ヒロアカaqua


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どうしてこんなことになったんだろう

今朝寮を出る前に唄ちゃんと会話したことを思い出す

「私だけ別行動なんて…納得いかない!!」

本来インターン先単位での行動となるはずなのに何故か今回はギルティルージュが唄ちゃんを引き抜いた
理由は私たちには知らされていない

「でも今日だけだし」

「それでも…」

今回の合同作戦
クラスの半分がそれぞれ同じ任務地というこの状況
流石に何か大きな事件が蠢いてるような気がしてならない

それはきっと唄ちゃんも感じているんだろう
あえて口に出さないだけできっと心配なんだと思う

「帰ったら話聞かせてね、約束」

小指を前に出せば唄ちゃんは眉を下げて微笑んだ
そっと絡められる小指

「うん、雫ちゃんの話も聞かせてね」

その後いつも通りの笑顔で別れた


もしかするとあれが最後の言葉だったのかもしれない
そう思えるほどに目の前の現場は凄惨だ





緑谷くんと爆豪くんを連れ戻すため飛び出した私と焦凍くん
死柄木のせいか、無線は遮断され状況はわからない

先ほど瓦礫の中から見つけたリューキュウたちヒーローを救助し、焦凍くんが回復する
回復薬を常備している彼のコスチュームが功を為した

「大丈夫ですか?!」

「応急処置は済ませました、けどまだ動ける状態じゃ…」

「早く…逃げなさ…っ!!!」

直後、彼女は飛び出していってしまう

「なっ…」

「俺たちも行くぞ!!」

彼女が向かった先が死柄木のところだと察して追いかける
必死に駆け、ようやくたどり着いたそこでは死柄木が相澤先生の顔面に触れるところだった

先についていたリューキュウは満身創痍で倒れている
やはりこの場には緑谷くんと爆豪くんもいてエンデヴァー、グラントリノ、ロックロック、マニュアルもいた

「ようやくクソゲーも終わりだ…!!」

その光景を捉えた瞬間、焦凍くんの氷結と私の津波が死柄木を吹き飛ばす

「「先生ぇ!!!!」」

状況は未だにわからない
でも相澤先生のピンチだということは伝わってきた

すぐに緑谷くんが死柄木を殴り飛ばして相澤先生を抱える

「ううっ…先生…!先生!!!」

先生を死柄木から離れた場所に下ろした緑谷くん

「守った先に何がある?必死に先送りにしても待ってるのは破滅だけ」

死柄木は超再生があるのか体が回復している
どういう原理かはわからないけれど、今の死柄木からはあの日神野で出会ったオール・フォー・ワンに似た気味の悪いものを感じた

「ショート!シャボン!」

氷結をエンデヴァーの傍に生み出した焦凍くんの目は死柄木を捉えたまま
一瞬でも気を抜けば死ぬということは今までの経験で把握済みだ

「リューキュウたちを助けてて遅れた
体冷やせ、気休め程度にはなるだろ」

「大丈夫ですか?!」

エンデヴァーに駆け寄ったけれど、彼は私を制す

「っっっ…っそがぁ…!!!」

耳に届いた爆豪くんの声

「脚を上に!捕縛布で止血を…ってめっちゃ絡まる!これどうなってんの!?」

「デク…!逃げろ」

「嫌です…!!!」

そして緑谷くんの声

今この場にいるメンバーで死柄木に対抗するしかない
エンデヴァーも既に体力を消耗しており、相澤先生とグラントリノとリューキュウは重症
ロックロックとマニュアルは救助に当たっている

動けるのは学生の私たちだ

ゆらりと立ち上がった死柄木が地面に手を触れようと身を屈める

「さてと…死ね」

けれどその身体が割れ、血が溢れた

「あ?さっきまでのは…まだわかる…肉体の限界を超えて動いた負荷……今、何月何日だ?」

死柄木の問いに緑谷くんが呟いた

「体が…大きすぎる力に体が間に合ってないんだ…!!」

それはまるで入学当初の緑谷くんのようで息を飲む

「触れりゃ終わりだ」

超回復の個性か何かで負荷に耐えられない体を無理に治した死柄木
再び地に触れようとするが、直後その場にいた全員の体が宙に引き上げられた

「浮いた」

視界に映るのは宙を舞う緑谷くん
彼の体から出る黒鞭が私たちを死柄木もろとも全員浮かせている

「緑谷くん…浮遊してる…!」

知らぬ間にまた彼は個性がパワーアップしてる
いや、これは単なるパワーアップなんかじゃない

「(複数個生持ち…!)」

焦凍くんや唄ちゃんのように2種類の個性ならまだ分かる
けれど黒鞭を併せて3つ目の個性

「空でお前を止める、僕の出来る全てをかけて!!」

そう告げた緑谷くんは死柄木以外のメンバーを地面に降ろす

「グラントリノたちを頼みます!!」

「ショート!怪我人の処置を!!」

降ろされたことで空を見上げることしか出来ないこの状況

「(あの時と同じだ)」

死穢八斎會の時に宙で戦うギルティルージュと唄ちゃんを眺めることしか出来なかったあの時と変わらない

「待てデク!!おまえが1番そいつに近づいちゃいけねェんだぞ!!"抹消"はもう…消えてンだぞ!!」

「じゃあ他に誰が死柄木を空に留めておける!?」

爆豪くんの叫びに違和感を覚えた
1番近づいちゃいけないとはどういうことだろうか

「(緑谷くんには…何か秘密が…?)」

「空が好きなら力奪った後天国にでも送ってやるぜ!下のジジィ共も同伴でな!」

「これ以上みんなを!傷つけるな!!!!」

為す術もない私は自分の無力さを思い知りながら彼らの戦いを見守っていた








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