり前なのに完全に油断していた

「お、おはよ!焦凍くん!」

「おう…どうした?何か顔赤いぞ」

「へ!?あ、ちょっと暑くて…」

誤魔化すためにそう言うと、焦凍くんが右手で私のおでこに触れた

「熱は…ねえな」

至近距離の焦凍くんに全身が硬直する

薄く微笑む焦凍くん
その表情は以前とは異なっていて、随分と柔らかい印象だ

「…お母さんどうだった?」

「徐々にだが体調も良くなってるらしい、雫にも会いたいって言ってた」

「私!?」

「今度紹介する」

どう言う風に説明したのか気になるけれど、紹介してくれるのは嬉しいかもしれない
私も踏み入っていいんだと言われているようで嬉しい

2人で登校していると、途中で色んな人に話しかけられた
雄英体育祭をテレビで見た人達が声をかけてくれるからだ

ありがたい話だけど、恥ずかしい!
気疲れしながら登校すると、クラスのみんなもやっぱり話しかけられたみたいでその話題で持ち切りだった

ワイワイしていると鳴ったチャイム
それにぴたっと自分の席に着席するみんな

「おはよう」

チャイムと同時に入ってくる相澤先生

「相澤先生包帯取れたのね良かったわ」

「婆さんの処置が大げさなんだよ、んなもんより今日のヒーロー情報学ちょっと特別だぞ」

その一言にザワっとする生徒達
ここまで幾多のことをやってきた側からすれば嫌な予感しかしない

「コードネーム、ヒーロー名の考案だ」

「「「「胸膨らむやつきたあああああ」」」」

爆発的に盛り上がる一同に相澤先生が個性を発動しようとするのを見て再び静まり返るクラス
ここまでくると躾具合が凄まじい

「というのも先日話したプロからのドラフト指名に関係してくる、指名が本格化するのは経験を積み即戦力として判断される2、3年から…つまり今回来た指名は将来性に対する興味に近い
卒業までにその興味が削がれたら一方的にキャンセルなんてことはよくある」

大人は勝手だ!と机を叩く峰田くんに百ちゃんが呆れている
一体何があったの峰田くん

「頂いた指名がそんまま自分へのハードルになるんですね!」

「そ、でその指名の集計結果がこうだ」

モニターに映し出されたのは指名件数
焦凍くん、爆豪くん、私、唄ちゃん、常闇くん、飯田くんの順に多い

「例年はもっとバラけるんだが、4人に注目が偏った」

なんと唄ちゃんまでの4人で票のほとんどを持っていってる状態
私に2800もの指名が来ていることに衝撃を受ける

「これを踏まえ、指名の有無関係なくいわゆる職場体験ってのに行ってもらう
お前らは一足先に経験してしまったがプロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしようってこった」

「それでヒーロー名か!」

「俄然楽しみになってきたぁ!」

喜ぶクラス一同に相澤先生が「まあ、仮ではあるが適当なもんは」と告げたとき、教室の扉が開いた

「付けたら地獄を見ちゃうよ!この時の名が世に認知されそのままプロ名になってる人おおいからね!」

そう言いながら入ってきたのはミッドナイト
相変わらず過激なコスチュームだ

「まあ、そういうことだ、その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう
将来自分がどうなるのか、名をつけることでイメージが固まりそこに近づいてく
それが名は体を表すってことだ、オールマイトとかな」

そしてそこからは各々が名前を考え始める
考えた人から発表していく形式らしい

トップバッターは青山くん

「輝きヒーロー
I can not stop twinking.(キラキラが止められないよ☆)」

「短文!」

思わずツッコミを入れるクラスのみんな
ただミッドナイト的には文章をいじるだけでOKらしい

「じゃあ次アタシね!エイリアンクイーン!」

三奈ちゃんのその名前は却下されたものの、まるで大喜利っぽい雰囲気になってしまう
みんなが危機感を感じた時、梅雨ちゃんが手を挙げた

「じゃあ次私いいかしら、小学生の時から決めてたの、フロッピー」

梅雨ちゃんの軌道修正があり、なんとか大喜利を脱出する
次々と名前を挙げていくみんな

唄ちゃんは「フリューゲル」と付けていた
ドイツ語で翼という意味らしい

ちなみに焦凍くんはそのまま「ショート」と名付けている

「(よし、なら私はこれだ)」

前に立つと、みんなの視線が突き刺さる
名前を書き込んだボードを立てた

「私のヒーロー名はシャボンです」

その単語にみんながピンと来た顔をしている

「もしかして体育祭のときにプレゼントマイクが言ってた」

「そう、響きが可愛いから気に入っちゃって」

それに私の技はシャボン玉を使うことが多いから違和感はないはず
ミッドナイトも「素敵な名前ね、覚えやすいし親しみやすいわ」と高評価みたいで安心した

その後、緑谷くんがデク
飯田くんが天哉と付けてた

爆豪くんはやり直しらしい
そりゃ爆殺王って…

そして先生にもらったスカウトしてきたヒーローの名簿を見てると、見慣れた名前を見つけてふと動きが止まる

「(エンデヴァー…?)」

なんで私に?という思いがあったものの、No.2のヒーローなので正直申し分ない実力
焦凍くんに言えば気を悪くするだろうけど私はそこに決めた










prev / next



- ナノ -