ヒロアカaqua


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ホークスと別れてやってきたのはエンデヴァー事務所
職場体験ぶりなので懐かしく感じる

「ようこそエンデヴァー事務所へ!」

「俺ら炎のサイドキッカーズ!!」

バーニンさんを筆頭に炎系個性の面々が出迎えてくれたのでぺこりと会釈しておく

「爆豪くんと焦凍くんは初めてのインターンってことでいいね?
今日から早速我々と同じように働いてもらうわけだけど!見ての通りここ大手!サイドキックは30人以上!!
つまァりあんたらの活躍する場は!なァアい!!!!」

「面白ェ、プロのお株を奪えってことか」

「そゆこと!!ショートくんも!息子さんだからって忖度はしないから!!せいぜいくらいついてきな!!」

職場体験の時はお客様だったけれど、今回はプロヒーローとして活動する
そこに忖度も接待も必要ない

ギルティルージュのところでインターンを受けてプロの現場を体感した
想像よりもずっと危険が伴うことも知った

私の表情を見たバーニンさんは不敵に笑う

「シャボンちゃん顔つき変わったね、もまれてきた?」

「はい、それなりに」

ニッと笑えば、他のサイドキックの皆さんも面白そうに口角を上げた

エンデヴァー事務所は常に電話が鳴っている
それに人の出入りも激しい

「基本的にはパトロールと待機で回してます!
緊急要請や警護依頼、イベントオファーなど1日100件以上の依頼を我々は捌いてる!」

「そんじゃあ早く仕事に取り掛かりましょうや、あのヘラ鳥に手柄ブン奪られてイラついてんだ」

「ヘラ鳥ってホークス!?」

目つきの悪い爆豪くんに唄ちゃんの方を見る

「唄ちゃんがかっこいいなんて言うからだよ」

「えー、だってカッコよかったでしょ?」

全く反省していない唄ちゃんに苦笑いをした

「威勢は認める、エンデヴァーの指示を待ってな!」

「100件以上捌くんだろ、何してンだよ」

「かっちゃんもうやめて!ヤバイ!」

「ハッハッハッハ!いい加減にしろよお前!」

相手が大人だからなんとかなっているけれど、普通に考えれば摘み出されてもおかしくない

「あのね、爆豪くんはもうちょっと礼儀を学んだ方がいいと思うな」

「るせェな!一通りのマナーくらい知っとるわ!」

「知ってるとできるは違うんだよ」

「上等だ泡女テメェ…ぶちのめしてやろうか?!」

前回来た時よりもいい子ちゃんでない私の姿に驚いたのか、サイドキックのみなさんが顔を見合わせた
あれからもう7ヶ月半だもん、そりゃあ色々成長するだろう

「まーしかし、ショートくんとシャボンちゃんだけ所望してたわけだし、多分3人は私たちと行動って感じね!」

それを聞いた爆豪くんの表情が変わる

「No.1の仕事を直接見れるっつーから来たんだが!」

「見れるよ落ち着いてかっちゃん!」

「でも思ってたのと違うよな、俺から言ってみる」

と、その時エンデヴァーの部屋の扉が開く
出てきた彼の表情はどこか険しい

「ショート、シャボン、デク、バクゴー、フリューゲル…5人は俺が見る」

そう告げた彼に連れてこられたのは職場体験で使わせてもらったトレーニングルーム
コスチュームを身につけた私たち5人の他にもサイドキックの皆さんがこの部屋にいた

「俺がお前たちを育ててやる、だがその前に貴様ら3人のことを教えろ、知らん
今貴様ら抱えてる課題、できるようになりたいことを言え」

「力をコントロールして最大のパフォーマンスで動けるようにしたいです」

すぐに答えたのは緑谷くん
この前の暴走も制御できたら強そうだ

「自壊するほどの超パワー…だったな」

「はい、壊れないように制御する方法を見つけました
でも…えー…ここに来てその…なんていうか…副次的な…何かこう、違う形で発現するようになって…」

「見せろ」

緑谷くんが集中し、コスチュームの手の甲の部分からピョロっと飛び出した黒い個性

「集中した上で許容出力ギリギリ…これが今扱える範囲です、出力がブレると溢れ出て暴走してしまいます」

「最大限のパフォーマンスとは?これをどうしたい?」

「本来はムチのようにしなる力なんです、この力をリスクじゃなく武器にしたい
今考えているのは新技エアフォースの要領を取り入れることはできないか…あ、そのエアフォースと言うのは風圧での遠距離攻撃なんですが、これは今の体の許容限界を超えた出力を必要とする技なんです
現状僕が負担なしに扱える出力を10から15%と仮定すると、エアフォースに必要な力は20%、少しオーバーするんです
この状態では怪我こそしないものの、軋むような痛みが出るので動きに支障が出ます
なので瞬間的に引き上げすぐに戻すという調整が出来るよう練習しました、この方法を今の黒鞭に転用できれば理屈上では実戦に使えると思ってます
ただ元々力の調整をしながら動いているのでそこにもう1つ要素が増えるとどうにも今度は頭の許容量を超えてしまうんです
どうにかしてそれらを並行処理しながら動けるようにトレーニングはしているんですがなかなかうまく行かなくて…」

ぺらぺらと語り始めた緑谷くんに遠い目をする
絶対こうなると思ってたけど、今日は一段と長いな

「長くて何言ってんのかわかんない!!」とバーニンさんが叫ぶ

「自分の分析か」

「出久らしいね」

「ああああ!ウゼー!!」

焦凍くん、唄ちゃん、爆豪くんが反応を示すけれど、エンデヴァーは静かに口を開いた

「つまり…活動中、常に綱渡りの調整ができるようになりたいと」

「はい!」

「わかったんかい!No.1は伊達じゃない!」

すごいなと感心しているとエンデヴァーは考えこむように黙ってから緑谷くんを見る

「難儀な個性を抱えたな、君もこちら側の人間だったか…」

その表情は決して緑谷くんを敵視しているようなものじゃない

「(やっぱりちょっとマイルドになってる)」

何があったんだろうか、気になるけれど聞くと長そうで迷ってしまう

「次、貴様は?」

「逆に何が出来ねーのか俺は知りに来た」

「ナマ言ってらー!!」

爆豪くんの回答にゲラゲラ笑うバーニンさん

「うるせーな!さっきからてめー何でいンだよ!!」

「私今待機」

「本心だクソが
"爆破"はやりてェと思ったこと何でもできる!1つしか持ってなくても1番強くなれる
それにもうただ強ェだけじゃ強ェ奴にはなれねーってことも知った
No.1を超えるために足りねーもん見つけに来た」

静かに、けれど闘志を秘めた口調の爆豪くんに少し驚く
昔だったら出来ないことなんかないって言ってただろうに

「いいだろう、次は貴様だ」

エンデヴァーが唄ちゃんの前に立つ
彼女はじっとエンデヴァーを見上げる

「迷いを消しに来ました」

「何だと?」

エンデヴァーが不思議そうな表情になった

「近接も遠距離も回復もできる、正直この場の5人の中で1番汎用性は高いと思ってます
機動力だってある、戦闘力も高い…だからこそ自分がどうあればいいのかわからない時があります
今の私が何を為すべきなのか…No.1から盗み取りに来ました」

淡々と告げた唄ちゃんを見ていたエンデヴァーはため息をついた

「ギルティールージュから貴様のことは聞いている…俺はあの子娘のように生温くはないぞ」

「上等です、私も半端な気持ちで来たわけじゃないので」

そう言った唄ちゃんの目は挑戦的で、エンデヴァーを前に少しも怯んでいる様子はない

「(こういうときの唄ちゃんってほんとかっこいいなあ)」








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