▼ 123
「おいしーい!」
午前中の海岸パトロールを終えて少し休憩を挟む
海の家の人がどうぞと言ってくれた焼きそばをいただくけれど海とかお祭りで食べる焼きそばは格別なように感じるのは私だけだろうか
「海色、相変わらず食べっぷりヤベーな」
峰田くんにそう言われてしまうけど今日はまだ3人分しか食べてないから抑えてる方なんだけど…
「ねーねー、ヒーロー活動に来てる雄英の子っしょ?」
「体育祭見てたよ、雫ちゃんだっけ?」
急に声をかけられたのでそちらを見れば旅行に来たであろう男の人2人組
「(あー、これナンパだ)」
ヒーロー相手にすごいなと他人事のように思いながらどうあしらうか思案中
愛想が悪いのもよくないので適当に相槌は返すけれど正直面倒くさい
「仕事終わったらさ俺らと遊ぼうよ」
「LINEやってる?」
と、その時私の向かい側に焦凍くんが座った、どうやら休憩らしい
「雫、それくれ」
「あ、うん」
まだ未開封の焼きそばあったよなーと袋をガサゴソしているとナンパして来た2人組が「ヒッ」と声を出したので顔を上げる
何だか顔色が悪いけどどうしたんだろうか
「あの、大丈夫ですか?」
体調が悪いんだったら救護所に連れて行かなきゃと思い言葉をかけたけれど慌てたようにどこかへ行ってしまった
「え…どうしたんだろう」
不思議に思いつつも焦凍くんにそう言えば、「用事でもあるんじゃねえか」と返事が返って来たので「そっか」と納得した
焼きそばを食べ終わり再び午後のパトロールへ向かおうとしていると峰田くんがササッと寄ってくる
「おい海色」
「なに?」
コソコソと話しかけられて何か深刻な表情なので事件でもあったのかと屈めば、峰田くんが離れたところにいる焦凍くんを指差した
「アイツぜってーメンヘラ属性だぞ!」
「メンヘラ?」
「さっきお前が見てない間にナンパ野郎を撃退してたんだけどよ…完全に初期ろきだった…!」
初期ろきとは入学当初の馴れ合うつもりはない焦凍くんのこと
「それってどういう…」
よく分からなくてもう少し詳しく聞こうとするけれど、上空にいる常闇くんから海岸に倒れている人がいると連絡が入ったので急行した
そこには熱中症で冷や汗がだらだらの女性の姿
グループで遊びに来ていたようで、楽しすぎるが故に水分補給を怠ったんだろう
「(意識はある、それに見たところ軽症だ)」
常闇くんがすぐに気がついてくれたからだろう
傍にいた彼に「救護所まで運ぶの手伝ってくれる?」と問えば頷いてくれた
一緒に遊びに来ていた人たちには日差しが強いためこまめな水分補給と塩分の摂取、可能なら日差し避けの帽子などをおすすめしておいた
楽しいとつい羽目を外しがちなので注意して見ておこう
救護所に運んだ女性も診療所の先生が来てくれたのですぐに回復し、友達の元へ戻っていった
ーーーーーーー
ーーー
夕方
いおぎ荘に帰ってきた全員がもうくたくたな様子
私も炎天下の中ずっとうろうろしていたので全身が気怠い
やっぱり夏は苦手だ、早く静岡に帰りたい
「無理…きつい…」
「ほら、これも飲んで」
「あり…がとう…」
唄ちゃんが心配そうにスポドリをくれたのでありがたく頂戴した
「疲れた…」
「労働基準法Plus Ultraしてるし…」
「委員長、ちょっと細かい仕事受けすぎじゃね?」
瀬呂くんの言葉に飯田くんは今日の振り返りをしつつ「事件に細かいも大きいもないだろう?」と告げた
確かにそれはそうだし、困ってる人がいれば助けるのがヒーロー
「ヒーロー活動しているとはいえ私たちはまだ学生、誠実にこなし島の皆様からの信頼を得なければ」
そんな百ちゃんの言葉を聞いて峰田くんが挙手した
「はーい!ここに来て一度もヒーロー活動してないやつがいるんですけど」
にやにやとしながら指差した先には爆豪くん
聞いた話によると事務所でずっとごろごろしていたらしい、許せん
「わァざと事務所に残ってンだよ、お前らが出払ってる時ヴィランが出たらどうすンだァ?あぁ゛!?」
サムズダウンした爆豪くんに一同がヴィランと彼を重ね合わせた
そりゃあインタビュー丸々カットされるだろうね
「この島にヴィランはいねえだろ」
切島くんの言う通りだ、こんな島にヴィランが出るとは到底思えない
本州からもだいぶ離れているし尚更
すると扉が開く音がしたのでみんながそちらへ顔を向ける
「お邪魔するよ」
入ってきたのは島の人々
みんな手には食べ物を持ってきてくれている
「お礼というわけじゃないけれど、よかったら食べとくれ!」
「「わあっ!」」
机に並べられた豪勢な料理の数々
その後みんなで料理を綺麗にたいらげ、満腹感に満たされた
美味しすぎて結構な量を食べちゃったけどそれはみんなも同じだった
「爆豪のかっちゃんくん、俺ら風呂入って寝るから」
「宿直よろしく!」
「何でだよ!!」
上鳴くんと切島くんに食ってかかる勝己
けれど瀬呂くんが「だってお前今日何もしてねえじゃん」と言ったので言い返せない様子だ
爆豪くんがいじられてるのは面白い、もっとやってほしい
すると唄ちゃんがこちらに来たので声をかける
「唄ちゃん、私たちもお風呂いこー」
「うん」
立ち上がってから爆豪くんに目を向ければいつもの不機嫌顔なので、わざと唄ちゃんにくっつくようにしてお風呂へ向かった
prev / next