ヒロアカaqua


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結局ヴィランが退いてくれたことでなんとか助かった私たちは島の人みんなと城跡のある小島へと避難していた
そこで給仕班、物資調達班、医療班に分かれ対応に当たっている


唄ちゃんに治療してもらい十分に水分を確保してから私は給仕班に参加した
スマホが使えない以上外部との連絡はとれない
その上、ヴィランの攻撃で電力も絶たれた

上鳴くんがこの避難所の電力を復旧させ、百ちゃんが必要物資を創造してくれている

「海色、もう平気なの?」

「うん、さっきはありがとうね瀬呂くん」

食材を運んできてくれた瀬呂くんにお礼を告げ手元の野菜を切っていく

「食料が豊富な島でよかったわ」

「捕まえたヴィランどうしたの?」

「ああ、地下のボイラー室に閉じ込めたってよ
いくら尋問しても何も言わないらしいぜ」

それを聞いて心に不安が広がっていった





ひと段落してからA組のみんなで集まって今後のことを相談する
大怪我を負っている緑谷くんと爆豪くん、それに治療中の唄ちゃんの姿はない

「まずは現状の報告、通信・電力網が破壊され救援を呼ぶことはできない」

「先ほど救難メッセージを発信するドローンを創造し、本島へと発進させました
到着は早くて6時間…救助が来るには更に時間がかかりますわ」

「それまでヴィランが待ってくれるとは思えない」

と、その時この部屋に活真くんを抱きかかえ真幌ちゃんの手を引いた唄ちゃんが入って来た
ずっと治療に回っていて個性を使いっぱなしと聞いている
かなり疲労している様子で心配するけれど、軽く手を上げて大丈夫だとアピールされてしまった

「今我々がやるべき最優先事項は島の人々を守り抜くこと」

「どうやって?」

「緑谷と爆豪をあそこまで痛めつけたヴィランだぞ!」

嘆く峰田くんに賛同するように頷く

「俺らが戦ったやつもかなりの手だれだった」

焦凍くんの言う通りだ、あの狼男のようなヴィランを相手に手も足もでなかった

「戦うにしてもヤオモモや上鳴は個性かなり使っちゃってるし…舞羽だってずっと治癒の個性使ってんじゃん…」

「分かってるだけでもヴィランはまだ3人いるわ」

「一斉に襲われたらひとたまりもねえぞ」

「せめてヴィランの目的が分かれば」

何もわからない以上後手に回るしかない
怪我人も出ているのだから何かしらの策を立てないといけないのに何も思い浮かばない

「ヴィランが狙ってるのは僕だよ!」

突如部屋に響いた声にみんなの視線が唄ちゃんの服を引っ張る活真くんへ向けられる

「え…?どういうこと?」

「僕の個性を奪うって言ってた!」

「個性の強奪?」

「まるでオール・フォー・ワンみたいね」

神野の一件で出くわしたオール・フォー・ワンを思い出し全身がゾワッとした感覚に襲われた
またこの件にヴィラン連合が関わっているんだろうか

「でもヴィランの目的はわかった!」

「この子を連れて逃げればいいだけ!」

そう告げたお茶子ちゃんと三奈ちゃんに首を横に振る

「そう簡単にはいかないよ」

「相手はヴィランだ、この子を差し出さないと島民を殺すとか言い出しかねねェ」

私に賛同するように焦凍くんがそう告げる

「じゃあどうすりゃいいんだよ…!」

みんなの焦り声の中、活真くんが一歩前に出た

「僕をヴィランに渡して!」

「活真くん!」

唄ちゃんが止めようとするけれど彼はその手を振り払った

「殺さないって言ってた!僕の個性なんかなくなってもいい
それで島のみんなが助かるなら…」

「そんなのダメだ」

活真くんを制するように聞こえたのは緑谷くんの声
入り口の方を見れば、そこにはコスチュームを纏った彼がいた

「出久!まだ動いちゃ…!!」

「活真くんの個性のおかげで大丈夫だよ」

活真くんの前に屈んだ緑谷くんは彼に微笑む

「細胞の活性化、新陳代謝の促進、ドーピング的効果すらある
おかげでこんなに回復できた!すごい個性だよ活真くん!ありがとう!」

「うっ…デク兄ちゃん」

「君が怖い思いをすることなんかない、そのために僕たちがいる」

涙目になる活真くん
緑谷くんは唄ちゃんに目を向けた

「唄ちゃんもありがとう、ずっと個性使ってくれてたんだよね」

その言葉に首を横に振る唄ちゃん
緑谷くんに続いて部屋に入って来た爆豪くんが俯いている彼女の額を弾く

「しけた面すんな、こっちまで萎えんだよ」

「っ…勝己…!」

「要するにあのクソヴィランどもをぶっ殺せばいいだけのことだろうが」

向き合う緑谷くんと爆豪くん
そんな2人を見守る唄ちゃん

幼馴染3人にしかわかり得ない何かがそこにはある

「必ず君たちを守るよ」

「ヴィラン共をぶっ潰す」

緑谷くんと爆豪くんが活真くんたちにはっきりと言い放った言葉に唄ちゃんが頷いた

「島の人たちも絶対に助ける!」

「絶対に勝つ!」

「うん!みんな笑顔になれるように!」

活真くんと真幌ちゃんの顔に笑顔が戻っていく

「爆豪、緑谷、その意見乗った」

「うん!島の人たちを守ろう!」

焦凍くんと賛同すれば、それを皮切りに次々と賛同していくA組一同
戦うことは決まった

「さらに向こうへ」

「「「「Plus Ultra!!!!」」」」


その後作戦会議で決まったこと

後ろが断崖絶壁に城跡を拠点にして敵の侵攻ルートを1つに絞らせる
先制攻撃でヴィランを分断、それぞれの地形を利用して叩く

島の人たちは断崖絶壁の洞窟に避難
活真くんと真幌ちゃんは唄ちゃんたちで護衛する
いざと言う時の脱出経路も確保する

個性複数持ちのヴィランへの対応としては、個性を使いすぎると負担がかかるという相手の特徴を逆手にとり消耗させる
波状攻撃を仕掛けて個性を使わせる、奪われることも加味して接近戦は避ける方向だ

それでヴィランを倒せればよし、たとえ倒せなくても救援が来るまで持ち堪えられれば…

「みんなを助けられる」

「ちげェ…絶対に勝つんだよ…!」

城跡の最上部から侵入経路の橋を見るA組のみんな
もうすぐ夜が明ける

「雫ちゃん」

「これ…」

「頑張ろう!」

「うん!」

貴重なはずの水のボトルをもらいお茶子ちゃんと別れて焦凍くん、飯田くん、切島くん、梅雨ちゃんと共に森林エリアへ向かい待機すると遠くで爆破音がした
おそらく分断に成功したんだろう

「絶対止めよう」

そう告げれば、傍にいた焦凍くんが「ああ」と返事をした








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