ヒロアカaqua


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緑谷くんの個性
凄まじいパワー、パワーだけで言えばオールマイトに匹敵するかもしれないそれ
まだ制御しきれていないのか指が折れているようで痛々しい
そんな様子を見守っていると突然飛び出したのは爆豪くん

「どー言うことだこら!ワケを言え!デクてめえ!!!」

「勝己!」

唄ちゃんが慌てて止めようとするも、爆豪くんを止めたのは相澤先生が出した布

「ぐっ、んだこの布、固っ…!」

「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ捕縛武器だ
ったく何度も個性つかわすなよ、俺はドライアイなんだ」

個性に反したその体質に「勿体無い」と一同が声を漏らす

相澤先生はプロヒーローのイレイザーヘッドらしい、見た個性を消す能力だとか
その後しばらくして全種目が終わり、相澤先生が一息ついた

「んじゃパパっと結果発表
トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ、口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する
ちなみに除籍はウソな」

その一言に固まったクラスメイトたち
やっぱりなと思っていると「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」とハッと笑った先生
騙されたメンバーが悲鳴をあげている姿に苦笑いする

「これにて終わりだ、教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ」

そう言った相澤先生は立ち去る
順位表を見たところ私は5位

「(上に4人も…さすが雄英ヒーロー科)」

ここは個性の扱いが上手な人が集まっている
私がしてきた努力もみんなやっている
そのことにわくわくに似た感情が湧いた







その日は教室にある書類を見て1日が終わった
セキュリティや雄英生としてのルールなどびっしりと書かれているそれを一通り目を通したけれど途中から面倒になって記憶が飛び飛びなのは仕方がないと思う

帰る準備をしていると当たり前のように焦凍くんが「雫、帰んぞ」と声をかけてくれた
中学の時と違って人目を気にせず近づけることに頬が緩む
焦凍くんとは一定の距離感を保つ約束だったけれど、あれはどこへ行ってしまったんだろうか

扉のあたりに唄ちゃんが見えたので、「唄ちゃん、また明日ね」と一声かける
振り返った彼女は焦凍くんを見て不思議そうな顔をした後で「うん、また明日」と笑顔で手を振ってくれた

何度話しても唄ちゃんはやっぱり可愛い
素直で分かりやすい子は好きだ、自分がそうじゃないから憧れに近い感情が含まれているのかもしれないけれど

「何にやけてんだ」

「ふふ、唄ちゃん可愛いんだもん」

雄英を出て歩きながら唄ちゃんの可愛さを熱弁する

「でね!感情に連動して羽がぴょこぴょこって!
多分無意識なんだろうけどそれがまたすごく可愛いの!」

「そういやあいつ飛んでたな」

「綺麗な羽だよね、それに他の羽系の個性と違って体から直接生えているわけじゃないみたい
大きさも自由自在みたいだし良い個性だよね!」

「そうか」

話を聞いてくれる焦凍くんに嬉しくなってついつい話しすぎちゃったけれど、嫌な顔一つせずちゃんと話を聞いてくれるから嬉しい

「お前高校でも素は出さねぇつもりか?」

今の私と学校での私は全然違う
焦凍くんの前以外で自分を出すのは正直怖い
良い子でいなくちゃ、そうじゃないと迷惑をかけてしまう
別にそう言われたわけじゃないのに勝手に自分でそう思い込んで創り出した外面

誰もが憧れるような完璧な自分でいることを枷付けたのは私自身だ

「うん、そうだね」

そう返事をすれば焦凍くんはそれ以上何も言わない
相変わらずの居心地の良さに安心する
しばらく無言が続くけど苦に思わないのはそれだけ私たちの距離が縮まっているからだろう

「(友達として…それでも嬉しい)」

そんなことを考えていた私の耳に届いたのは「なあ」と私を呼ぶ低い声
彼を見ればこちらを向くオッドアイと視線がかちあう

「俺の前では素でいろよ、そっちの方が好きだ」

淡々と告げた焦凍くん
"好き"という言葉にボボボッと顔が熱を帯びる

「な、え!?」

焦凍くんはこうやって急に爆弾落としてくるから本当に怖い
今のも何気なく言っただけなんだろうけど、私からしたらとてつもない破壊力を秘めていた

「どうした?顔赤いぞ」

「だっ、誰のせいだと…!」

「お前まさか風邪か?」

「違います!!!」

やけくそになって真っ赤なまま叫べば「元気そうだな」とか言われた
ど天然に振り回されっぱなしだけど惚れた私の全面敗北なのでどうしようもない

静まりそうにない心臓の音が焦凍くんに聞こえていないか不安だ
そんな私の内心など露知らず、焦凍くんは再び歩き始めている
赤い顔を隠すため、その後を追うように半歩後ろをついて行くことにした

「(よかった、誤魔化せた)」

「(熱じゃねえのになんであんな赤いんだ)」



こうしてドタバタの雄英生活1日目が幕を閉じた








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