ヒロアカaqua


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寮へたどり着いたA組一同
男子はみんな一斉にお風呂へ向かって駆け出す

「お湯の温度は42℃!!」

「沸かせーー!!!」

「脱がせーー!!!」

「洗えーー!!」

「そして浸かれ!!」

あまりの大声のため外まで聞こえてくるお祭り騒ぎ状態の様子に唄ちゃんと顔を見合わせ苦笑いした
あの後、私と焦凍くんは人目を避けて寮へ戻ってきた
これでようやく22人全員が揃ったことにみんな嬉しそうだ

「私たちも入りましょう」

百ちゃんの言葉に頷いて女子一同もお風呂へ向かう
雨の中ずっと濡れっぱなしだったから風邪を引かないようみんなで温かいお風呂に浸かった




お風呂から上がって共有スペースへ行けば、徐々に人が集まり始める
中には疲労のあまり寝てしまったメンバーもいるけれど

「麗日さんは…?」

「寝ちゃった、安心したら力抜けちゃったみたい他の子もそんな感じ」

「そっか…みんなありがとう、そして迷惑かけてごめん」

緑谷くんがこの場にいるメンバーに向かってそう告げる
頭が冷えたのか自分の行動を後悔している様子でA組一同は少し安心したように表情を和らげた

「そだよー、ワン・フォー・オールねー、言ってよねー」

「そうそう、手紙のおかげでもう驚きとかそういうのは無いけどね」

三奈ちゃんとそう言えば緑谷くんは眉を下げたまま申し訳なさそうな顔をしていた

「無個性からトップオブトップの力なんて…大変だったろ」

「どういう感覚なの?」

「そりゃ骨折れますわ」

口々に話しかける面々
みんな彼が戻ってきて嬉しさのあまり言葉が止まらない

そんな中、緑谷くんの右隣に座った唄ちゃんが「出久」と彼に声をかけにこりと微笑んだ
ああ、あの顔は怒ってるに違いないと眺めていると案の定ビンタかパンチかの二択を迫っている

「舞羽めちゃくちゃ心配してたもんな」

「ドンマイ緑谷」

「ちょ、唄ちゃん待っ!!!」

選択しない緑谷くんに痺れを切らした唄ちゃんはパチーンと彼の頬を平手打ちした
綺麗に手形がついてしまっているので見ていて痛々しい

するとお風呂から上がってきた焦凍くんが緑谷くんのその顔を見て呆れたように唄ちゃんに目を向けた
けれど唄ちゃんはサッと目を逸らして瀬呂くんと峰田くんの方へと逃げていく

「緑谷が1番眠ィだろ寝かせてやれよ、何のために連れ戻したんだよ」

「お前登場そのポーズって素でやってんの?」

「ほんとそれ」

タオルで頭を拭きながら登場した焦凍くんにツッコミを入れる峰田くんと唄ちゃん
まあ、焦凍くんの場合無意識でこれをやってるからすごいよねと苦笑いしていると、三奈ちゃんと響香ちゃん、唄ちゃんからの視線に気がついて首を傾げる

「(なんだろう、すごく見られてる…?)」

3人ともマジかというような表情をしているけれど一体どうしたんだろう

緑谷くんは自分の隣に座る焦凍くんへ目を向けた

「大丈夫…っていうかまだ眠れなくて」

「なんで」

「オールマイトに酷い事をして…そのままなんだ、謝らなきゃと思ってるんだけど…連絡がつかなくて」

その話を聞きながら焦凍くんが指差したのは寮の窓
そこから中を覗いているオールマイトの姿はちょっとしたホラーで思わずびっくりしてしまった

中に入ってきた彼は深々と頭を下げる

「こちらこそ力になれずすまなかった緑谷少年!!」

「そんな…!オールマイトは十分力になってくれてます!」

慌てる緑谷くん
けれど三奈ちゃんはタタタッとオールマイトに駆け寄った

「謝るなら私たちにも謝ってヨネ、オールマイト!黙ってどっか行っちゃわないでよー!!」

その通りだ
緑谷くんが大切なようにオールマイトも私たちにとって大切な仲間だもん

しばらく黙ったオールマイトはゆっくり口を開く

「決戦の日は恐らくもうすぐそこだ…心労をかけてすまなかった…詳しい話は避けるが情報を得ている、近い内に答えがわかる
総力を持ってあたる…私も……この身でできることなど限られているが…それでも」

「オールマイト!トンカツ弁当とても力になりました…!
僕はきっとオールマイトから離れてしまったからあんな風に…だから…一緒に…!」

「守りましょう!!」

オールマイトへ声をかけた緑谷くんと飯田くん
他のメンバーもみんな同じ気持ちなので頷く

オールマイトが守ってきたこの国
今度はみんなで守るんだ
ヒーローみんなで

「ありがとう」

その後オールマイトはにこりと笑ってからエンデヴァーの下へと行ってしまった

「エンデヴァーたちは雄英入らないのかな?」

「徒に人前に出れねぇよ、荼毘がチラつくからな」

焦凍くんが言うようにエンデヴァーとホークスは雄英に入らない
ベストジーニストも必要外では混乱を避けるために雄英には来ないようにしているらしい

「今回の件で避難してる人たち全員が一様に見方が変わったワケでもねェだろうし」

緑谷くんはソファで寝てしまっており、そんな彼に焦凍くんは毛布をかけた

「荼毘の兄弟、エンデヴァーの息子…内心ではきっと俺の存在も未だ不安だろう」

「それは私もだよ…エンデヴァーの親友の子供、ヴィランに狙われた水鞠の生き残りだもん」

一度攫われている私を見てまたヴィランが狙ってくるんじゃないかと不安になる人も少なくないと思う
そう思って言葉を発したけれど、みんなが心配そうにしているので安心させるために微笑んでおいた

「家庭事情で…悔しいよなぁ轟と海色が何かしたわけじゃねぇのになぁ」

悔しそうに言った切島くん
けれど焦凍くんはすかさず「俺はしたよ」と告げた

「血に囚われて原点を見失った…でも今は違うから違うって事を証明する…みんなに安心してもらえるように」

「漢だよおめぇは…!俺何だか涙が出てくるよ…!!」

感極まってる切島くん
私も焦凍くんと同じ気持ちだ
安心してもらうためにも燈矢くんと向き合わなきゃいけない

すると響香ちゃんが何かを思いついたような顔をした

「避難してる人たち全員が全員見方が変わったワケでもない…か
あれだね、なんかあれ、同列に言っちゃうのもおかしな話だけどさ」

クイっと耳のイヤホンを伸ばして上鳴くん、百ちゃん、常闇くんを引き寄せた響香ちゃんが爆豪くんの服と、唄ちゃんの腕を掴んで引き寄せる

「ウチら不安視してた人たちがいてさ、みんなに安心して欲しくて…笑って欲しくてさ…やれる事考えてさ
文化祭みたいに最大限の力でやれることやろう、ウチら出来たじゃんね!」

響香ちゃんの言う通りだ
焦凍くんと私は顔を見合わせてから頷く

「そうだな」

「うん!」

あの時とは何もかもが違う
でもやることは変わらない
それを響香ちゃんは言いたいんだと思う

「取り戻すだけじゃなくて前よりもっと良くなるようにみんなで行こうよ、更に向こうへ…!」

どんな壁も今まで乗り越えてこられた
だから大丈夫、きっとこの先も乗り越えられる

みんなの中心で眠る緑谷くん

もう彼を1人で戦わせたりなんてしない
私たちは22人で雄英高校ヒーロー科1-Aだ








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