ヒロアカaqua


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校舎へやってくる途中でトレーニング中の切島くん、瀬呂くん
結ちゃんを散歩させていた口田くんにあったけれど3人とも心当たりはない様子だった
少し歩いたところでは他のクラスの女子たちからチョコレートを渡されている常闇くん、障子くん、尾白くんの姿

「わあ!3人ともチョコもらってる!」

「モテモテじゃん!」

「とくに尾白くんがすごい!」

その様子を見守るけれどどうやら全て義理チョコらしい
コソコソ見守っていた私達を見た障子くんが「さっきから何で隠れているんだ?」と声をかけてきた

「いやあ、みんながチョコをもらってたから、ついつい!」

「これが義理チョコというものなんですね」

興味深そうな百ちゃん
尾白くんは照れ臭そうにしている

どうやら色々救けた恩でもらったらしい
3人と話し込んでいるとどこからともなく「チョーコォー…」と聞こえてきて女子が全員震え上がった

「峰田!?いったいどうし…わあああ!!!?」

尾白くんへ襲いかかった峰田くん
けれど義理チョコパッケージを見て興味を失ったようにケッと吐き捨てた
なるほど、本命チョコにしか反応しないらしい、何なんだ一体

「濃いチョコの匂いがする…」

フラフラと歩き出した峰田くんをそーっと追うとそこは校舎裏
見えたのは爆豪くんそして他科の女子

全員が慌てて唄ちゃんを見るけれど、時既に遅し唄ちゃんがばっちりとその光景を見てしまっていた

「あの…言わなきゃいけないことがあって…」

そう告げた女子の手には紙袋
爆豪くんが告白されている現場という興味と、唄ちゃんをどうしようという不安におろおろしている間に峰田くんが百ちゃんの創造したバンドで拘束されハンカチで口を塞がれた

「すみません峰田さん」

たしかに告白の邪魔になるのはよくない
けれど唄ちゃんの反応が怖過ぎて見れない

「あれ、みんなこんなところでどうしたの?」

「珍しい虫でも見つけたのか?」

声をかけてきたのは緑谷くんと飯田くん
緑谷くんを見た唄ちゃんが楽しそうに彼を最前列へ連れて行く

「(あれ、落ち込んでない…?)」

てっきり落ち込んでいるとばかり思っていたのできょとんとしていると、女子が口を開いた

「あの!開いてます!」

「ああ?」

「だから、ズボンのチャックが!開いてます!
それじゃ、私は彼氏と待ち合わせしているのでこれで」

立ち去った他科女子
舌打ちをしてチャックを閉める爆豪くんに全員が笑いを堪える

「いや、本当に告白かと思ったよ」

「意外かもしれないけど、かっちゃんはバレンタインデーに唄ちゃん以外からチョコをもらったことがないんだ」

「マジで?」

緑谷くんの暴露にぎょっとする一同
唄ちゃんもそれを知っていたからこそちょっと面白がってたんだろう

「小さい頃から女の子にも容赦なかったから、おばさんにも優しくしなって怒られてたんだけど
それで余計に女なんかめんどくせーって感じになっちゃって」

「確か私が出久と勝己にあげてた分以外は本命も義理ももらったことないらしいよ」

そう言って笑ってた唄ちゃんの頭がガシィッと爆豪くんに掴まれた

「クソデク!クソ鳥!よけいなことしゃべってんじゃねえ!!!」

爆破しようとした爆豪くんをひらりと躱したちゃんは緑谷くんを盾にする

「クソなことしか言わねえ口は必要ねえなぁ!?」

「わわっ!やめてよかっちゃん!」

「そうだよ、全部本当のことじゃん」

唄ちゃんの言葉にボンっ!!と爆破させた爆豪くん
完全にキレている様子だけれど本気なら今頃死闘になっているはずなので幼馴染らしくなってきた2人を微笑ましく見守る

「あ、そうだ!A組の王子様!」

思い出したように告げた三奈ちゃんにハッとした
尾白くん、常闇くん、障子くん、飯田くんに問うけれど4人とも身に覚えがないとのこと

喧嘩を止めた唄ちゃんが幼馴染2人に眼鏡女子のことを聞くけれど心当たりはないらしい

「んで、なんでその女を探しとんだ」

「え?なんでって」

「その女が礼を言いたきゃ自分で言いにくりゃいいだけだろが」

相変わらず鋭い爆豪くんに唄ちゃんと顔を見合わせる

「おおかたその女にチョコ渡してくれって押し付けられたんだろうが」

「えっ、なんでわかったの!」

誤魔化そうとしてたけれど反応してしまったお茶子ちゃん
これで確実にバレてしまったので観念して経緯を説明した

「A組に王子様なんかいたか?」

「隠れ王子…影の王子…闇の王子…」

「え、まさか常闇くんが」

「いや違う、連想したまで」

紛らわしいことをする常闇くんに呆れつつも飯田くんが協力を申し出た時、「何やってんだ?」と焦凍くんの声が聞こえた
手にはダンボール箱を抱えている

「焦凍くんどうしたのそれ」

「なんか知んねえけどチョコが送られてきた」

その言葉にぎょっとしてしまう
ダンボール箱には色とりどりの可愛らしいラッピングが施されたチョコレートばかり、本命だろう

「す、すごい!」

「これがイケメンの力…!」

隣で唄ちゃんも呆気にとられている

「でも何でいきなり知らねえ奴から送られてきたのかわからねえ」

首を傾げた焦凍くんに緑谷くんがインタビューが原因じゃないかと言った

「ああ!あれ結構話題になったもんね!」

「ああ!爆豪くんが全カットになっていたあれか!」

「クソ眼鏡!よけいなこと思いださせんじゃねえ!」

食ってかかる爆豪くんの近くにいた焦凍くんが「お、そうだ」と、思い出したようにポケットを探った
とりだしたのは小さなチョコレート菓子

「緑谷、飯田、これ」

「え、ありがとう」

「しかしなぜ?」

「八百万に聞いた、バレンタインに友達にチョコをやるんだろ?」

「「轟くん…!!」」

感動している緑谷くんと飯田くん
百ちゃんも感動したような表情になっており、この場で爆豪くん以外が微笑ましくその光景を見守っていた
緑谷くんと飯田くんが慌てて友チョコを買いに行ったのを見て焦凍くんに話しかけた

「ね、眼鏡をかけた女の先輩に心当たりない?」

それを聞いた焦凍くんが少し考え込んでから「いや、ない」と告げた
最有力候補の焦凍くんが違うとなって落胆する女子一同

「するとまだ訊いてないのは砂糖くんだけか」

「砂糖くんが王子様だったの!?」

「とりあえず訊いてみましょう!」

そう言って寮に戻ろうとした時、「チョーコォー…!」と呻き声が聞こえた
いつの間にか拘束も解いている

「轟…おめーにはなんの恨みもねえ…だが本命チョコをもらった奴は生かしちゃおけねえ…!!!!」

「どうした峰田」

「うるせえー!!!!」

四方八方にもぎもぎを繰り出した峰田くん
慌てて焦凍くんの前に出て水の膜を張ってそれを防ぐ

「峰田くんおちついて!」

「俺は…俺は…本命チョコがほしいんだよぉ!!!」

血涙が止まらない峰田くんにどうしたものかと思案していると、爆豪くんが「眼鏡女子ってコイツじゃねーのか」と声をかけてきたのでそちらを見れば、そこにいたのはまさに眼鏡女子先輩

「す、すみません!途中でA組の王子様を見かけて…つい…」

「A組の王子様って…」

「じゃあこの中に!?」

恥ずかしそうに頷く眼鏡女子先輩に私は顔を押さえドキドキと様子を見守る
すると三奈ちゃんがチョコレートを眼鏡女子先輩に返す

「自分で渡してください…!がんばって…!!」

女子みんながうんうんと頷けばそっと歩み寄り、峰田くんの前で止まった

「へ…オイラ…?」

「あの、1週間前下駄箱で救けてもらったんだけど…覚えてないかな?
あのとき転んで眼鏡落としちゃってて…そうしたらキミが、大丈夫ですかお嬢さん…って手をとってくれて…」

「あの時の!」

ハッとした峰田くんに眼鏡女子先輩が頬を染めながら微笑む

「私、あんなベタなこと言われたの初めてで…それからずっと気になっちゃって…だから、もしよかったら…私の気持ち、受け取ってください!」

真っ赤な顔で差し出したチョコレート
少女漫画で見た展開に「わあぁっ」と声を出してきらきらした眼差しを向けてしまう

けれど峰田くんは微動だにしない
喜びのあまり気絶しているようだ

「峰田!起きなよ!ほら、念願の本命チョコだよ!?」

三奈ちゃんに揺さぶられハッと目を覚ました峰田くんは普通の透明な涙を流した

「ほ、本当にオイラにチョコを…?オイラのことがす、すすすす好きということで…!?」

「す、好きというか気になってて…だからまず友達になれたら…」

「とりあえずいますぐオイラの部屋に行きましょう!なんならそこの林の陰でも!!」

「は?」

突然のことに驚く眼鏡女子先輩
峰田くんは鼻息荒く血走る目でだらしなく口を開けた

その瞬間唄ちゃんの耳を塞いだ爆豪くん
塞いで正解だと思うほどのとんでもないド下ネタを言い放った峰田くんに眼鏡女子先輩の表情が軽蔑するようなものに変わった

「そんな人だと思わなかった!!もう二度と声かけてこないで!!」

「ぶはぁっ!!」

ビンタされた峰田くん
眼鏡女子先輩はチョコレートを持って走り去った

慌てて追おうとする峰田くんを女子一同が止める

「峰田くん、告白直後のド下ネタはあかん」

「峰田サイテー」

「完璧フラれたわね」

呆れている女子の言葉に峰田くんはきょとんとしている

「へ?いや、でもオイラを好きだって…」

「いや、今完璧に嫌われたよ」

「女の子は一旦嫌いになるととことんまで嫌いになるからねー」

「峰田さん…一世一代のチャンスを逃しましたわね…」

峰田くんから救けを求めるような目を向けられたので首を横に振る
私にもできないことはある

「ウソ…だろ…」

ずーんと落ち込んだ峰田くん
そんな彼に砂糖くんが本命チョコっぽいものを作って渡していた
もらえないことを予想してせめて形だけでもって思ったらしい

「オイラは…オイラは女子からもらいたかったんだよー!!!」

わんわん泣き叫ぶ峰田くんが可哀想でA組女子は自分たちの作ったチョコレートをあげるよと慰める
こうしてA組の王子様騒動は幕を閉じた










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