ヒロアカaqua


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緑谷くんが雄英から姿を消して数日後

そもそも彼は私たちより退院が遅かったこともあり、情報が遮断されていた
だから緑谷くんが目を覚ました後何を思い、どういう決意でこれを書いたのかはわからない

手元にある彼の手紙を眺めつつ、スマホを確認すればやっぱりエンデヴァーからの返信はない

「雫はどうだ?」

「私もダメ…爆豪くんと常闇くんは?」

「ねェ」

「静寂」

この場の4人のそれぞれの師であるトップ3は今チームアップを組んでいる
忙しいのは理解できるけれど連絡が返ってこないのはどう考えてもおかしい

「決まりだな」

確信に変わったためA組のみんなのところへ向かえば、緑谷くんからの手紙を見つめ俯き落ち込んだ様子だった
特に唄ちゃんは酷く狼狽していたし、心配だ

「みんな…緑谷くんの場所わかったかもしれない」

そう声をかければみんながハッと顔を上げこちらを向いた

「それ…本当に?」

お茶子ちゃんの問いかけに頷いたのは焦凍くん

「推測でしかねェけど…」

「十中八九エンデヴァーたちといる、あのクソナード!!」

緑谷くんが書き残した手紙を破いた爆豪くんは怒り心頭の様子

「推測…?連絡をして確認を取ったんじゃないのか?君たち4人の師に…」

「幾度もしたさ、だが電話には出なかった」

「ジーパンも」

「親父もだ」

「私のところにも来てない…忙しいとは言え不自然だよ、私たちに隠し事してるとしか思えない」

緑谷くんが姿を消してからパタリと途絶えた連絡
絶対にあの3人は緑谷くんのことを知っている

「たしか…オールマイトも戻ってないんだよね」

「らしい」

響香ちゃんの問いに尾白くんが頷いた

「授業は停止、新級も留め置かれてる…ヒーロー科生徒は基本寮待機と周辺の警備協力…細かい情報を得にくい環境だ」

その通りだ
だから私たちは数日経っても緑谷くんの情報を何も掴めていない

「ジーパンとヘラ鳥は病院でデクに接触してる、オールマイトとも…
この手紙、雄英に近くことすらビビってんなら誰がコソコソ真夜中ドアに挟み込んだ?
オールマイトしかいねぇ…!あいつらきっと組んで動いてる!」

爆豪くんのその言葉にみんなの表情に動揺が広がった

「大人といるんならむしろ安心していいんじゃなウィ☆?」

「トップ3のチームアップしかニュースないぜ?オールマイトは入ってない」

「だからだよ…俺たちはエンデヴァーたちよりデクのこともオールマイトの事も知ってる…多分考え得る最悪のパターンだ」

手紙の破片を握りつぶし、その拳を睨みつける爆豪くんに切島くんが立ち上がった

「じゃあ連絡手段をどうするか!!?だな!!」

トップ3の誰かと連絡が取れれば彼の居場所はわかるかもしれない
けれどそれをどうするか

「何か方法が…」

と、その時お茶子ちゃんがスッと立ち上がりみんなを見た

「エンデヴァーって雄英卒だよね…強引に行こう」




ーーーーーーー
ーーー




A組の会議から数日後



校長室の入り口を開け中へ乗り込んだ私たちA組
真正面にはふかふかの椅子に腰掛ける根津校長と、こちらを振り返るエンデヴァーの姿

「校長…ハメましたね…!?」

「彼らの話を聞いて対話の余地があると判断した、私は常にアップデートするのさ」

あの日、お茶子ちゃんの作戦はこうだった
雄英卒であるエンデヴァーは根津校長の招集には必ずやってくるだろう
だからそこを突撃し、接触しようと

事前に根津校長に話は通しているし協力してくれた為すんなりいったこの作戦
先頭にいる私、焦凍くん、爆豪くん、唄ちゃんの4人
エンデヴァーは自分の事務所へインターンに来ていた私たちに気まずそうな表情をした

「何で私たちのことをスルーしたんですか?」

エンデヴァーを睨みつけそう訊ねると彼は目を逸らした

「燈矢兄を一緒に止めようって言ったよな!?」

「焦凍、雫…その気持ちだけで俺は救われているんだ」

「俺は救われねぇよ!緑谷だけは例外か!?」

「エンデヴァー…緑谷くんとオールマイトを2人にしてますよね?」

私の問いに黙り込むエンデヴァー
無言は肯定だろう、その様子に爆豪くんが焦凍くんを抑え前に歩み出た

「っぱな…ああ、正しいと思うぜ概ね正しい選択だよ…!デクのこと…わかってねぇんだ…
デクは……イカレてんだよ頭ぁ…自分を勘定に入れねぇ
大丈夫だって…オールマイトもそうやって平和の象徴になったからデクを止められねぇ

エンデヴァー!2人にしちゃいけない奴らなんだよ!!」

そう言った爆豪くんの背中は友達を心配するもので、彼の緑谷くんを心配する気持ちが伝わってきた

「しかし…」

スッと端末のようなものを取りだしたエンデヴァー

「っ…それ…GPS…ですよね?」

唄ちゃんの問いにエンデヴァーは答えない

直後、一瞬で間合いを詰めた唄ちゃんはその手から端末を奪い取る

「ナイス!舞羽!!」

すぐに距離を取った彼女の前に出る瀬呂くんと口田くん
エンデヴァーが取り返すようなら抵抗しなきゃいけない

「こっ!これ借りていースか!?あのっ…俺!偶々同じクラスになっただけスけど!」

「僕も…1年一緒に過ごしただけ…だけど」

2人の言葉を聞いて焦凍くんと飯田くんと共に前に出た
あの時ステインと一緒に戦って秘密を共有した私たちはずっと一緒だったはずだ
友人だと思っていた、だからこそとても悔しい

「ワン・フォー・オールの悩みを打ち明けてくんなかったのも、あんな手紙で納得すると思われてんのもショックだけど」

「この1年間みんなで一緒に色んなことを乗り越えてきたのに、戦力外として扱われたのは落ち込むけれど」

「我々A組は彼について行き、彼と行動します、ワン・フォー・オールがどれだけ大きな責任を伴っていようが緑谷くんは友達です
友人が茨の道を歩んでいると知りながら明日を笑うことは出来ません!」

緑谷くんが狙われていると知って放ってなんておけない
委員長として、友人として、みんなを代表して言い切った飯田くんにエンデヴァーは暫く黙っていた









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