ヒロアカaqua


▼ 144



オセオン国の夜空を飛行する軍用輸送ヘリの中で黒いステルスコスチュームに身を包み備え付けのモニターへ目を向ける
この場にはエンデヴァー、バーニンさん、オセオンのヒーローのクレアさん、クレアさんのサイドキック、そしてインターン生の私たち5人

『先日の無差別テロの犯行声明を出したのは"ヒューマライズ"
人類救済を標榜する指導者、フレクト・ターンによって設立された思想団体である
テロに使用された装置は個性因子誘発物質イディオ・トリガーを強化したものだと推測される
以後この装置を"トリガー・ボム"と呼称する』

先日世界各地で発生したガスによるテロ
それによって人々は個性が暴走し、駆けつけたヒーローでさえも個性を制御できなかったという
ヒューマライズは世界25か所に施設を有している大規模団体であるため団員は世界中にいる
いつどこで事件が起こってもおかしくはない

この非常事態に世界規模の作戦が行われることとなった
このモニターに映っているのはアメリカのニューヨークにある統括司令部からの通信だ
同時に世界中で作戦に向かうチームに流されている

『我々ヒーローチームの任務は世界25か所にあるヒューマライズの施設を一斉捜索
団員たちを拘束したのち、一刻も早く保管されている"トリガー・ボム"を確実に回収することである
施設では団員たちの抵抗が予想される、またトリガー・ボムを使用する危険も高く各国への協力要請は自粛せざるをえない
可急かつ速やかにこの任務を実行してほしい…オールマイト』

『ヒーロー諸君、この作戦の成否は君たちの双肩にかかっている
テロの恐怖に怯える人々の笑顔を取り戻そう』

統括司令部にいるオールマイトからの鼓舞を受け士気が高まる

私たちインターン生5人はこの日用にステルスコスチュームを与えられていた
ここオセオンはヒューマライズの本部があるためその分慎重になる必要があるとのこと

コスチュームには顔を隠すようにフードが付いており、5人全員が装着する
私はコスチュームの都合上フード付きのポンチョだけれど

『各ヒーローチーム…スタートミッション!』

その言葉と共にヘリのハッチが開きエンデヴァーが飛び出した

「Aチーム、トリガー・ボムが爆破される前に確実に回収するぞ!」

エンデヴァー、バーニンさんに続き、クレアさんがサイドキックの背に乗って飛び出した後、すぐに唄ちゃんと爆豪くんが飛び出し、その後ろから私と焦凍くん、緑谷くんも飛び出した

急降下しながら眼下に見えるヒューマライズの建物を見る
前にヘリからの降下訓練はしたけれど、こんな上空から飛び降りるのは初めてなので作戦を聞いた時は衝撃だったけれど、いざ飛び出してみると怖いというよりは楽しい

「あれがヒューマライズのオセオン本部…」

「俺たちBチームの任務は施設の制圧とボスのフレクトってヤツの確保だ…油断するな」

緑谷くんの呟きに焦凍くんが応え、私は頷いた

「了解」

「誰にモノ言ってんだ、ああ!?」

Bチームの私たち5人
私の後に返事をした爆豪くんは爆破を繰り返し加速していく
続く唄ちゃんも羽を広げ急降下していった

順に降り立ち、ヒューマライズの団員相手に怪我させないよう向き合う

「と、止まれ!!」

「許可なく立ち入りは…」

「抵抗すれば容赦はせん!!」

エンデヴァーが一喝して建物内に踏み入った
私たちもその後に続く

Bチームも2手に分かれ進んでいく
私は爆豪くんと焦凍くんと一緒だ

「爆豪、雫、団員のほとんどは無個性だ、手荒い真似は…」

「わーっとるわ!スタングレネード!!」

爆豪くんが放った閃光で立ち止まった団員を水の輪っかで拘束し、彼らの足元を焦凍くんが凍らせた

「(爆豪くんと焦凍くんって息ぴったりだな)」

流石A組トップ2と考えつつ2人と駆け抜ける

けれどしばらくした頃、通信を聞いたプロヒーローの方曰くここオセオンを含め世界25か所全ての施設でトリガー・ボムは発見されなかったらしい
指導者であるフレクト・ターンも不在というまるでこちらの動きを読んでいたかのような相手の出方に困惑だけが広がった




ーーーーーーー
ーーー




翌朝



買い出しに出た焦凍くんと緑谷くん、爆豪くん
私と唄ちゃんも別行動でクレアさんに頼まれたものを購入していた

「これも買ったしこれもでしょ…あとはー…」

渡されたメモを見ながら紙袋の中身を確認していく
お父さんの会社のパーティで海外の方とも話すことがあったから英語は話せるし、聞き取れる
それに唄ちゃんも抵抗はないようなので買い物はスムーズに完了した

「うん、全部揃ってる」

「よーし、任務完了ー!」

2人で半分ずつ紙袋を持って帰路に着くと、唄ちゃんがバッ!と勢いよくこちらを見た

「雫ちゃん、これ買おう!ね!?」

指差しているのは美味しそうなパン菓子
オセオンで有名だってクレアさんが言ってたっけ

「もー…唄ちゃんてば」

自由奔放な唄ちゃんに少々呆れつつ、まあこう言う時用に多少のお小遣いは渡されているからいいかとそれを2つ購入した
近くにあったベンチに腰掛け2人でそれを食べながら思い出すのは昨晩のこと

「それにしても待機って…」

「びっくりだよね」

本当なら昨晩で任務完了
もう今日の夕方には飛行機に乗っているはずだったのに指令部から出たのは待機の指示
おそらく今頃向こうで作戦をいつ開始するか試行錯誤中なんだろう

急遽待機になったこともあり、食糧やらなんやらが必要になったことで私たちが買い出しに駆り出されたわけだ
ここへは制服かコスチュームしか持ってきてないのでいつものコスチュームを着て街中を歩けばとても賑わっていて活気に溢れた街だ

「そろそろ向こうも買い出し終わった頃じゃない?」

「そうだね、電話してみる」

スマホを取り出して焦凍くんに電話をかけるけれど聞こえてくるのはプルルルという呼び出し音のみ

「何かあったのかな?」

焦凍くんが電話に出ないなんて珍しい

「いやいや、まさか」

ここはオセオン
日本と違って勝手にヒーロー活動していいわけじゃないし、それに今の私たちはエンデヴァーとクレアさんから重要な買い出し任務を与えられている

「ヴィランでも出ない限りは飛び出したりしないでしょ」

「だ、だよね…まさかね…」

そう言った私達は互いにあははと笑い合う
けれど、傍を駆けていく人が「さっきのヒーローかな?」と告げたので顔が引きつった









prev / next



- ナノ -