ヒロアカaqua


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1月初旬


やってきたのは静岡市内の市街地

「ようこそ、エンデヴァーの下へ…なんて気分ではないな」

目の前にはエンデヴァーこと轟炎司さん
ものすごい表情でこちらを見ている

焦凍くんと私の後ろには緑谷くん、爆豪くん、唄ちゃんの3人

「焦凍と雫の頼みだから渋々許可したが!!焦凍と雫だけできて欲しかった!!」

隠す気のない叫びにどうしたものかと思い、焦凍くんと目配せすれば彼はため息をついて眉を寄せた

「許可したなら文句言うなよ」

「しょっ!焦凍!!」

「…補講の時から思ってたがきちィな」

エンデヴァーの親バカな様子を見て爆豪くんは顔色1つ変えずにそう言い放った

「焦凍!本当にこの子と仲良しなのか!!?」

「まァ、トップの現場見れンなら何でもいいけどよ」

「友人は選べと言ったハズだ!!」

どうしようと遠い目をしていると、緑谷くんと唄ちゃんが前に出た

「許可していただきありがとうございます」

「学ばせてもらいます!」

そんな2人の言葉を聞いたエンデヴァーは緑谷くんを見て何かを思い出すような表情になった

「焦凍は俺じゃない…だったな」

「え?」

前を歩くエンデヴァーの背中を眺めていたその時、急にエンデヴァーが駆け出した
既に炎を纏っている姿に事件だと察する

「申し訳ないが焦凍と雫以外にかまうつもりはない、学びたいなら後ろで見ていろ!!」

けれどエンデヴァーを追うように私たち5人も飛び出していた
誰1人も遅れなかった反応

「指示お願いします!」

「後ろで!!見ていろ!!」

飛び上がった緑谷くん、爆豪くん、唄ちゃん
焦凍くんは氷結で加速していく

私も断続的に水のジェット噴射を使用し飛んでいた

「後で見ていろって…」

「ついて行かなきゃ見れない!!」

ずっと前を駆けるエンデヴァーは衝撃音が響く前に走り出していた
迅速なんてものじゃない

直後、エンデヴァーのスピードが更に上がる
私たちがヴィランの姿を捉えた時、エンデヴァーの赫灼熱拳が炸裂した

「硝子操作かご老人、素晴らしい練度だが…理解し難いな、俺の管轄でやることじゃない」

ヴィランは分が悪いと悟ったのかすぐに路地裏へ逃げ込む
それを追いかけながらエンデヴァーは傍にいたヒーローへ避難誘導の指示をした

その様子を見ていた私たち5人は路地の出口へ先回りし、待ち伏せしていたヴィラン達を見つけた

「今じゃやれェ!!!!」

「「「「「イエスマスター!!!」」」」」

路地から飛び出してきたエンデヴァーを狙い打ちにする作戦だったんだろう
でも残念、5人はそれぞれ私たちが押さえつける

…はずだった

「あれ!?ああ!インターンか!!!」

一瞬の風と共に目の前からいなくなったヴィラン
5人まとめて羽に飛ばされているようで、その羽の持ち主は私たちを見て申し訳なさそうな顔をする

「ごめん、俺の方がちょっと速かった!」

「ホークス!?」

ぎょっとしている私と焦凍くんの目の前に降り立ったホークスは主犯のヴィランを押さえつけるエンデヴァーに告げた

「エンデヴァーさんがピンチかと思って」

「この俺がピンチに見えたか」

「見えたよねぇ、焦凍くん」

「え…あ…はぁ…」

「来る時は連絡を寄越せ」

「いやマジ、フラッと寄っただけなんで」

あっという間に解決してしまった事件
すぐに警察も集まってきて拘束されたヴィランが連れて行かれる

「放せ!放さんか、手遅れになるぞ!!
其奴こそが元凶じゃ!!奴の放つ光が!!闇を!!終焉を招くのじゃーーーー!!!」

そう叫んだヴィランに焦凍くんと私は何故か釘付けになってしまった
意味なんてない、けれどなんだか胸がざわついた

「あの、この前はありがとうございました!」

「おお、フリューゲル
もう怪我治ったの?若いっていいねー」

ホークスに話しかけている唄ちゃん
どうやらこの前の那歩島の時に彼に助けられたらしい
そういえば前にホークスが唄ちゃんに会いたがっていたと常闇くんが言ってたっけ

「緑谷と言います!」

「指破壊する子だ
ツクヨミから聞いてる、いやー俺も一緒に仕事したかったんだけどね」

「常闇くんは…?ホークス事務所続行では?」

「地元でサイドキックと仕事してもらってる、俺が立て込んじゃってて…悪いなァって…思ってるよ」

ホークスが視線を感じ話しながら目を向けた先には彼を睨みつける爆豪くんの姿

「さっきのぁ俺の方が速かった」

「それはどーかな!」

No.2相手に喧嘩を売る爆豪くんに呆れているとエンデヴァーがこちらへ戻ってきた

「で!?何用だホークス!」

「用ってほどでもないんですけど…エンデヴァーさんこの本読みました?」

ホークスが取り出したのは異能解放戦線というタイトルの本
唄ちゃんと顔を見合わせて首を傾げる

「いやね!知ってます?最近エラい勢いで伸びてるんスよ、泥花市の市民抗戦で更に注目されてて!
昔の手記ですが今を予見してるんです"限られた者にのみ自由を与えればそのしわ寄せは与えられなかった者に行く"とかね
時間なければ俺マーカーひいといたんでそこだけでも!デストロが目指したのは究極あれですよ、自己責任で完結する社会!時代に合ってる!」

「何を言ってる…」

「そうなればエンデヴァーさん、俺たちも暇になるでしょ!」

私たちからは表情は見えないけれど口調は軽い
そんなに面白い本なのかな?

「読んどいて下さいね」

念押しと言うようにエンデヴァーへその本を渡したホークス

「No.2が推す本…!僕も読んでみよう、あの速さの秘訣が隠されてるかも…」

ブツブツと独り言を言っていた緑谷くんの声が届いたのか、ホークスはにこっと笑ってこちらを振り返った

「そんな君のために持ってきてました」

「用意がすごい!!」

いったいどこから出したのか知らないけれどササッと私たちへ手渡したホークスは終始笑顔だ

「そうそう、時代はNo.2ですよ!速さっつーなら時代の先を読む力がつくと思うぜ!」

「この本が大好きなんですね…こんなに持ってるなんて」

「布教用だと思うよ」

真顔で天然発言をする焦凍くんにすかさずツッコミを入れれば、ホークスは正解!というように笑った

「全国の知り合いやヒーローたちに勧めてんスよ、これからは少なくとも解放思想が下地になってくと思うんで
マーカー部分だけでも目通した方がいいですよ、"2番目"のオススメなんですから」

バサッと羽を広げたホークスは空に舞う

「6人とも、インターン頑張って下さいね」

飛び立ったホークスを眺めて唄ちゃんはなんだかキラキラした目をしている

「若いのに見えてるものが全然ちがうんだよなあ…まだ22だよ」

「6歳しか変わんねえのか」

「ムカつくな…」

「ああ…そうだな」

妙に神妙なエンデヴァーに違和感はあるけれど、それよりも唄ちゃんが「かっこいいー」と告げたので爆豪くんがキッと目つきを悪くしたのでそれを諫めることに尽力した









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