ヒロアカaqua


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車を走らせながら、車中でエンデヴァーは腕を組み難しい顔をしていた

「貴様らには早く力をつけてもらう
今後は週末に加え…コマをズラせるなら平日最低2日は働いてもらう」

「前回雫たちもそんな感じだったな」

「うん、うまくズラせるか後で確認してみよう」

そう告げた時、爆豪くんが窓を開ける
隣に座る緑谷くんと距離を取るための行動らしい

「No.1ならもっとデケェ車用意してくれよ!!!」

「BMに文句言う高校生かーーー!!!
エンデヴァーあんたいつからこんなジャリンコ乗せるようになったんだい!!」

「頂点に立たされてからだ」

「ケェーーーー!!!立場が人を変えるってェやつかい!!!!」

アグレッシブな運転手さんの癖の強さに呆気にとられていると、前方に人影が見えた

「良い家に住んでるな!エンデヴァー!!!!」

それはヴィラン、白線を操るようで道路に存在する白線を使って誰かを掴んでいる
車のライトが照らしたそこにはヴィランに捕らえられている夏雄さんがいた

「夏兄!!!」

「頭ァ!引っ込めろジャリンコ!!!!」

ヴィランを避けるためドリフトを決めた運転手さん
直後、エンデヴァーが飛び出した

「彼を放せ!!!!」

車はヴィランの個性で白線でぐるぐる巻きにされてしまう

「俺を憶えているかエンデヴァー!」

「7年前…暴行犯で取り押さえた!ヴィラン名を自称していた、名は」

「そう!そうだ!すごい!憶えているのか嬉しい!そうだ俺だよ"エンディング"!!」

嬉しそうに笑うヴィラン
エンデヴァーがヴィランへ向かっていく

「すまないエンデヴァー、でもわかってくれ
俺がひっくり返っても手に入れられないものをあんたは沢山持っていた、憧れだったんだ!
俺は何も守るものなんてない!この男を殺すから!頼むよエンデヴァー!!今度は間違えないでくれ!

俺を殺してくれ」

ヴィランの操る白線が夏雄さんの額に押し当てられた

「ヒーローは余程のことでも殺しは選択しねェ!でもよ!あんた脳無を殺したろ!?
俺もあの人形と同じさ!生きてんのか死んでんのか曖昧な人生!だから安心して!
その眩い炎で俺を…!!!」

直後、車から飛び出した私たち5人
爆豪くんが窓を開けていたのが吉と出た

「忘れ物だぞ!!!」

叫んだ運転手さんがレバーを引けばトランクからコスチュームの入ったアタッシュケースが噴出された
それを受け取った緑谷くんが全員に投げる
受け取るや否や必要なものを装着した

緑谷くんと爆豪くんと唄ちゃんは腕の装備、焦凍くんは体温調節用のヒーターを背負う
私は水蒸気爆発用のボールが入ったバッグ付きのベルトを装着した

「夏雄兄さん!!」

「インターン生…俺の死を…仕切り直すぞエンデヴァー!!!」

体勢を崩したヴィラン
エンデヴァーが突っ込むかに思えた、けれどその足は動かない

そんなNo.1を超え5人一斉に飛びかかる

「俺の希望の炎よ!!!息子1人の命じゃアまだヒーローやれちまうみたいだな!!」

焦凍くんへ向かっていく白線

「夏兄を放せ!!!」

焦凍くんが放った炎はまさに溜めた点の放出

「早く俺を殺さねえから!!!死人が増えちゃうんだ…!!」

道路の白線が車を跳ね飛ばす
そして夏雄さんが向かってくるタクシーの前へと移動させられた

それを助けるために動いたのは爆豪くん
凝縮して放った爆破はとんでもないスピードだった

「増えねンだよ!!」

走行中の車を停めるため、今この場で走行中の車全てをシャボン玉で覆い浮かせた
勢いを殺してからそっと地面に下ろす

最初にヴィランの個性で浮いた車を救うため緑谷くんの黒鞭が放たれる

「おまえの望みは何1つ叶わない!!!」

唄ちゃんの羽が通行人や車をこちらへ通さないようにバリケードを張っているのでこれ以上被害は増えないだろう

直後、焦凍くんの赫灼熱拳がヴィランに炸裂した

エンデヴァーを見れば、爆豪くんと夏雄さんを抱きしめている

「怪我は!?」

「ねェよ放せ…!」

「熱い…」

けれど離すつもりはないようで、爆豪くんが無理やり脱出した

「白線野郎は!?」

「確保完了」

「クソデク、泡女、モブはあ!?」

「知らない!車に乗ってたみなさんなら大丈夫!」

「こっちも同じくー!」

唄ちゃんがバリケードを展開したおかげで二次被害も避けられた
まさに救助、避難、撃退が体現された現場

「やった、完全勝利だ!」

唄ちゃんと緑谷くんが嬉しそうに言ったけれど爆豪くんが「うるせー!!!」と叫ぶ

「何だっけなァNo.1!!「この冬」!?「1回でも」!?「俺より速く」!?ヴィランを退治してみせろ!?」

高笑いする爆豪くん
けれどエンデヴァーは夏雄さんを抱きしめたまま小さな声で「見事だった」と告げる

「俺のミスを最速でカバーしてくれた…!」

背中しか見えない
けれどそれはこのインターン中に見たNo.1としての姿じゃなくて、1人の父親としての背中のように見える

「離…っ!」

距離を取った夏雄さん

「夏雄…悪かった…!一瞬考えてしまった
俺が助けたらこの先お前は俺に何も言えなくなってしまうのではないかと…!」

「え?」

「夏雄、信じなくてもいい
俺はおまえたちを疎んでいたわけじゃない…だが責任をなすりつけ逃げた
燈矢も…俺が殺したも同然だ!」

「疎んでいたわけじゃない…?だったらなに…?
俺はずっと燈矢兄から聞かされてきた…俺が許す時なんて来ないよ、俺は焦凍みたいに優しくないから」

涙を流す夏雄さん
お兄さんのことが好きだったんだろう

「それでも…それでも顔を出してくれるのは冬美と冷のためだろう?
あの子は家族に強い憧れを持ってる…俺が壊したからだ
戻れる…やり直せると浮き足立つ姉さんの気持ちを酌もうと頑張っているんだろう…!?
お前も優しいんだ…だから、俺を許さなくて良い…許してほしいんじゃない、償いたいんだ」

「体の良いこと言うなよ…!姉ちゃんすごく嬉しそうでさぁ…!
でもっ…!あんたの顔を見ると…思い出しちまう…何でこっちが能動的に変わらなきゃいけねんだよ!償うってあんたに何ができるんだよ!!!」

「考えてることがある」

エンデヴァーは冷静だった
けれどそんな様子を見ていたヴィランが騒ぎ始める

「あああああああ!!!やめろォオオオ!!!エンデヴァアアア!!!
何だその姿はぁあああああ!やめてくれぇ!猛々しく傲慢な火!眩い光!俺の希望がぁあ!!!
やめろぉ!!消えちまう!違う!やめろぉおおおおお!!!!」

そう叫ぶヴィランに私は先日の硝子を操るヴィランを思い出した
そうこうしている内に警察が到着しヴィランは連行された

夏雄さんは自分を助けてくれた爆豪くんの方を見た

「ありがとう、えっと…ヒーロー名…」

「ああ?」

「バクゴーだよね」

「…違ぇ」

その言葉に緑谷くんがぱあっと顔を輝かせる

「え!?決めたの!?教えて!!」

「言わねーよ!てめーにはぜってー教えねえくたばれ!!」

「俺はいいか?」

「私は?」

「だめだてめーらもくたばれ!先に教える奴いんだよ!!」

くわっと叫んだ爆豪くんにピンときたのか唄ちゃんがにっこり微笑む
ちょっと照れ臭そうにしていて可愛らしい

「私?」

「違ぇわ自意識過剰か!!!」

唄ちゃんでもないとなると本当に誰なんだろう
そう思ってると、規制線の向こうから「ショートくんじゃない?」という声が聞こえた
インタビュー効果を目の当たりにしておおーっと感動してしまった





その後私たちは学校に送ってもらい、寮へと帰宅した

その後のことは後日焦凍くんから聞いた話だけれど
エンデヴァーは冬美さんと夏雄さんの交通の便がいい場所に新しい家を建てるそうだ
そこでお母さんを…冷さんを迎えてほしいと…エンデヴァー以外の4人で暮らしてほしいとそう言ったらしい









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