ヒロアカaqua


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グラウンドに集合した私たちを先生や男子たちが待っていた

「(わ、焦凍くん体操着も似合ってる)」

惚れた弱みだろうか、どんな姿でもカッコよくみえてしまう

「よし、全員来たな、今から個性把握テストを始める」

「個性把握…テストォ!?」

「入学式は!?ガイダンスは!?」

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ、雄英は自由な校風が売り文句、そしてそれは先生側もまた然り」

お茶子ちゃんの問いに相澤先生は冷たく答えた
いずれはあるだろうと想定していたことなので特に驚くこともなく冷静に事を見守る

「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈
中学の頃からやってるだろ?個性禁止の体力テスト、国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている合理的じゃない…まぁ、文部科学省の怠慢だよ」

確かに言われてみればその通りだ
世代を経るごとに強化されていく個性
もはや超人社会である現代に基礎的な運動力だけで測るものなんて何の指標にもならない

「爆豪、中学の時にソフトボール投げ何mだった」

「67m」

先生が声をかけた子は例の不良くん
唄ちゃんが幼馴染って言ってたっけ、たしか…爆豪くん

「じゃあ個性を使ってやってみろ、円から出なきゃ何してもいい、早よ
思いっきりな」

「んじゃまぁ…死ねぇえ!!!!」

凄まじい勢いで飛んでいったボール
それよりも今の掛け声何なの…と呆れていると、相澤先生の持つ端末からピピッと聞こえた
そこには705.2mの文字

「まず自分の最大限を知る、それがヒーローの素地を形成する合理的配慮手段」

「何だこれ!すげー面白そう!」

「705mってまじかよ!」

「個性思いっきり使えるんだ!さすがヒーロー科!」

個性を使ったテストということに一気に盛り上がる生徒達
ただ、先生は何かが気に入らなかったのか、苛立った様子を見せた

「…"面白そう"か…ヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?
よし、トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、除籍処分としよう」

相澤先生の言葉に動揺が広がる
入学初日に除籍処分なんてたまったものじゃない

「(けれど、多分これは嘘)」

生徒達にやる気を出させるための合理的虚偽
それに気がついているのは百ちゃんと焦凍くんくらいだろうか

「生徒の如何せんは先生の自由、ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」

「最下位除籍って…!入学初日ですよ!?いや初日じゃなくても…理不尽すぎる!!」

お茶子ちゃんの抗議に相澤先生は顔色一つ変えない

「自然災害、大事故、身勝手なヴィランたち、いつどこから来るか分からない厄災
日本は理不尽にまみれてる、そういうピンチを覆していくのがヒーロー

放課後マックで談笑したかったならお生憎、これから3年間雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける
Plus ultraさ、全力で乗り越えて来い」

相澤先生の言うことはごもっとも
渋々納得した一同だけれど、みんな顔色が悪い

「(さて、それじゃあどうしようかな)」

自分の個性の相性的にソフトボール投げは置いておいて
50m走と持久走という走る系は地面を凍らせて滑れば良いタイムは出る
反復横跳びに立ち幅跳びはシャボン玉を創り出してそれを応用すればそれなりの記録は出せそうだ

テストを進めていき、みんなそれぞれの得意分野で何か一つは大きな記録を残している様子
けれど浮かない顔の唄ちゃん

「唄ちゃんどうかしたの?」

「んー…出久があんまり記録良くないから心配で」

そう告げた唄ちゃんの視線の先には緑谷出久くん
確かにここまで何一つ目立った記録を残していない彼はダントツの最下位

「緑谷くんはこのままだとまずいぞ」

近くにいた飯田くんも少し焦ったようにそう告げる
確かに最下位だろうけど別に除籍になるわけじゃないと思うからそんなに心配しなくて良いと思う
それを口に出さないのは先生の方針に従っているだけで、意地悪をしているつもりはない

「ったりめーだ、無個性のザコだぞ!」

「ちょっと、勝己!」

相変わらず口の悪い爆豪くんに唄ちゃんが突っかかる
けれどそんな二人に飯田くんとお茶子ちゃんが不思議そうな顔をした

「無個性!?彼が入試時に何を成したか知らんのか!?」

「は?」
「え?」

無個性
幼馴染である二人はそう言った

振りかぶった緑谷くんを眺めてるけど、記録は46m

その後先生が何かを告げていたようだけど、彼はまた振りかぶった
ただし今度はためにためて、指先だけに個性を集中し使ったようで凄まじいパワーで弾き出されたボールが風を切って飛んでいく

「(無個性じゃない…よね?)」

パワー強化系に見えるそれは上手く使いこなせていないようだけれど立派な個性だ

「…な、に…今の…?!出久に…あんな個性があったなんて」

唖然としている唄ちゃん

緑谷くんの記録は705.3m
爆豪くんの記録を上回るそれを叩き出した彼にクラス中がざわめいた









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