ヒロアカaqua


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爆豪くんとエリちゃんの仲良くなる作戦に協力してほしいと持ちかけられた桃太郎チームのみんなは頷く

「もちろん!僕も大丈夫かなって心配だったんだ」

「エリちゃんのためにも何とかしてあげたいよね」

「任せとけ!ってどうすんの?あの2人が仲良くなるビジョンが全然見えねー」

「問題はそこだよね」

うーんと思案する桃太郎チーム
すると百ちゃんが口を開いた

「あの、泣いた赤鬼を参考にするのはいかがでしょう?」

「「泣いた赤鬼?」」

聞いたことのない話に唄ちゃんと私が同時に首を傾げる

「知ってる!人間と仲良くなりたい赤鬼がいて、それを聞いた友達の青鬼がわざと人間を襲って赤鬼に人間を助けさせるんだよ
で、赤鬼と人間が仲良くなるんだけど、青鬼は赤鬼がずっと人間と仲良くできるようにみを引いてどっか行っちゃうんだよなー」

「あれ切ねえよな、赤鬼の本当の友達はお前だよ青鬼ぃーって思ったもん」

峰田くんと上鳴くんの意見に百ちゃんは頷く

「ええ、みなさんそれぞれ感想はあるでしょうが…鬼と人間が仲良くなるにはやはりあえて悪役が必要…つまり」

「私たちが青鬼になって勝己が赤鬼ってことだね」

「ええ、もしくは節分の鬼という話とか」

それも聞いたことがないので百ちゃんは続けた

「節分の日に孤独な老人が他の家から聞こえてくる
鬼は外、福は内という声を聞いて反対に鬼は内、福は外と叫ぶんです
それを聞いた鬼が嬉しがって老人の家に入ってきてしまうんですが、結局は楽しく宴会になってしまい…
老人は生きる気力を取り戻すというお話です、こちらを参考にするのならば悪役も登場せず平和に仲良くなれる作戦になるのですが…」

それを聞いた唄ちゃんが首を傾げる

「でもそれってエリちゃんが勝己に同情するように仕向けるってことでしょう?勝己が協力するかなー…」

その言葉に全員が悩ましい顔になった
結局泣いた赤鬼作戦にすることになり小屋を目指しながら相談する

梅雨ちゃんが爆豪くんへこっそり泣いた赤鬼作戦でいこうというメモを渡したはずなのであとは私たちが爆豪くんに襲いかかるだけだ
百ちゃんに作ってもらったマントをかぶって一斉に小屋に入る

「うおおおおーー!その子をよこせーー!!」

「俺たちゃヴィランだぞー!」

「悪い敵だぞー!」

砂糖くん、上鳴くん、峰田くんの大根役者ぶりに呆れていると、爆豪くんもドン引きしていた
けれど容赦無く襲い掛かられた瞬間、彼のスイッチが入ってしまう

「っざけんなよオラァ!!」

棍棒を手にして生き生きとしている爆豪くんは3人を瞬時に倒した

「(ちょ、泣いた赤鬼作戦は?!)」

ぎょっとしている私たち
けれど生憎表情はマントで見えない

「かかってこねえならこっちから行くぞ!!コラァ!!」

今度はこっちがドン引きだ
こんな狭い小屋で暴れる爆豪くんに緑谷くんが慌てて声をかけた

「ちょ、ちょっと待って、かっちゃん!!」

「ちょこまか動くなやデク!!」

そしてついに緑谷くんのフードが取れてしまった
あまりにも恐ろしい爆豪くんの形相に私も唄ちゃんも参戦する気になれず様子を見守る

「かっちゃん!特別課題の…!!」

「協力ごくろーさん、こっちは一石二鳥狙ってんだよ!オラァ!!」

棍棒を振り上げた爆豪くん
けれどその瞬間、エリちゃんが小さなものを爆豪くんに投げた

「おにわそとっ、おにわうち!」

「あ?」

『爆豪、アウト
これで鬼チームは全滅だな、よって桃太郎チームの勝利だ』

それを聞いた爆豪くんがハッとして叫んだ

「どういうこったよ!!?」

『初めに言っただろ、エリちゃんを本物の人質として扱うようにって
人質はいつだって脱出の機会を狙っているし、武器を隠し持っているかもしれない
よってエリちゃんには最初から反撃用の豆を渡してあったんだ』

それを聞いて私と唄ちゃんもフードを取ればエリちゃんが「シャボンさん!」と嬉しそうに駆けてきた

「エリちゃん偉いね、頑張ったね」

「いつぶつけたらいいのかなって、ドキドキしちゃった」

それを聞いた緑谷くんがにっこりと微笑む

「ありがとう、エリちゃんに救けられた」

パアッと笑顔になったエリちゃんの頭を唄ちゃんが撫でている
するとエリちゃんへ爆豪くんが近づいた

「お前、なかなかやるじゃねえか」

「え…」

「ただ大人しく捕まってる人質よりよっぽどマシだわ」

そう言った爆豪くんにエリちゃんは目を丸くする

「エリちゃん!かっちゃんが褒めるなんて滅多にないことだよ!」

「そう…なの?」

「うん!エリちゃんががんばったからだね!すごいよ!」

チラッと爆豪くんを見たエリちゃん

「褒めてねえ、ただ思ったことを言ったまでだ」

ぶっきらぼうにそう言った爆豪くんにエリちゃんは少し表情を和らげた

その後エリちゃんを抱え山を降りて麓へ向かえば相澤先生とアウトになった面々が待っていた
エリちゃんは13号に連れられ教員寮へ戻っていく

「結果は桃太郎チームの勝ちだが全体的に作戦の粗さ、無駄が目立つな
時間がない中でいかに素早く合理的に作戦を立てるかも重要だぞ、わかったな」

総評を聞いて一同が神妙に頷く

「それと、爆豪だけの特別課題だが…エリちゃんによる爆豪の印象は授業前よりよくなったそうだ」

「あ?」

ぽかんとしている爆豪くん
思い当たる節がないんだろう

「最後に褒めてくれたのと、怖かったけれど一生懸命鬼役をやっていたから、だそうだ」

それを聞いた上鳴くんと唄ちゃんが吹き出した

「一生懸命鬼役って、素でやってたんじゃねえの!?」

「あははは!!子供にまで気を遣われてる!!」

「うるせえ!!!」

怒鳴った爆豪くんだけれど2人は全く気にしていない

「ま、特別課題は及第点だ」

「よかったな爆豪!どうなることかと思ったぜ!」

「うんうん、俺も委員長として嬉しいぞ!」

「泣いた赤鬼作戦、私も混ざりたかったぁー!」

爆豪くんへ集まっていく一同
顔をしかめた本人は盛大に叫んだ

「うっとうしいんだよ、てめーら!!!!」

それすら関係なしにわいわい続けるみんなはこの1年で爆豪くんの怒鳴り声なんて何でもなくなったんだろう
私もその内の1人なので参戦した







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