ヒロアカaqua


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雄英体育祭 当日


クラスごとの控室で待機している現在

相変わらず雄英はやること成すこと規模が凄まじい
体育祭もテレビでは見てたものの、いざ巨大なドームで行うと聞いた時は流石に衝撃が走った

「緊張するね」

近くで緊張している唄ちゃんに話しかけると彼女は頷いた
ただ、緊張だけじゃなくて楽しみにもしているんだろう口角が上がっている

「緑谷」

各々が緊張を解す中、突然聞こえたのは焦凍くんの声
クラス中の視線が2人に向けられた

「轟くん…何?」

「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う」

「へ!?う、うん」

突拍子もなく話し始めた焦凍くんに慌てる緑谷くん

「お前オールマイトに目ぇかけられてるよな、別にそこ詮索するつもりはねぇが…お前には勝つぞ」

言い切った焦凍くんに驚いてギョッとしてしまう
焦凍くんが宣戦布告なんていつもと違うその空気感に圧倒された

「おお!?クラス最強が宣戦布告!?」

聞いていた他のみんなもざわざわしている

「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって」

「仲良しごっこじゃねえんだ、何だっていいだろ」

制する切島くんの腕を振り払った焦凍くんにピンときた
この会場にあの人が来ているんだと
宣戦布告された緑谷くんは何かを考え込むように俯いてる

「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのか…は、わかんないけど、そりゃ君の方が上だよ…実力なんて大半の人に叶わないと思う…客観的に見ても」

「出久…」

唄ちゃんが心配そうに緑谷くんを見ている

「緑谷もそーゆーネガティブな事言わねえ方が…」

すかさずフォローに入る切島くん
けれど、それは必要ないみたいだ

「でも!皆…他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ、僕だって…遅れを取るわけにはいかないんだ、僕も本気で獲りに行く!」

「…おお」

焦凍くんもそれ以上突っかかることはないので安心する
その時、生徒の招集がかかった

スタジアムのゲートに近づくにつれて大きくなる声援
プレゼントマイクの実況が聞こえる中、A組の誰もが静かに闘志を滾らせる

『雄英体育祭!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!

どうせてめーらアレだろこいつらだろ!?
ヴィランの襲撃を受けたにも関わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新生!!

ヒーロー科!1年A組だろおぉ!?』

私の目に飛び込んできたのはドームを埋め尽くす観客たち

「すご…」

唄ちゃんがぽかんと口を開けたまま客席を見上げている

「口空いてるよ」

クスクスと微笑むと唄ちゃんが恥ずかしそうに口元を押さえてた
ほんとに可愛くて癒されながら整列する
私たちの前にある舞台に上がったのはミッドナイト
相変わらず過激なコスチュームだけど、着こなしてるんだからナイスバディすぎる

「選手宣誓!選手代表1-A 爆豪勝己!」

「えー!かっちゃんなの!?」

「勝己何気に頭いいもんね、入試1位通過らしいよ」

緑谷くんと唄ちゃんの会話を聞いて爆豪くんが意外と秀才であることを知った
個性の方でもセンスの塊だと思ったけれど、勉強もできるタイプか…

「せんせー 俺が1位になる」

絶対やると思った!!!って頭を抱えてるA組
これには他のクラスでかなりのブーイングが巻き起こる

「(唯一の欠点とすればその性格かも)」

爆豪くんらしいけれど、きっとこの行動には何か意味がある気がした
まだ出会って少ししか経ってないけど、彼が考えなしに動く人じゃないというのは分かるようになってきた

「さーて、それじゃあ早速第1種目行きましょう!
いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ!さて、運命の第1種目!今年は…コレ!」

ミッドナイトの背後に現れたモニターには障害物競走の文字

「計11クラスでの総当りレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4キロ!」

ガガガッと門が開いていく
なるほど、説明よりも体感してこいってことかと納得し、門まで歩みを進めた

「我が校は自由さが売り文句!ウフフフ…コースさえ守れば何をしたって構わないわ!
さあさあ位置につきまくりなさい…」

全員が位置につくと、門の上にある3つのライトの1つが消えた

「(落ち着いていつも通りやれば大丈夫)」

2つ目のライトが消える
この会場にいるであろう両親、2人の前で私は完璧な娘でいたい

深く息を吸い込み、真正面を見据えた時最後のライトも消えた

『スターーーート!!!!』

一斉に駆け出した生徒達
明らかに狭いゲートで渋滞しているようだ

瞬間、空気中の水分が揺れるのを感じた、その感覚は身に覚えがある

「(これって…)」

考えが至った瞬間、無意識の内に個性を発動する
ジャンプし、その着地点にある水蒸気を凝縮しシャボン玉を作り出す
そこを足場にしようと1歩目を踏み出した時、地面が凍りついたのが見えた

やっぱりと思った私の目には先頭で個性を発動している焦凍くんが映る
地面を凍らすことで生徒達の足場を拘束してしまう目論見だと思うけど…

「甘いよ焦凍くん!」

先頭の焦凍くんを追いかけるように、次々とシャボン玉を作り出してその上を駆けていく
他のA組のメンバーも個性を使用して凍結から免れてるみたいで流石だ

「クラス連中は当然として思ったより避けられたな」

余裕の表情の焦凍くんは空を飛ぶ唄ちゃんに目を向けた
ちなみに焦凍くんが先頭、その次に唄ちゃんだ

2人が鎬を削っているのを眼前にA組の面々が追いかける

『おおーっと!先頭轟に追いつくのは舞羽!!』

その実況を聞き流しつつ先を急ぐ
ある程度進んだ時、目の前に現れた巨大なロボット

『さあ!いきなり障害物だ!まずは手始め…第1関門ロボ・インフェルノ!!!!』

入試の時にいた0Pの仮想ヴィランが所狭しと並んでいるその光景に息を飲んだ

あの時は唄ちゃんと2人がかりで倒したけれど、今は1人
この絶望的な状況にも関わらず私の口角は上がっていた









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