ヒロアカaqua


▼ 11



雄英高校ヒーロー科
それはプロに必須の資格取得を目的とする養成校
全国同科の中でも最も人気で最も難しく、その倍率は例年300を超えると言われている

プロヒーローの中でもかなり有名なオールマイト、エンデヴァー、ベストジーニストといった著名人も雄英卒業生である

つまりヒーローで成功するためには雄英が絶対条件なのだ








「緊張してんのか」

そう問いかけてきた焦凍くんに小さく頷いてから校舎を見る
ここが私がこれから3年間学ぶ学校

「けどそれよりも今は楽しみの方が大きいかも」

焦凍くんに返事をするも、既に彼は何歩か前を歩いている

「置いてくぞ」

「えっ、ちょっと待ってよ!」

焦凍くんを追いかけて向かった先は1-Aと書かれた大きな…いや、巨大すぎる扉
見かけに反して意外にも扉は軽く、容易にスライドできた
教室には既に何人か生徒がおり、みんなどこか緊張したような面持ち

私の席は廊下側の前から5つ目
前にはガイダンスの時にいた聡明中の真面目くん
席に座ってから教室を見渡せば最先端の設備という印象を受ける造りをしていた

「(さすが雄英、中学と全然違う)」

その時教室の扉が開いて入ってきたのは金色の髪の毛を揺らす唄ちゃん

「唄ちゃん」

やっぱり合格していた彼女に嬉しくなって思わず駆け寄る

「わあっ!雫ちゃん!」

何度見ても可愛らしい唄ちゃんに思わず顔が破綻し素が出そうになるがぐっと堪えた

「よかった、ずっと会いたかったの、同じクラスだなんて嬉しい」

「私もだよ!雫ちゃんがいなかったら多分合格出来ていなかったと思うし…だから本当にありがとう!」

「そんなことないよ
私の方こそ助けてもらったもん、ありがとうね」

しばらく2人で話し込み、始業の時間が近づいてきたので互いの席につく

今年は1-Aは一般入試40名に推薦入試4名を加えた22名2クラス制らしい
ヒーローの人手不足が問題化しているので今年は試験的に人数を増やしたとのこと

よって、席は4列が5席
端の列の席が6席になっている構造みたいで私の後ろにも一つ席がある

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

突如聞こえたその声に窓際を見れば、唄ちゃんの前の席の男の子が例の真面目くんに注意されていた
机に足を乗せている姿からして不良なのかもしれない

「(凝山では見たことないタイプだ…!!)」

漫画でしか見たことがない初めての不良との遭遇に呆気にとられる

「思わねーよ!てめーどこ中だよ端役が!」

「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」

「聡明ー!?くそエリートじゃねぇか、ぶっ殺し甲斐がありそーだな!」

「君ひどいな、本当にヒーロー志望か!?」

と、その時教室へ入ってきたのは真面目くんもとい飯田くんに指摘されてた緑色のモジャモジャ頭の男の子
そして続けて茶色のボブヘアーの女の子も入ってきた

「あ!そのモサモサ頭は!地味めの!」

次々と現れるクラスメイトを遠巻きに眺めていると、どこからともなく低い声が聞こえた

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け、ここは…ヒーロー科だぞ」

突如聞こえた声にクラス中の時が止まる
どこから聞こえたんだと探していると、廊下から寝袋のまま動いて入ってくるその人はエナジードリンクを勢いよく飲んで立ち上がった
まるで芋虫のような動きにゾワッとしてしまう
そう、私は大の虫嫌いなので本当にこういうのは無理だったりする
想像するだけで…あ、やばい、気持ち悪い

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました
時間は有限、君たちは合理性に欠くね
担任の相澤消太だ、よろしくね」

棒読みでそう言い切った相澤先生にクラス中が静まり返ってる
ドン引きの一同を他所に、先生は寝袋の中から体操着を取り出した

「早速だが、これ着てグラウンドに出ろ」

どこから出したんだと思いつつ体操着を受け取り、他の女の子たちと共に更衣室で着替えていると唄ちゃんの「え?」という声が聞こえた

「あっ、いや、ジロジロ見てごめん!
その羽珍しいなーって思って」

その声に周りの女の子たちも唄ちゃんの背中の羽を凝視しはじめた
背中から直接生えているわけじゃないそれは確かに珍しい
羽系の個性の人はみんな体の一部として扱っているため、どういう仕組みで唄ちゃんの羽が浮いているのかは疑問だ

「あんまり見られると恥ずかしい、かも」

おろおろしている唄ちゃんは本当にころころと表情を変えて可愛らしい
子供を見ている時と同じような気持ちになる

「真っ白だし天使みたいだよね」

そう言えば周りの女の子もうんうんと頷く

「天使って雫ちゃんみたいな人のことを言うんだよ」

「えっ」

まさかカウンターを食らうとは思ってなかったのでギョッとしてしまう
その様子を見ていた女の子たちがクスクスと笑い始めた

「あんた達二人とも面白いじゃん、私は耳郎響香」

「あ!私、麗日お茶子、お茶子って呼んでね」

「蛙吹梅雨よ、梅雨ちゃんと呼んでくれると嬉しいわ」

「私は芦戸三奈!よろしく!」

「私は葉隠透、透でいいよ!」

「あの、私は八百万百と申します…その、仲良くしてくださると嬉しいですの」

みんなの自己紹介が終わったところで、私と唄ちゃんも顔を見合わせた

「私は舞羽唄、この羽は個性なんだ
同じクラスの爆豪勝己と緑谷出久は私の幼馴染だよ、みんな宜しくね!」

「私は海色雫です、今日から宜しくね」

にっこり微笑んだ私を見て、百ちゃんがぽかんとしていた

「まさか、あの雫ですの?!」

突然肩を掴まれて驚きを隠せないでいると、百ちゃんが「覚えてませんか?うちでパーティした時のことを」と告げた
確か昔、商社マンのお父さんが何人かの同僚とお呼ばれしたパーティ
私も一緒にお邪魔したけれど、あの時おしゃべりした八百万家の百ちゃんだと思い出す

「え、百ちゃん?」

あの頃から綺麗だったけど見違えるほど綺麗になっている百ちゃんにびっくりした

「また会いたかったんですの!」

嬉しそうにそう告げる百ちゃんにつられて微笑む
あれ以来ずっと個性強化訓練に明け暮れていたから会えてなかったけれど百ちゃんは私を覚えていてくれたらしい、それが嬉しくて仕方がない

「今日からは毎日会えますね」

「うん、またよろしくね」

そう言って握手を交わし、体操服へ着替えた私たちは急いでグラウンドへ集合した










prev / next



- ナノ -