ヒロアカaqua


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A組の総意を聞いてエンデヴァーは力なく言葉を紡ぐ

「…外は危険だ、秩序がない…お前たちまで…」

「大人になったね、轟くん…!私は…ヴィランの目的である彼が雄英に戻りたがらないことを踏まえチームアップを是とした…でもいいのさ、戻ってきても」

「えっ!?」

根津校長の言葉に響香ちゃんが驚いたような表情になった
響香ちゃんだけじゃない、私も他のみんなも目を丸くする

「合格通知を出した以上は私たちが守るべき生徒さ」

「しかし避難者の安全が…彼らの中にはまだ…!」

「何も敷地面積だけで指定避難所を受け入れたわけじゃない、彼らには私から何とか伝えよう
文化祭開催に伴い強化したが結局出番のなかったセキュリティ"雄英バリア"、その真価と共にね
いいんだよ…オールマイトだってここで育った!君たちの手で…連れ戻してあげておくれ」

雄英バリア
そう言えばそんなものがあった気がする

「雄英バリアの真価…と仰いましたが…我々も緑谷くんの気持ちは理解して来ています
連れ戻すのであれば相応のエビデンスを要します、避難されている方の安心と安全に関わります」

飯田くんの言う通りだ
だからA組みんなで"緑谷くんについていく"と決めた

「もちろん感情論じゃないさ、緑谷くんは今やヒーロー側の貴重な最高戦力
情勢を踏まえても半端な施設で保護するのはリスキーさ
雄英には国の最新防衛技術が卸されている、レベルで言えばタルタロスと同等の防御力を誇るのさ」

「そのタルタロスが死柄木に容易く破られていますが…」

あのタルタロスほどに強靭な守りも死柄木は破ってしまった
どこにいても安心できる場所はない、そう思っていたのに違うんだろうか

「去年雄英も破られた、死柄木の脅威には私も目をつけていた
そこで強化時雄英のシステムに私独自の改修を加えた」

「そんな事可能なのですか!?」

「くっそ揉めたさ
結論から言えば、今この瞬間侵略が始まろうと避難民及び毒牙に掛かることはなくヴィランの侵入を許すことはない
今、雄英バリアは単なる防壁に留まらない、雄英は動く!
敷地を碁盤状に分割しそれぞれに駆動機構を備え付けた、有事の際には区画ごと地下に潜りシェルターとなる!
そしてシェルターは超電動リニアシステムによって幾通りものルートを適宜移動する」

「ロボアニメっぽくなったぞ!!!」

地下シェルターとか動くとか何事だとは思うけれど、根津校長なら実現してしまいそうなのでぽかんとしながら見守る

「その仕組み自体が崩されれば元も子もないさ、なので周辺地下には計3000層の強化防壁それらが異常を検知すると迎撃システムが発動
また支柱がアンロックされ防壁も独立可動、どんな攻撃でも到達を遅らせれる
その間にシェルターは安全なルートを辿り、雄英と同等の警備システムを持ち"入れ替わり事件"を契機に連携を強化した士傑高校を筆頭にいくつものヒーロー科高校へと逃げられる」

「なるほど」

理には適っているそのシステム
実現させてしまう根津校長のIQは人智を超越している

「士傑!?どれだけ長距離だよ!!」

「「そういや言ってたような」」

仮免補講の時に何か聞いていたのか焦凍くんと爆豪くんがそう告げたので、前から決まっていた大規模な改修のようだ

「"伝播する崩壊"対策と見受けられますが…文化祭時点ではまだ判らなかったはずでしょう?」

「それこそ何のエビデンスも無い、私の勘だよ
だから費用は私の持出さ」

ギョッとした唄ちゃんと上鳴くん
自費で賄えるレベルの話じゃ無いから私もびっくりした

「億とかじゃ済まなさそうなんですか!?」

「校長は個性道徳教育に多大な貢献をし世界的偉人となられた、今なおご尽力されているのだ」

「「ほえぇ」」

規模も投資金もスケールが違いすぎる
改めて雄英高校は本当にめちゃくちゃだ

「不理解、不寛容、何れもあと1歩…近寄ることのできなかった人々の歩み…動き、犇き合う中その1歩が如何に困難な道であるか
ともかく彼がここに居ていい理由も理屈も在るよ、君たちはただ全力でぶつかっていけばいい」

校長の言葉に唄ちゃんと顔を見合わせる
緑谷くんの居場所がここでいいと言ってもらえたことが嬉しくて、2人してホッとしたように笑いあった



その後、寮へ戻りつつ焦凍くんと飯田くんと3人で緑谷くんのことを話す

「まったく、緑谷くんは人の問題にはずかずかと踏み入ってくるのに自分のことはからっきしだな!」

ご立腹な様子の飯田くんに眉を下げ頷く

「心配かけたくない、ってことなんだろうけどね…友達なんだから頼ってほしいよね」

「そうだな」

ずっと彼はワン・フォー・オールの秘密を抱えていたんだろう
思えば入学当初は個性を使いこなせていなかたったし、大きすぎる力に体をボロボロにしていたっけ

対抗戦で見た黒鞭の暴走も歴代継承者の個性が発現した結果らしい
爆豪くんと唄ちゃんは知っていたんだろう、よく一緒に訓練していたし

「緑谷くんはさ、爆豪くんの言うように自分を犠牲にして誰かを救けちゃうような人なんだよ」

USJの時はオールマイトを救うために飛び込んでいた
体育祭の時は指や腕を犠牲に焦凍くんの目を覚ました
ステインの時は命を危険に晒して飯田くんを救けた
合宿の時も洸汰くんを救けるために全身骨折になった
ヴィランに連れて行かれた私と爆豪くんを救うために神野にやってきた
エリちゃんを救うために治崎との戦いで100%の力を放出し続けた
全面戦争の時も自分を狙う死柄木からみんなを守るために飛び出して行ってしまった

私もヒーローだから似たようなことをする時もある
けれど緑谷くんはそもそも当たり前にそれを行ってしまうんだ

「危なっかしいからちゃんと見ててあげないとね」

彼が無茶をするなら私たちが彼を守ればいい
救ってもらった側の私たちにできるのは彼の手を離さないことだけだ

「海色くんの言う通りだ、必ず緑谷くんを連れ戻そう」

「ああ、色々言いてえことはあるがまずはアイツを連れ戻すところからだ」

爆豪くんや唄ちゃんのように幼馴染の絆はなくても私たちも同じように緑谷くんが大切だ
だから必ず彼を連れ戻す、1人で戦わせはしない








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