ヒロアカaqua


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USJ襲撃の翌々日

登校するとそこにはいつものみんな
ただやっぱり相澤先生が心配なのか心なしか元気がない気がする

「皆ー!朝のHRが始まる席につけー!!」

「ついてるよ、ついてねーのおめーだけだ」

相変わらずの飯田くんに苦笑いしていると、教室の扉が開いた

「おはよう」

そこから現れたのは全身包帯ぐるぐる巻きの相澤先生

「(あれ動ける状態なの!?)」

ミイラにしか見えないその姿に絶句する

「俺の安否はどうでもいい、何よりまだ戦いは終わってねぇ…雄英体育祭が迫ってる!」

「「「「クソ学校っぽいの来たああああ!!!」」」」

雄英体育祭と言えば毎年テレビで見ている一大イベント
私もそわそわしてしまう

「待って待って!敵に侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか?!」

「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示す…って考えらしい、警備は例年の5倍に強化するそうだ
何より雄英の体育祭は最大のチャンスだ、ヴィランごときで中止していい催しじゃねえ

ウチの体育祭は日本のビッグイベントの1つ!かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した
今は知っての通り規模も人口も縮小し弱体化した
そして日本において今、かつてのオリンピックに代わるのが雄英体育祭だ!」

この体育祭は全国のプロヒーローも見ている
雄英高校卒業後はプロ事務所にサイドキック入りが定石、そのためのプロヒーローからのスカウトも兼ねている

「当然名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる、時間は有限
プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ年に1回計3回だけのチャンス、ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」

自分の個性をプロヒーローにアピールするチャンス
みんなメラメラと闘志を燃やしているみたい

「楽しみやね、雫ちゃん!」

「そうだね」

後ろの席のお茶子ちゃんに微笑むと、何やら考え込んでいる焦凍くんが目に入った
何かあったのかな、そう思ったものの授業が始まり聞けずにいた



そして昼休み

いつものように食堂で列に並んでいると、少し後ろにいたお茶子ちゃんと飯田くんが緑谷くんの話をしていた
内容的には緑谷くんがオールマイトに気に入られてるって件らしい

「(確かに個性も似てるし、もしかして遠い親族なのかも)」

そこまで考えた私の隣には今朝と同じく考え込む焦凍くん

「焦凍くん」

「なんだ」

「何かあった?」

そう聞くと少しだけ動揺した後に小さな声で「何でもねぇ」と呟いた彼
言いたくないものを無理に聞くわけにもいかないのでそれ以上は聞かないでおく

焦凍くんが考え込むと言えば、やはりお父さんのエンデヴァーのことなのかもしれない
それなら一層踏み込むわけにはいかないだろう




放課後

1-Aの前には人だかりができている

これじゃあ帰るどころか教室を出れそうにない

「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」

峰田くんが困っていると、爆豪くんはその横を通り過ぎる

「敵情視察だろザコ、敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな
体育祭の前に見ときてえんだろ、意味ねえからどけモブ共」

「知らない人のこととりあえずモブっていうのやめなよ!」

「勝己!余計なこと言わないの!」

真正面から喧嘩を売った爆豪くんに慌てるクラスのメンバー
注意する唄ちゃんはまるで爆豪くんのお姉ちゃんみたい

「どんなもんかと見に来たがずいぶん偉そうだなぁ、ヒーロー科に在籍するやつはみんなこんななのかい?」

人混みをかき分け前に出てきたのはクマがすごい男の子

「こういうの見ちゃうとちょっと幻滅するなぁ
普通科とか他の科ってヒーロー科落ちたから入ったって奴けっこういるんだ、知ってた?」

確かに雄英卒業という名目欲しさにヒーロー科ではなく普通科や他の科に入る人も多いと聞いている
そのクマの子の言葉に顔色一つ変えない爆豪くん

「体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって、その逆もまた然りらしいよ
…敵情視察?少なくとも普通科は調子乗ってっと足元ゴッソリ救っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり」

その物言いは柔らかいものの、この人も大胆不敵だなぁと様子を見守る
雄英はこういう好戦的な人しかいないんだろうか

「隣のB組のモンだけどよぅ!敵と戦ったっつうから話聞こうとおもってたんだがよぅ!エラく調子づいちゃってんなオイ!!!本番で恥ずかしい事んなっぞ!!!」

さすが爆豪くん、息をするようにヘイトを買っているその様子はもはや拍手すべきかもしれない
そのまま何も言わずに帰ろうとする爆豪くんを切島くんが制した

「待てコラ!どうしてくれんだ!おめーのせいでヘイト集まりまくっちまってんじゃねえか!!」

「関係ねえよ」

「はあーー!!?」

「上に上がりゃ関係ねぇ」

その一言は納得をせざるを得ない
ここでは実力が全て、文句があるなら成果を示せば何にも問題ない

「(雄英体育祭まであと2週間、体力アップ、個性の精度アップ、シミュレーション…やることは沢山ある)」

考えている時間はない、そう思いそれから二週間は必死に追い込んだ
焦凍くんのことは気がかりだけれど、人の心配ができるほど余裕があるわけではない


あっという間に過ぎ去った2週間
雄英体育祭がやってくる










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