ヒロアカaqua


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無数に現れる0Pヴィランにみんなが呆気に取られている中、焦凍くんは地面を凍らせそこに触れる

「(せっかくならもっとすげえの用意してもらいてえもんだな)クソ親父が見てるんだから」

そう告げ振り上げた手
一緒に冷気も巻き上げられ、凍るロボ
その足元を潜るように走り抜ける焦凍くんが一抜けだ

「あいつが止めたぞ!あの隙間だ!通れる!」

焦凍くんを追いかけようとする他クラスの人

「やめとけ、不安定な体勢んときに凍らしたから…倒れるぞ」

「っ、危ない!」

案の定倒れてきた仮想ヴィラン
咄嗟に近くにいた他クラスの人を守るようにシャボン玉をクッションにしてあげると、みんな不思議そうに私を見ている

「A組のくせになんで…」

「(相当A組の印象悪いんだなぁ…)」

あんなの倒れてきたら死んじゃうかもしれないと思っての行動
別に見返りなんかは求めてないけど、こうも意外みたいな顔をされると地味にショックだ

『1-A 轟!攻略と妨害を一度に!こいつぁシヴィー!!!すげえな!一抜けだ!アレだな、もうなんか…ズリぃな!
ここで舞羽もロボを翻弄してくぐり抜ける!!翼はこの勝負には有利だなオイ!』

唄ちゃんも抜けたらしい、続いて爆豪くんたちがロボの頭上から回り込むようだ

「(私もうかうかしてられない)」

幸い先程焦凍くんが出した氷がまだある、その氷に触れて水分を貰った

「せーの!」

大きく腕を振れば、勢いよく溢れる水
もはや津波のような光景にA組のメンバーは勿論、他のクラスのみんなも驚いている
その津波で仮想ヴィランを足止めし、シャボン玉を伝ってロボを乗り越えれば第1関門突破だ

『ここで海色の個性が大炸裂だあああ!
この規模の津波を起こすなんてとてつもない奴だぜシャボンガール!!!』

シャボンガールとは何だと思いながらも前を行くみんなを追いかける

『一足先行く連中A組が多いなやっぱ!!』

確かに第1関門を突破してるのはほとんどA組
他の科やB組も悪くないけれど、A組は圧倒的に立ち止まる時間が短い
これは経験を糧に迷いを打ち消している証拠だ

そんな私の前に現れたのは断崖絶壁の岩山
そしてそれらを繋ぐロープ

『オイオイ第1関門チョロいってよ!んじゃ第2はどうさ!?落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!ザ・フォーーール!!!』

恐怖から立ち止まっている面々を他所に、そのまま崖に向かって走る

「っ!雫ちゃん危ない!」

お茶子ちゃんが後ろで叫んだ気がしたけれど、大丈夫
飛んだ先にシャボン玉を形成し、それを飛び越えていく
耐久性は脆いので踏んだら割れる仕組みだ、後続には使えない私だけの道

『さあ!先頭は難なく一抜けしてんぞ!』

モニターを見るといつの間にか先頭は唄ちゃんになっている
続いて焦凍くん、爆豪くん、そして私
第2関門でA組のみんなを一気に離せたけど前の3人に追いつくには距離がありすぎる

『先頭が一足抜けて下はダンゴ状態!上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずに突き進め!!』

それ何にも安心できないよと内心ツッコミつつ駆ける

『そして早くも最終関門!かくしてその実態は
一面地雷原!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になってんぞ!目と脚酷使しろ!』

「地雷!?」

なんてもの用意してるんだと呆れた時、遠くで唄ちゃんが周りの生徒が起こした地雷の爆風により上手く飛べてないのが見えた

「そっか、乱気流…」

飛べる個性って言ってたけど有利なだけじゃない、必ずデメリットも存在する

「(なら…私は…!!)」

その隙に空気中の水分を凍らせ地雷原の入口から出口までを繋ぐようなアーチの足場を作る
こんなに大きなものを作るには体内の水分をいっぱい使うけど始まる前に水分補給はしっかり済ませてきた

「っ、雫か…!」

前を行く焦凍くんが背後を振り返った時、その目に飛び込んできたのは地面に落下しないよう常に爆破し続け飛ぶ爆豪くん

「はっはぁ!俺は関係ねーーー!!
てめぇ宣戦布告する相手を間違えてんじゃねぇよ!そんでもって唄てめぇは堕ちろや!!」

「っ、うわっ!」

唄ちゃんに向けて爆破を放つ爆豪くん
その爆風に飛ばされてく唄ちゃん
ヒーローらしからぬ行動に苦笑いしてしまうけれどこれは勝負、勝てばいいだけの話

『ここで先頭が変わったー!喜べマスメディア!お前ら好みの展開だああ!』

トップは爆豪くん、続いて焦凍くん、その次にやや遅れながらも体勢を立て直した唄ちゃん
私もアーチの中盤に差し掛かり4位

『後続もスパートかけてきた!だが引っ張り合いながらも先頭2人がリードかあ!?』

先頭の2人は互いの個性で妨害しつつゴールを目指している
唄ちゃんは後続を減らすために地雷原を狙って羽を撃って妨害をしながら2人を追いかける

あと少しで唄ちゃんに追いつける、そう思った時凄まじい爆発音がした

『後方で大爆発!?なんだあの威力!?』

私の横を凄まじいスピードで飛んでいく緑谷くん

「っな!?」

『偶然か故意か、A組緑谷 爆風で猛追!!!!
っつーか!抜いたあああああ!!!!』

爆破の勢いで飛んできた緑谷くんは先頭に出る
着地する前に追いかける焦凍くんと爆豪くん

「デクぁ!!!俺の前を行くんじゃねえ!!!」

「(後続に道作っちまうが…)後ろ気にしてる場合じゃねぇ!!」

2人とも個性を炸裂させ緑谷くんを追いかける
失速してきた緑谷くんは2人が抜くその瞬間、持っていた鉄の塊で地面を叩きつけあえて地雷原を振動させた

カチカチと音を立て次々と爆破する地雷に巻き込まれる2人

『緑谷間髪入れず後続妨害!なんと地雷原即クリア!イレイザーヘッドお前のクラスすげえな!どういう教育してんだ!』

『俺は何もしてねぇよ、奴らが勝手に火ぃつけあってんだろ』

『さぁさぁ序盤の展開から誰が予想できた!?今一番にスタジアムへ帰ってきたその男、緑谷出久の存在を!!!!』

どうやら緑谷くんがゴールしたらしい
私も必死に走るこの2週間で体力つけて良かった
なんとかゴールして順位を見ると、2位が焦凍くん、3位が爆豪くん、4位に唄ちゃん、5位に私

他の生徒を救っていた分タイムロスをしてしまった
でもそれは仕方ないことだし救ったことを後悔はしていない

「予選通過は上位42名!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されてるわ!
そして次からいよいよ本線よ!ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバリなさい!」

なんとか上位に入れたとほっとするのも束の間、ミッドナイトは次の種目を提示した

「コレよ!」

モニターには騎馬戦と書かれている

「参加者は2〜4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど1つ違うのが先程の結果に従い各自にPが振り当てられること!」

つまり騎馬の組み合わせによってPは変わる
これは誰と組むかも重要なポイントだ

「そして与えられるPは下から5Pずつ!42位が5P、41位が10Pと言った具合よ
そして、1位に与えられるPは1000万!!!」

みんなが一斉に緑谷くんを見る

「上位のやつほど狙われちゃう下克上サバイバルよ!!」

冷や汗をダラダラ流す緑谷くんを視界に捉えていると、唄ちゃんが視界に入った
彼女もまた私を見て小さく頷く

どうやらチームメンバーは1人決まったみたい

「制限時間は15分、割り当てられたPの合計が騎馬のPとなり、騎手はそのP数が表示されたハチマキを装着
取ったハチマキは首から上に巻くこと、とりまくればとりまくるほど管理が大変になるわよ!
そして重要なのはハチマキを取られても、また騎馬が崩れてもアウトにはならないってところ!
個性発動有りの残虐ファイト!でも…あくまで騎馬戦!悪質な崩し目的での攻撃などはレッドカード!一発退場とします!
それじゃこれより15分!チーム決めの交渉スタートよ!」

ミッドナイトの合図とともに交渉をスタートする面々
私と唄ちゃんはとりあえず合流した

「雫ちゃんと私の個性相性ピッタリだからちょうど良かった!」

「騎手は唄ちゃんだね」

飛べるもんと付け加えてからあと2人探さないと、そう思った時、後から私たちを呼ぶ声がした

「舞羽唄さんに、海色雫さんだよね?」

「え?」

「はい?」

振り返ると同時に視界が暗転する
何が起こったのかわからないまま私たちの意識は途絶えた










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