ヒロアカaqua


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「チッ…体よく分断されたか」

やってきた狼男のヴィランがそう告げる
その時水中から梅雨ちゃんの舌が伸び彼の足に絡み付いた

「うおっ!!」

そのまま水中へ引き摺り込み、梅雨ちゃんはすぐに水から出る
その瞬間を狙い焦凍くんと私の氷結が辺り一帯の水源を全て凍らせた

「よしっ!」

「作戦通り!」

「…いや」

「まだだよ」

バキバキと割れた氷
水の中から飛び出して来たヴィランはピンピンしていた

「冷てえじゃねえかよ、おい」

「また会ったな」

「フンッ…やめとけ、今日の俺は…本気だぜ」

タバコを咥えたヴィランの目がこちらを睨みつけた

「俺らだって違う」

「島民が避難した今」

「全力で」

「お前を止める」

「レシプロターボ!」

対抗戦で見た飯田くんの新技
早すぎる故に時間制限があるというもの

「10分でケリをつけるぞ!!!」

「「おう!」」

「うん!」

「ケロ!!」

臨戦態勢に入った私たちを見てヴィランは笑った

「上等だ」

飯田くんが凄まじい速さで攻撃を繰り出す
それを受け止めたヴィランは彼を投げ飛ばした

「無駄だ!!!」

「レッドガントレットォオ!!!!」

硬化した切島くんの打撃も簡単に受け止めたヴィランは不敵に笑った

「かゆいな」

「ぐあっ!!!」

頭を掴まれ投げ飛ばされた切島くんが岩の壁に激突する

「チッ!」

焦凍くんの炎攻撃を爆風を起こすことでかき消したヴィラン
その顔を囲うように水の球を作り出し、水の鎖で体を拘束した

「今だよ!」

息もできなければ力は出ないだろう、そう見込んでの攻撃
飯田くんがすぐに駆け出し水中のヴィランへ向かって足を振りかぶる

入った一撃、でもやはり押し返されてしまい飯田くんは弾かれた
それに水の球もよくわからない覇気のようなもので打ち消されてしまう

「っ、そんなのあり…?!」

すかさず焦凍くんの氷結が襲いかかるがそれもはじき返される
するとヴィランは咥えていたタバコを吐き捨てた
度重なる連携攻撃に苛立っている様子だ

「てめえら…無駄だと言ってるだろうが……ッ!?」

と、その時ヴィランが自分の異変に気が付く

「か…体が…!!?」

「単調な攻撃を繰り返したのには意味がある」

「俺の足、そして切島くんの手には蛙吹くんが作った毒性の粘液が塗られていた」

「梅雨ちゃんね」

姿を現した梅雨ちゃん
焦凍くんと私は近接2人が立て直す時間を稼ぐための攻撃要員だった

「観念しろよおっさん!」

ろくに体も動かせないはず…それなのにヴィランは諦めていなかった

「小賢しい真似しやがって…見せてやるよ…俺が化け物だと言われる理由を!!!!」

みるみる変形していく体
腕からは羽を、足は鳥の鉤爪のように、頭には角も生えており尻尾も合わせるとまさにキメラだ
体格が大きくなったヴィランが大声で雄叫びを上げる姿に冷や汗が伝った

「巨大化!?」

「あの姿…天喰先輩かよ!」

するとヴィランがガッと口を開いた
それをまずいと判断した焦凍くんがすぐに分厚い氷壁を繰り出すが、高火力のビームみたいなものを放ってきたヴィランの攻撃で氷壁がどんどん削られていく

「くそっ!」

「蛙吹くん!」

「ケロっ!!」

飯田くんが焦凍くんを抱え、梅雨ちゃんが切島くんと私を連れその場から一旦退いた
辺りを一瞬で火の海に変えるほどのビームを周囲に撒き散らしていく様子に動揺してしまう
映画とかで見た怪獣がこんな感じだったかもしれない

すると再びチャージが始まった

「なっ…連発できるの?!」

「雫ちゃんこっちへ!」

再び梅雨ちゃんに抱えられ移動
今度は岩陰に身を隠し様子を見守る

「なんてパワーだ…!」

「近づくことすらできないわ」

「くっ…間もなくレシプロが終わる!」

飯田くんのふくらはぎのエンジンがプスプスと音を立て始めていた
どうするか必死に頭を回す私の隣で焦凍くんが顔を上げた




ーーーーーーー
ーーー





「突破口を開いてくれ」

そう言えば、全員が俺の顔を見る

「俺を奴の懐に!」

「その後は?」

どんどん近づいてくる足音
時間はない

「考えがある」

そう言った俺に飯田が頷いた

「よし!これが最後のアタックだ!」

それを聞いて雫たちも頷く

「飯田、レシプロターボであいつの気を引いてくれ」

「なら俺が盾になるぜ!」

「頼む…蛙吹と雫は援護を」

「ケロっ」

「わかった」

作戦通りヴィランの前に出て攻撃を引きつける飯田
その間に川沿いに切島を前にして氷結でヴィランの下へ回り込んでいく

「この感じ…神野を思い出すな!」

「ああ」

「何が来たって耐えてやる、必ず懐に飛び込め!」

「ああ!」

ヴィランが俺たちに気がついてチャージし始めた
またあのレーザーが来ると察知した切島が全身を硬化していく

「アンブレイカブル!!!!」

放たれたレーザーが真っ直ぐこっちへ飛んでくる

「うっ…う、おぉおお!!!!」

レーザーが止むまで耐えた切島が俺の目の前で崩れ落ちながら「行け」と告げた
それを聞いてヴィランの上を取るように氷結で加速していく

が、ヴィランの口には再びチャージされたエネルギーの玉が見えていた

「(くそ…っ!)」

直後
ヴィランの顔の横で爆発が起こった
雫の水蒸気爆発で口が閉じたヴィランはそのまま体が締め上げられたように動かなくなっている

「大人しくして!!!」

全身液状化した雫が自らを縄のように変形させ拘束しているようだ
その様子に感謝し、宙へ飛び出した

"体の熱を限界まで引き上げろ!"

脳裏を過るのは俺にそう言った親父の言葉

加速し宙を飛んでいた俺はそのままの勢いでヴィランの角を掴み、そいつに着地
先日の対抗戦の時に出来た親父と同等の火力

「炎で出来たことを…氷結で!!!」

構えた俺を引き剥がそうとするヴィランの腕を蛙吹が舌で拘束
暴れ回る尻尾は飯田が押さえつけている

「轟くん!!」

動けないため口を開いていくヴィラン
その口にはエネルギーが集まっていく

「っ、おぉおおおお!!!!!」

ヴィランの口内に手を突っ込んで内部から凍らせた

「(下がれ!限界まで!!!!)」

レーザーは収まり、身の危険を感じたヴィランが更に暴れ始める
そのせいで飯田と蛙吹が勢いよくぶつかった
鈍い音がしたところからして頭をぶつけたんだろう

「「あ゛っ…!!!」」

崩れ落ち動かなくなった2人
雫が必死に押さえつけるが暴れるヴィランのせいで液状化が解けてしまった
元々耐久時間もそんなにない上に使えば一気に体内の水分量が激減すると聞いているが、暴れるヴィランを押さえつけるために更にかなりの体力を消耗したらしい
実体化した雫が尻尾に弾き飛ばされ壁に激突し、地面に倒れ込んだ

「う゛っ…!!」

他の奴らが繋いだチャンスを無駄にしないためにヴィランを急速冷凍していく

「凍て尽くせ!!!!!」

体に霜が降りていくが今はそんなことを気にしてられねえ
持てる力を全て出すためにありったけの力を込めた

「っあああああああっ!!!!!」

遂に耐えきれなくなったのかヴィランの口内から氷結が飛び出してくる
どうやら完全に冷やされたようで活動停止したらしい
ホッとした途端自分の体温も下がり切っているせいで上手く体が動かず地面へ転がり落ちる

「ハアッ…ハッ…ハッ…しばらく…冬眠してろ…
責務は…果たしたからな…緑谷…爆豪…」

朦朧とする意識の中、そう告げた俺は他のやつらと同じく意識を手放した








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