ヒロアカaqua


▼ 145



臨時事務所のホテルのエレベーターホールへ到着した私たち
そこにはエンデヴァーがわなわなと震えていた

「あの…買い出し終わりました」

キッ!とこちらを見たエンデヴァーは私と唄ちゃんのみだと分かると表情を柔らかくする

「ああ、助かる」

「あの…何かありましたか?」

何やら顔色の悪いエンデヴァーに声をかければ頭を抱えたエンデヴァーが深いため息をついた

「…先ほどオセオン警察から連絡が入った…どうやらショートたちがヒーロー活動をしヴィランを捕らえたらしい」

それを聞いて唄ちゃんと2人してやっぱりかと呆れる
しばらくしてから帰ってきた爆豪くんと焦凍くん

ケロッとしている2人にエンデヴァーは歩み寄った

「馬鹿者!!今は重要任務中だぞ!それ以外の事件は地元のヒーローに任せておけばいい!!」

「困ってる人を救けるのがヒーローだろ」

「仕事に大小つけんのかよ、インターンでんなこと習ってねえんだよ」

「反省せんか!」

反省する気配のない2人に苦笑いして様子を見守る
私も目の前でヴィランがいたら多分動くと思うので許してあげてほしい

「それで、デクはどうしてる?」

「宝石強盗の仲間を追跡してる、だが全然電話に出ねえ」

「たるんどる!インターン中だからと連れてくるのでなかった…!!」

その時焦凍くんのスマホから音が鳴る、どうやら緑谷くんかららしい

「緑谷、犯人とケースは…」

けれど次の瞬間、「おまえ何をやった?」と告げた焦凍くんの表情が硬くなったので首を傾げる

「何か様子おかしくない…?」

「黙ってろ」

傍でヒソヒソと話している爆豪くんと唄ちゃん

「落ち着け、起きたことを順番に話せ」

「エンデヴァー!大変よ!デクが…」

クレアさんの声に会議室のモニターを見れば、そこには緊急ニュース番組
画面には緑谷くんの写真が大きく映し出されている

『情報提供を呼びかけています、繰り返しお伝えします
警察の発表によると死者12名を出した殺人事件の犯人は日本から来たヒーロー、デク
本名イズク・ミドリヤと断定、全国に指名手配しました
なお、容疑者には共犯者が1名いるとの情報もあり…』

そのニュースに呆気にとられていると焦凍くんが「…緑谷、本当に何やった?」と電話越しの緑谷くんに声をかける

「おまえ、大量殺人犯として指名手配されたぞ」

唄ちゃんの顔色がどんどん悪くなっていき、焦凍くんと通話を変わってほしそうに彼を見つめている
爆豪くんと私もこの状況に違和感しかない

「それについてはこっちで調べる、すぐにその場から離れろGPSで追跡される
スマホの電源を切ったらバッテリーを抜くのも忘れんな」

終了した通話
焦凍くん曰く、緑谷くんは宝石泥棒犯を追いかけている最中に警察に発砲されたらしい
そのため今は身を隠しているんだとか

「警察長官に話をしに行く」

エンデヴァーがそう言ってホテルを出ていく中、残された私たちは何もできることがないのでひとまず待機となる

「おそらくあなた達の同行も見張られているでしょうね」

「そんな…」

クレアさんの言葉に眉を下げる
何が何だかよくわからない状況で動きまで制限されるとなると不都合すぎる
それにこれじゃあ緑谷くんを助けに行けない

爆豪くんと唄ちゃんは外出したので事務所で焦凍くんと一緒に手がかりになりそうな情報を収集しているとクレアさんがやってきた

「ショートくん、知り合いの探偵から調査結果が来たわ」

「調査結果…?」

「ああ、気になることがあってな…どうでした?」

どうやらこの前のヒーロー活動の時に気になることがあったらしく、クレアさんに調査を依頼していたらしい

「キミが見たという個性攻撃を受けた車、それに乗っていた人物は…ヒューマライズの団員だそうよ」

「ヒューマライズ…そいつは今どこに?」

「意識不明の重体で…病院の集中治療室にいるわ、警察の護衛つきでね」

「話は聞けねえか…」

状況がよくわかっていないので黙って話に耳を傾ける
今の警察は信用できないので目につくようなことは避けたい

「それともう1つ、事故現場近くに盗まれていた宝石がブチまけられていたそうよ」

「…まさか」

ハッとした焦凍くん
その時彼のスマホにメールが届く

「緑谷からのメールです」

「えっ」

「なんて?」

クレアさんと一緒に覗き込めば、そこに書かれていたのは

『暗くなったら
冷蔵庫にある
イチゴを
どうぞ』

という文章

「あいつ俺たちにイチゴを?」

「違う、これ暗号だよ」

すぐに緑谷くんの意図に気がついて先頭の文字以外を手で隠す
浮かんできた文字は『くれいど』

「クレイドって隣国のクレイドのことよね?」

「緑谷はそこに向かってる、クレイドに行ってみます」

「わかったわ、エンデヴァーには報告しておく」

焦凍くんと共に出入り口へ向かえばちょうど戻ってきた爆豪くんと唄ちゃんと出くわしたので焦凍くんは2人の腕を掴かみ引きずって出ていく

「爆豪、舞羽行くぞ」

「何だいきなり!?」

「え、ちょ…?!」

驚いてた2人だけれど、すぐに何かを察したのか抵抗をやめる

「クソデクがらみだな?」

「ああ、あとで話す」

事務所の外に出れば、遠巻きにこちらを見ている警官がいる
それに気がつかないように歩き出せば後ろをつけて来た

「まず見張りを撒くぞ」

「命令すんじゃねえ」




ーーーーーーー
ーーー




「あ?ケースを取り違えただあ?」

山岳列車に乗り込んでいる私たち
電車に乗り込んでから焦凍くんから事情を聞いたけれど、緑谷くんは巻き込まれただけというのが濃厚のようだ

「じゃあ…指名手配は誤解ってことだよね?」

私たちの手にはヒーローコスチュームの入ったバッグ
見張りを撒くために途中で目立たない服に着替えたんだけれど、いつでも動けるように今は連結部分のドア付近に4人でかたまっている

「ああ、ヴィランが奪った宝石が入ったケース…そのケースを緑谷は途中で取り違えたらしい
今緑谷が持ってるケースの元の持ち主はヒューマライズの団員だ…」

緑谷くんの無実に唄ちゃんはほっとした様子だけれど事態は終息しそうな気配はない
それどころかヒューマライズ絡みとなると今の重要任務とも関わってくる

「警察がクソデクを追いかけ回してるのもそのせいか?」

「おそらくな、そのケースかなり重要なモノなんだろ
そうじゃなきゃここまで大規模に警察は動かねえ」

「警察の中にも団員がいる…?」

ハッとしてそう告げれば焦凍くんは頷いた

「ああ、どこにヒューマライズの目が光ってるかわからない…」

確かにそれならこの急すぎる状況を作り出すのも簡単だろう
厄介な思想団体の規模に冷や汗が伝う

「慎重に行動するぞ」

「命令すんな」

話がまとまったのでこれから先に起こることを想定し思案していると、「…この服やだ、地味」と唄ちゃんが口を尖らせ自分の格好を確認していた
彼女はおしゃれでいつも身なりには気を使っている
確かに今の格好は撒くためにも出来るだけ目立たない地味な服装なんだけれど、それが気に入らない様子だ

「十分目立っとるわ!何余裕ぶっこいとんだ!!!」

「おしゃれには一切妥協しないのが私のモットーだし」

「状況分かってんのかテメェ」

唄ちゃんの頭で揺れるリボンを鷲掴みにして怒鳴る爆豪くん
このままだと爆破しかねないので2人の仲裁に入ることにした

「まあまあ、唄ちゃんのこだわりもわかるし…一旦落ち着いて、ね?」

「泡女テメーもちゃんとこいつ止めろや!」

「そう言われましても」

私も着替えてたわけだし無理じゃない?と思っていると様子を見ていた焦凍くんが低い声で「おい、お前ら静かにしろ」と告げた
少々怒っている様子なので慌てて一斉に黙り込む

「(今は言い合いしてる場合じゃないもんね)」

爆豪くんは舌打ちをしていたけれど、唄ちゃんと私は顔を見合わせ苦笑いした








prev / next



- ナノ -