ヒロアカaqua


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上空で繰り広げられる緑谷くんと死柄木の戦い
目にも止まらぬ速さで繰り出される攻撃の数々に呆気にとられてしまう

「すごい…死柄木を圧してる」

「ダメだこのままじゃ負ける」

「え?」

私の隣に並んだ爆豪くん
その傍にはエンデヴァーもいる

「足やエアフォースで反動を殺しつつ複数個性を並行操作…死柄木を空に留めるためにデクは今まで習得したもん総動員してる
初撃で倒しきれなかった以上削り合い…消耗戦になってんだよ、そんな状態の奴が再生持ちに粘れる訳がねぇ…あと数分後にゃ力奪られて粉々だ!轟、処置は済んだな!?」

「ああ、何を…」

「うるせー!俺に掴まれ!
エンデヴァー!上昇する熱は俺が肩代わりする!轟はギリギリまでエンデヴァーを冷やし続けろ!!
海色!テメェもエンデヴァーを冷やせ!ジェット噴射である程度なら飛べンだろ!!」

「っ…うん!!」

爆豪くんのやろうとしていることを察して拳を握って頷く
彼は自分の速度に私がついてこれるだろうと信じてくれている
推進力はない、けれどある程度局所的な瞬発力なら水のジェット噴射で賄える

「俺の最高火力を以って一撃で仕留めろということか…任せろ」

「そんな…子どもに…!」

ロックロックが青ざめた表情で口を挟むけれど今はもうそんなことを言っている場合じゃない

「先生たちを頼みます!」

「っ、ああ…」

エンデヴァーの右腕を掴み爆豪くんの爆破に合わせ自分のジェット噴射をしながらエンデヴァーを冷やしていく

「黒鞭が伸びきったところを狙う!俺が出たら3人はすぐに離れろ!巻き込まれるぞ!!」

エンデヴァーの指示を聞きながらも視界に入る緑谷くんがもうボロボロで息が詰まる

「緑谷…頑張れ…!」

「緑谷くん…っ!!」

いつだって笑顔で助ける、そんなヒーローを目指している彼の口角は上がっていない
今はただ、目の前の悪を倒す為にその拳を振るっている

「エンデヴァー!ラス1絶対あてろよ…!!」

上昇していく中、緑谷くんの黒鞭が死柄木を掴んだまま伸びきった

「今だ!!」

飛び出したエンデヴァーが死柄木を羽交い締めにする

「エン…」

「離れろ!!」

「てめェ…!!」

緑谷くんにそう告げたエンデヴァーが最大出力のプロミネンスバーンを放った
爆風と熱に腕を顔の前に持っていくけれど、見えたのは熱に燃やされながらも抵抗する死柄木の姿
そしてエンデヴァーを貫く緑谷くんの黒鞭のような個性

「「「エンデヴァー!!!」」」

「な…ぜ…死なん…!!」

ずるりと引き抜かれた箇所から出血し、エンデヴァーの血が溢れ出す
既に満身創痍だったところでの大技だったこともあり、力を失い落下していく姿に青ざめた

「エンデヴァー!!!」

必死に腕を伸ばし彼の下へと急ぐ
死柄木はもうエンデヴァーに興味を示しておらず、緑谷くんへと先ほどエンデヴァーを貫いたものと同じ個性を伸ばしていた

「弟を…」

緑谷くんが狙われていると判断した時にはもうその個性は彼の目前へと迫っていて、間に合わないと絶望した
けれど私と同じように彼の危機を察知していた人がいた

彼は勢いよく爆破を繰り返し、緑谷くんを押し出すように体当たりして個性から庇った

血飛沫が舞う

エンデヴァーを掴んだ私の目に映るのは死柄木の個性に貫かれている爆豪くんの姿

「一人で…勝とうと…っしてんじゃ…ねェっ」

「っ…やめ…ろ…」

死柄木が爆豪くんを振り払う
落下していく彼の姿に言葉が出ないでいると、焦凍くんが爆豪くんをキャッチする

「俺…の…っ…今日の戦いで……無駄な血が多く流れたが…今のが最も無駄だった」

死柄木のその言葉を聞いた途端、緑谷くんの姿が荒々しいものに豹変する
まるで暴走状態のようなその様子に鳥肌が立った

「取り消せ!!」

エンデヴァーを抱えた状態で宙に浮くのは限界で私の高度も徐々に落ちてくる
焦凍くんも既に落下し始めており、緑谷くんの加勢にいける状況ではない

そんな時、彼の鼻に死柄木がデコピンをした
そう、"触れた"のだ

「緑谷ァ!!!!!」

死んでしまう

「やっと触れた…貰うよ、ワン・フォー・オール」

このままだと緑谷くんが死んでしまう

「緑谷くん!!!!」

直後、緑谷くんと死柄木双方が弾き飛ばされる
緑谷くんは生きている

落ちゆく緑谷くんを抱えて既に地面にいる焦凍くんの下へ連れていく

「爆豪!緑谷!エンデヴァー…!」

「生きてる、3人とも息がある!!」

「頑張れ!すぐ処置するから…」

焦凍くんの言葉を遮るように聞こえた物音
こちらへ迫りくる死柄木

蜘蛛の足のように張り巡らされる糸状の個性で死柄木の体は浮いている

「焦凍くん、3人をお願い」

「待て雫!!」

「いいから処置を!!!」

せめて処置の時間くらいは稼ぐ
そう決意し構えた

「弔っ…ダメだよ…退かナ

あんた…の…言っ、言…言いっ…なり…には……!」

様子がおかしい死柄木に息を飲んだ瞬間、私たちから死柄木を遠ざけるように飛んできた攻撃

「みんな!!」

加勢に来てくれたのは波動先輩と飯田くんだった







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