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報道陣が校内に侵入してきた事件の翌日
今日のヒーロー学はレスキュー訓練らしい
コスチュームの着用は自由と聞いて、せっかくだしコスチュームで参加した
訓練場まではバス移動になるため集合場所で待っているとぞろぞろと皆が集まってきた
「舞羽のエロさを強調するいいコスチュームなのに!!!!」
突然聞こえたその叫びに目を丸くしてそちらを見ると、体操服を着ている唄ちゃんに詰め寄る峰田くんの姿
他の女子から「峰田サイテー」という声が上がるけど、本人は全く気にしてない
バスに乗り込んで唄ちゃんと2人席に座る
前の方がワイワイ盛り上がってるのを眺めてると、会話が派手な個性の話になった
「派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪、それに海色だな」
突然出てきた自分の名前に驚くけれど、確かに水の個性はイメージしやすい分印象に残りやすいだろうしそう見えても仕方ないのかもしれない
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」
「んだとコラ!出すわ!!」
「ホラ」
「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」
凄まじい言葉絵ツッコミを入れた上鳴くん
逆に想像しづらいと考えていると隣にいた唄ちゃんが我慢出来なかったのか吹き出した
「ふっ…くくっ」
「てめぇのボキャブラリーは何だコラ!殺すぞ!あと唄てめぇも笑ってんじゃねぇよ!!!」
「ごめ…あははっ!」
ブチブチっと血管が切れてる爆豪くんを余所に笑っている唄ちゃんに血の気がひいていく
こんなところで爆破されたら事故になりかねない
というか流石幼馴染、全然動じてないなあ
「もう着くぞいい加減にしとけよ…」
相澤先生の一言で緩んでいた空気が引き締まる
バスが止まり、降りるとそこには某テーマパークのような建物たちが並んでいる
「すっげー!USJかよ!!?」
「水難事故、土砂災害、火事…etc.
あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です、その名も…ウソの(U)災害や(S)事故ルーム(J)」
スペースヒーローの13号の説明を聞いて本当にUSJだったことに内心ツッコミを入れていると相澤先生と何やら話していた13号は私たちを振り返った
「えー、始める前にお小言を1つ、2つ…3つ…4つ」
「(増える…)」
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性はブラックホール、どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」
13号の個性のブラックホールは災害時に人を救いあげると聞いている
人の役に立つ素敵な個性だと思う
「しかし簡単に人を殺せる力です、みんなの中にもそういう個性がいるでしょう
超人社会は個性の使用を資格制にし厳しく規制することで一見成り立っているように見えます
しかし一歩間違えれば容易に人を殺せるいきすぎた個性を個々が持っていることを忘れないで下さい」
そうだ、これは遊びなんかじゃない
雄英に入ったのはヒーローになるためだ
「相澤さんの体力テストで自分の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います
この授業では…心機一転!人命の為に個性をどう活用するかを学んでいきましょう
君たちの力は人を傷つけるためにあるのでは無い、救けるためにあるのだと心得て帰って下さいな
以上!ご清聴ありがとうございました!」
ぺこりとお辞儀をした13号に思わず拍手を送った
「(素敵な演説だったなぁ)」
そう思った時、急に相澤先生が叫んだ
「ひと塊になって動くな!!」
生徒達はぽかんとしてるけれど、相澤先生のあの焦りよう…ただ事じゃない
「13号!!生徒を守れ!!」
その瞬間、どこからともなく現れた黒い霧が膨らみ、そこから大勢の人間が現れる
雄英の関係者ではなさそうなその人たちに困惑する
「なんだありゃ?また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」
切島くんの言う通り周りの生徒達が誰も戦闘態勢に入っていないのを見た相澤先生は再び叫んだ
「動くな!あれはヴィランだ!!!!」
ゴーグルを装着し叫ぶ相澤先生にただ事じゃないと判断した生徒たちの顔つきが変わった
ヴィランの1人が辺りを見渡し状況を確認する
「13号にイレイザーヘッドですか…先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが…」
「やはり先日のはクソ共の仕業だったか」
ヴィランの中にいた顔面に手を複数つけたような風貌の男が天を仰ぐ
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き付けてきたのにさ…オールマイト…平和の象徴…いないなんて…子供を殺せば来るのかな?」
その狂気に身震いし、思わず口元を抑える
今までヴィランと遭遇したことはない、これが本物のヴィラン
私はこんなのと戦おうとしてるってこと?
「ヴィランンン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んで来るなんてアホすぎるぞ!」
「先生、侵入者用センサーは!」
「勿論ありますが…!」
センサーがあるのにここまで入り込まれた
遠くに見えるヴィランを見据えて冷静に分析をしている焦凍くん
「現れたのはここだけか学校全体か…何にせよセンサーが反応しねぇなら向こうにそういうことが出来る個性がいるってことだな
校舎と離れた隔離空間、そこに少人数が入る時間割…バカだがアホじゃねえ
これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」
即座に相澤先生がヴィランと交戦を始めるものの、避難をする私たちの前に立ち塞がる黒い霧
「(マズい!!)」
「初めまして我々はヴィラン連合、僭越ながら…この度ヒーローの巣窟
雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」
狙いはオールマイト
元々この授業に出るはずだったことを事前にリークした奴がいて、このヴィランたちはここに現れた
つまり内通者がいるということだけれど今はそんな話をしている場合じゃない
「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるはずですが…何か変更あったのでしょうか?まぁ…それとは関係なく…私の役目はこれ」
そう告げて再び黒い霧を散布し始めたヴィランに飛び出した影が2つ、爆豪くんと切島くんだ
「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」
即座に攻撃を仕掛けるも、爆風の中無傷で現れたヴィラン
「危ない危ない…そう、生徒と言えど優勝な金の卵」
私の考えがまとまる前に、横にいた唄ちゃんは走り出していた
翼を広げ爆豪くん目掛けて一直線に飛んでいく
「ダメだ!どきなさい2人とも!舞羽さんも戻って!」
そう13号が叫んだ時には既に私たちA組を囲むように霧が蔓延っていた
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