ヒロアカaqua


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翌日、クレイドとの国境付近の駅に到着したものの緑谷くんの手がかりはない

「やっぱりまだ国境を越えてないのかも」

「となると…あの渓谷あたりじゃない?」

オセオンとクレイドの間にそびえ立つ広大な渓谷
私たちが降りた駅には警官隊もいたので警備も強化されているんだろう

さてどうしたものかと思っていると、遠くの渓谷の崖が崩れたのが見えた

「舞羽」

「うん」

焦凍くんに返事をして唄ちゃんが音波の個性を使う
ずいぶん離れたところの音も聞き分けられるようになっている唄ちゃんは本当に個性の扱いが上手くなったと思う

「出久だ…!」

ハッとした唄ちゃんの言葉と共に爆豪くんが走り出す
警官の目を掻い潜って爆破で渓谷へと向かっていく彼に私たちも続いた

視界に入って来たのは緑谷くんともう1人の男の子を狙うヒューマライズの団員
ヘリから緑谷くんを狙う弓矢の個性の女、そして男の子目掛け鉄球を投げ落とそうとする男のヴィランだ

その時、男の子が崖から落下する

「唄ちゃん!!」

「うん!」

咄嗟にこの中で一番速い唄ちゃんの名を呼べば、彼女はドッと加速し落下する男の子を抱え、崖の上へと彼を下ろした

「唄ちゃん!?」

「保須の時といい、おまえの通信はわかりにくい」

そう告げた焦凍くんの氷結が男のヴィランを拘束、頭だけ出しているような状態にした
直後、焦凍くんの背後に迫る矢を防ぐために水の膜を張って彼らを守る

「(あの矢の個性のヴィラン…厄介だな)爆豪くん!」

「わーってらァ!!!」

機動力に長け戦闘力も随一の爆豪くんに任せようと思ったけれど、言わずとも理解していたようで爆破を繰り返しヘリに近づいた彼がA・P・ショットを撃ち込んでいく
その間に轟くんが氷結させたヴィランに近づいた

私も爆豪くんを援護するためヘリに集中していたけれど、直後
焦凍くんの目の前にいた氷結の中のヴィランへ矢が放たれた
氷結が砕け、自身の鉄球の重さで急落下し崖下へ激突した姿にゾッとしてしまう

「裏切り者め…!!!」

撃ったのはヘリの女ヴィラン
裏切った仲間を許さなかったんだろう、その表情には明らかに怒りを含んでいる

「くそっ!爆豪、雫!確保しろ!!」

「命令すんじゃねえ!!」

爆速ターボでヘリを追い詰めていく爆豪くん
ヘリをどこにも逃さないようにこの辺り一帯を囲むように水の壁を張って行手を阻む

「おとなしく捕まれや!」

爆豪くんが爆破で近づいた瞬間、女ヴィランが個性を消しヘリから飛び降りた
制御を失ったヘリのパイロットが脱出し、残されたヘリが崖に激突する
その様子に私たちは呆気にとられてしまった

目の前で人が死ぬのを見たのはこれが初めてだった
呆気なく散った命、それも自ら絶った…

「(ヒューマライズのために…そこまで…)」

この場の誰もが女ヴィランの行動を理解できないでいた

「ロディ、大丈夫!?」

「あ、ああ、なんとか…ケースは!?」

慌ててケースを探す緑谷くんと男の子
そんな2人に歩み寄る私の手にはアタッシュケース

「緑谷くん、これだよね?」

「ありがとう海色さん、でもどうやって?」

「派手なドンパチのおかげで列車からみつけられた」

緑谷くんの問いに答えた焦凍くん
周りにヴィランがいないことを確認してくれた唄ちゃんが歩み寄ってきた

「そいつが…電話で言ってた…」

「うん、僕と一緒に犯罪者にされた…ロディって言うんだ」

ロディくんは唄ちゃんを見て微笑んだ

「さっきはありがとう」

「そんな、お礼なんて」

その時、ロディくんの髪から「Piー!」という鳴き声と共に飛び出して来た小鳥に唄ちゃんと2人で顔が綻ぶ

「「かわいいー!!」」

すると小鳥は驚いたような表情をした後照れ臭そうに頭を掻いた
なんとも人間らしいその反応に益々興味が湧いてしまう

「んなことよりケースだ!ヒューマライズがらみなんだろ!?」

勢いよく隣に着地した爆豪くんに驚くロディくん
爆豪くんの発言に緑谷くんは「ヒューマライズがらみ?」と不思議そうな表情をしている

「ああ、だから俺たちはここに来た、有力な情報が手に入る可能性があると踏んで…」

ケースを持ち上げた焦凍くん
その様子を見ていた緑谷くんがハッとした表情になった

「どうした緑谷?」

「これって…」

ケースの底のゴムを外し、取り出したのは立体パズルのようなもの
それを見た私たち6人は一旦岩陰に隠れることにした
唄ちゃん曰く、先ほどの戦闘音で警官がこちらへ向かって来ているらしい

頭を捻りながらパズルを解こうとする緑谷くん

「どう?解けそう?」

「んー…何がどうなって…」

唸る緑谷くんを焦凍くんと2人で両サイドから見守る

「こうじゃないのか?」

「それだと元に戻って…」

「逆にこう?」

「今度はこっちが…」

一緒になって考えるけれどどうもうまくいかない
こういうパズル系は法則なんかがないのだから困ってしまう

「難しいな」

「こういうのやったことないからなぁ」

「んー、違うなあ…」

頭を抱える私たち3人を見ていた爆豪くんが我慢ができなくなったのかくわっ!と叫んだ

「貸せ!こんなの俺の爆破でブッ壊してやんよ!」

「あー!ダメだよかっちゃん!!」

中身まで破壊しかねない爆豪くんを慌てて緑谷くんが止める
すると立体パズルを見ていたロディくんがハッとした

「デク、ちょっと貸してくれないか」

立体パズルを受け取ったロディくんが手際良く仕掛けを解除していく
あまりにも手際がいいのと迷いがない動きに目を丸くする

「わかるの?」

「似たようなパズルをガキの頃にやったことがある…」

と、その時カチッと音がしてパズルが解かれた

「よし、これで…」

中から出て来たのは鍵のようなものとSDカード

「なんだろう…?」

「こっちは情報チップか…」

「麓に町があったはずだからそこで調べてみよう」

そろそろ警察が来そうなのか唄ちゃんの表情が険しいと気が付き提案し、一同が頷く
彼女の索敵を駆使しながら麓の町までできるだけ急いだ








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