ヒロアカaqua


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戦闘訓練の翌日



外から聞こえる鳥の鳴き声で目が覚めた

うっすらと目を開けると、見慣れた自室の天井

時計を見るとなんとアラームが鳴る2分前
あと2分寝れたと思いながら上体を起こす

1階に降りて顔を洗い、歯磨きを済ませてからパジャマのままリビングに向かうと、食卓を囲み談笑しているお母さんとお父さんが私を見て青ざめた

「雫!?え、もうとっくに学校に行ったのかと思ってたわ!」

「早く着替えて来ないと間に合わないぞ!!」

そう告げた両親に不思議に思い、リビングの時計を確認するといつも家を出る時間の5分前
はたと固まった私にお母さんが「部屋の時計止まってるのかしら」と言うので私もサアッと青ざめる

そこからは凄まじい勢いで支度をし、いつも焦凍くんと待ち合わせをする駅までダッシュしてなんとかギリギリ遅刻を回避できる電車に乗れた

「やっばい…え、私寝癖ついてない?大丈夫?!」

「おい、素出てんぞ」

呆れる焦凍くんにハッとする
寝坊なんていつぶりだろうか、朝の両親の反応を見る限りやってしまったことに違いない

「(寝坊する娘だなんて思われたくない)」

両親にとって自慢の娘でいたい
その思いだけで完璧でいるよう努めてきたがちょっと綻びそうになってしまったことにショックを受ける
今後はスマホのアラームもかけるようにしよう、Wアラームなら大丈夫なはずだから

その後学校の最寄り駅についてからは学校まで再びダッシュ
途中で報道陣に捕まったけど、正直それどころじゃなさすぎて華麗にスルーさせていただいた

肩で息をする私と、余裕そうな焦凍くん
この差が体力の差なのかと悔しい思いを噛み締めていると唄ちゃんが慌てて駆け寄ってきてくれた
けれど、ごめんなさい話す余裕ないです

「ああ、雫が寝坊するから」

代わりに返事をした焦凍くんの言葉にギョッとする

「ちょ!それ言っちゃダメ!」

イメージが崩れるでしょう!と慌てるけれど、それよりも焦凍くんが私の事情を知っていることに疑問を持ったクラスメイトのみんな

「え…2人ってどう言う関係?」

上鳴くんが素朴な疑問を口に出すと、焦凍くんは一度私を見てから上鳴くんに目を向けた

「許n「いっ!家が近所なの!!!ね、焦凍くん!」

「お、おう…」

"許嫁"と言おうとした焦凍くんを遮って慌てて答えると、上鳴くんは納得してくれた様子
許嫁なんてクラスのみんなに知れたら絶対ややこしいことになる、それに許嫁破棄同盟でしょう?

言っちゃダメ!と焦凍くんに目で訴えると小さく頷いてくれた

「(良かった、伝わった…)」

ホッとした時、相澤先生が教室に入ってきた

「昨日の戦闘訓練お疲れ、Vと成績見させてもらった」

どうやら相澤先生は昨日の戦闘を見たらしい
私怨丸出しの戦闘をしていた爆豪くんと緑谷くんに注意してた

「さて、HRの本題だ、急で悪いが今日は君らに学級委員長を決めてもらう」

「「「「学校っぽいの来たーー!!」」」」

相澤先生のことだからまた抜き打ち試験でもあるのかと思ってしまったけれど今日はそう言うことではないらしい
みんな我先にと挙手して立候補していく様子を眺める
私はこのクラスまとめれると思わないので辞退した
チラッと焦凍くんを見ると、同じく手を挙げていないようだ

その後投票制で委員長、副委員長を選ぶことに

「(誰に入れようかな)」

状況をいち早く分析出来て的確な支持が出せてそれでいて模範になるような…あれ、これ1人しかいないな
紙に飯田くんの名前を書いて提出した

投票の結果、委員長は緑谷くん、副委員長は百ちゃんになった
多分お茶子ちゃんと飯田くん、唄ちゃんは緑谷くんに入れたんだろう
1票しか入っていない人は自分で入れたとすると百ちゃんに入れたのはここに名前がない焦凍くん

焦凍くんも私と同じような理由で選んだんだろうけど、百ちゃんと焦凍くんって何気に接点多い気がする
推薦入試組だし、席近いし、いいところ育ちだし
そこまで考えて私は動きを止めた

「(いやいやいや、待って、え?私こんなこと気にするタイプだっけ?)」

というか、別に2人は何でもないわけだし、それを気にするのは面倒くさい奴すぎないだろうか

結局午前中はずっと授業を聞き流しながら2人の関係についてもやもやしていた
美男美女とはこの2人のことなんだろうなぁ…チラッと右にある窓を見ると反射して自分の顔が映る

「(百ちゃんみたいに美人だったらなぁ…胸も大きくないし…)」

「雫」

そもそも私が焦凍くんのことを一方的に好きなだけで、焦凍くんは別の人を好きになるかもしれない
最初はそうなることを願っていたけれど恋心を抱いてからは許嫁という立場に安堵している自分もいる

「おい」

許嫁だって親同士が決めただけで焦凍くんが納得していない
彼は私が好意を抱いているなんて知らないだろうし、いずれは解消される関係

「どうした、気分でも悪いのか?」

急に視界いっぱいに現れた焦凍くんに驚きのあまり息が止まる

「(…綺麗なオッドアイ)」

右目は黒色、左目は水色の双眼をぽけーっと眺めていると、焦凍くんにチョップされた

「痛っ!」

「起きてたのか」

目開けたまま寝てるのかと思った、と告げられハッとする
どうやらいつの間にか午前中の授業が終わり昼休みのようだ
話しかけてくれてたのは昼ごはんのお誘いだったみたい

何事もないように振る舞い、食堂でご飯を食べてると突如鳴り響いた警報音
誤作動か?と思って様子を伺っていると、校内に報道陣が侵入してきているらしい
そのことにパニックになった他の生徒たちが出口に向かって駆け出し殺到
あまりにも多い人混みに巻き込まれそうになってしまう

「わわっ」

「雫!」

ぐっと腕を引っ張られ人混みから救出される
幸い壁際だったから四方八方囲まれていたわけではない
背中を壁につける私を人波から私を守るように立つ焦凍くん
いわゆる壁ドンというこの状況に驚いてしまった

「(ま、漫画で見たやつ!!!!)」

「怪我してねぇか?」

「大丈夫だけれど…焦凍くんこそ大丈夫?」

私を守ってるせいで人波に押されてる焦凍くんに焦りを覚えた
焦凍くんが怪我したら大変だ、そう思って何とかしようと思うも片手でグッと抱き寄せられる

「いいから大人しくしてろ」

え、何これ
いやいやいやちょっと待って、思考停止寸前なんですけど

「(焦凍くんの鼓動が聞こえ…いや待って、これ無理、素が出ちゃう!!)」

私の心臓はバクバク言ってるのに、焦凍くんの心臓は一定のペースを保っている
それが片思いだということを痛感させるけれどふんわりと香る焦凍くんの匂いに瞼を閉じた

「(こんなことされたら勘違いしちゃうんだけど)」

自分の気持ちを落ち着かせる私は気がつかない
焦凍くんは腕の中にいる私を何か言いたげに見ていたことを










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