ヒロアカaqua


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捜索隊に合流して死柄木の行方を探るけれどこれといった情報が出てこない

今日も暗くなるまでプロヒーローと共に捜索を行った後で寮に戻ってきたけれど正直もうくたくただ

「つ…疲れた…!」

「捜索範囲が広すぎるぜ…」

「こうもヒーローが減ってるとは…深刻だ」

みんなの言う通り想像以上にヒーローを辞めていく人が多く、なかなか思うように進まない
焦りがないわけじゃないし一刻も早く見つけたいけれどそうはいかないらしい

「速やかに就寝しよう、俺たちの強みは若さだ
一挙手一投足全て力に繋がる、歯磨きは忘れずにな!」

「強くなれって言われたしな」

飯田くんの言葉に賛同し、唄ちゃんと一緒にお風呂へ向かおうとすると、バンッ!と勢いよく寮の扉が開く

「わたしが!!毎日のように来た!!」

「オールマイト…!」

「元気ですね」

「逆にな!」

突然のオールマイトの登場に驚いたけれど、それよりも気になるのは隣にいる塚内さんと校長の姿

「青山さんの件でしょうか?」

百ちゃんの問いかけに塚内さんが上を指差す
そしてオールマイトが続けた

「更にその先だ、現在限られた者にのみ概要を伝えている
第二次決戦の最終プラン、その協議を行う」

思わず息を呑むけれど遅かれ早かれこの時は来た
すぐに真剣な表情をして彼の言葉に耳を傾ける

「オール・フォー・ワンのことは私たちがよく知っている
この捜索で奴が見つかる可能性は低い」

「爆豪がソレ言ってたけど…改めてみなまで言われるとな…」

「無駄ってことっすか?」

「逆だ、イレイザーの作戦に繋がる」

塚内さんが首を横に振った

「狡猾な臆病者を引き摺り出すためには心をゆっくり解きほぐす必要があるんだ」

「"必死で探してるけど見つからない、ざけんなよ死ねカス"っつーポーズか」

「個人の感想」

オールマイトのポーズに納得したような爆豪くんに呆れるA組一同

「"サーチ"は生きてる前提で進める、我々の動向は逐一把握しているハズだ
緑谷くん帰還からのこの流れを"焦燥"と"疲弊"に見せたい
"我々が悪手を取り続けている""思惑通り"と気持ち良くさせ…イレイザーが発案した「青山でオール・フォー・ワンを任意の場所に誘き出す」成功率を上げる」

塚内さんの言葉にA組一同がハッとする
この作戦には青山くんの協力が必要不可欠だからだ

「じゃあ青山くん…!!」

コクリと頷いたオールマイトにみんなが安堵の表情を見せた

「あの…ですが…嘘をつけば殺されると青山さんのお父さまは仰っていました、嘘の判別方法が判然としない以上まだ青山さん達への危険が…」

「それもクリアだ、夫妻の話によるとオール・フォー・ワンとの連絡は音声通話のみで文面でのやりとりはゼロ
他にも沢山いるであろうお仲間の言葉を全て精査してから動いてるとは思えない、音声で即時判定できるシステムがあるはず
ではその音声に嘘も何もなければ奴は安心して現れる、だから相澤くんのアイデア通り彼が活きる!」

寮の扉が開いて入ってきたのは心操くん
コスチュームをまとっておりヒーローらしくなった彼にみんながワッと盛り上がった

「心操ーー!!!」

「コスかっけーーー!!!」

「作戦を聞いた時は驚いたわ、だって対抗戦のときは…喋らせることはできなかったはずよ」

梅雨ちゃんの言う通り心操くんが出来るのは相手の掌握のみ
追加効果で喋らせるなんてことはできなかったはずだ

「まいっちゃうよな、4月になったらヒーロー科に編入して皆と競い合ってくと思ってた
そのために個性伸ばし訓練続けてきたのに、まさか進級留め置きなんてさ

行けるぜ、俺が青山と両親を操って喋らせればそこに俺の意思も彼らの感情も介入しない」

心操くんのその言葉にA組は更に湧き立つ

「スッゲー!!!」

「ただその分発動条件が厳しくなるけど」

「すげえや!!」

「サンキュー!!シンソー!!」

「ヒーロー名は!?」

「A組入るの!?B組入るの!?」

「Aにしろ!A!!」

わいわい盛り上がるみんなを見て「明るい…なんだこいつら…」とローテンションな心操くんの様子に微笑んでいると根津校長が「相澤くんが鍛えてくれていた」と告げる

「やっぱ凄いや相澤先生ー!!!」

「ちなみに心操くんには仮免許はまだないが非常事態に目良い院長代理から許可を得た」

「しかし…問題はここからでは?誘き出して一網打尽に?可能だと?
数が減ったとは言えその場に大量のヒーローが待ち伏せていればそれこそバレてしまう」

常闇くんの冷静な分析に静まり返った一同
けれどオールマイトは頷いてから言葉を続けた

「その場にいなければいい」

作戦はこうだ

まず青山くんと緑谷くんという2人だけの状況を作り出し、まるでオール・フォー・ワンに従い緑谷くんのみ引き離したように見せかける

次にオール・フォー・ワンは液体ワープを使ってヴィランを集結させる
サーチを使って死柄木が接触したヒーローが散開していることを逆手に取れば必ずその行動を取るはずだ

だからこちらも同様の作戦をとる

拘束中の黒霧の個性をコピーした物間くんによってヒーローもまたその場にワープさせる

その後、檻でヴィランを分断
そのままワープで各々別の箇所に飛ばす

ヒーローも共に各地へ飛び、同時に複数箇所で一網打尽にする

これが作戦だ



作戦を聞いた後、オールマイトたちから明日雄英を出るように告げられた
死柄木が4日後に動き出すと分かった以上はここにいられない

その後、オールマイトたちが寮を出ていくけれど心操くんはA組の面々に捕まったまま絡まれている

「君たち!さっきも言ったが今日は早く寝よう!明日の移動に遅刻しないように!!」

飯田くんの注意を聞いて心操くんが解放されたという安堵の表情をしてから「じゃあ」と寮を出ていく
その姿を見て彼を追いかけた唄ちゃん

そう言えば対抗戦の時にあの2人なんだか色々あったっけと思っていると爆豪くんが不機嫌そうに寮から出て行ったので焦凍くんと顔を見合わせて眉を下げ笑った




ーーーーーーー
ーーー



翌日


必要最低限の荷物だけ持って雄英の門へと向かうA組のみんな
4日後に死柄木が動き出すという情報があるため避難民のみんなのことを考えて今日私たちはここを出ていく

「みなさん、ありがとうございました!」

私たちが出ていくことを聞いた避難民のみんなが見送りに来てくれたようで集まっている
そんな彼らに頭を下げた

「兄ちゃん!ここを出るって本当!?」

「うん」

洸汰くんが心配そうに声をかけるので緑谷くんは頷いた

「泥を払う暇はもう十分にいただきました」

「あなた方の安全が我々の命題です、ただ一つ…いつ避難システムが作動しても大丈夫なよう心構えだけお願いします」

するとA組の保護者の面々が慌てて姿を現したので各々家族に暫しの別れを告げることに

「お父さん、お母さん」

私を見て心配そうにしながらも眉を下げて微笑む2人
本当はここに引き留めたいんだろうと彼らの心境を読み取って2人に抱きついた

「ちゃんと向き合ってくるね」

海色雫としても、水鞠雫としても
思い出せない記憶はきっと燈矢くんと向き合えば取り戻せる気がする

昨晩オールマイトから聞いた作戦では私は焦凍くんと共に燈矢くんと対峙することになっている
全面戦争後はコスチュームは耐熱加工素材のものに変えてもらっていたので準備不足ということはない

「雫、あなたを引き取って後悔したことなんて一度もないわ」

「今までもこれからもずっとだ」

大好きな2人の言葉に少し涙腺が緩むけれど今は泣いている場合じゃない

「全部終わったらお母さんの手料理食べたいな」

「いっぱい作るわね、雫は食いしん坊だから」

「あと、お父さんと久しぶりに訓練もしたい」

「ああ、もう雫の方がずっと強いけどな」

2人と約束してから離れて向き合う
私とは似ていない両親の顔
全てを知ってからは納得することの方が多くて悲しくもあるけれど、誰がなんと言おうと私の両親はこの2人だ

「行って来ます」

2人を守りたい
その思いが私の原点だ

冷さんや冬美さん、夏雄さんへも軽く挨拶だけしてから雄英を立った








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