ヒロアカaqua


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12月25日 正午


雄英高校ヒーロー科1年A組は日本の中でもはるか南に位置する那歩島へと降り立った
ここまで電車と飛行機とフェリーを乗り継いでの長旅だったこともありぐったりしてしまう

「あっつい…」

南の方に位置するということもあり覚悟はしていたけれど
12月でも夏一色の那歩島に先が思いやられた

別に夏でも水分補給さえしっかりしていれば問題はないけれど、今朝まで静岡の冬真っ只中だったのに急に常夏なんて風邪を引きそうで怖い

「皆!駐在施設までは気を抜かずに!!」

今日も元気な飯田くん
昨日はクリスマス会であんなに盛り上がっていたのに本当にタイトすぎるよ雄英

駐在施設のいおぎ壮は2階建ての大きな宿泊施設
今はもう使っていないようで、今回はそこを貸してもらい期間限定でここに拠点を構えることになっていた

「各自荷物を置いたらまずは機材の設置だ!事前に必要な機材は雄英が手配してくれている!!」

「迅速に設置、その後島内の地形把握のために数班に分かれてパトロールと島の方々への挨拶を行います」

飯田くんと百ちゃんの説明を聞きながら何か考え込んでる唄ちゃん
うなだれている彼女を見た飯田くんが「舞羽くん聞いているのか!?」と名指しで注意する

「(何かあったのかな?)」

少なくとも昨日までは普通だった
ってことは昨晩から今朝の間に何かが起こったということ
爆豪くん絡みだろうなーと思いつつも今は目の前のことに集中した


この那歩島には本物のヒーロー活動に来ている
先生たちはもちろん、プロヒーローや公安のバックアップもないので責任は私たち自信で取る必要がある

期間は30日までの6日間
前にここを管轄としていたプロヒーローが高齢のため退任
次のヒーローがやってくるまでの間の繋ぎという役目

コスチュームに着替えガイドブックを片手に那歩島を見て回る

「なーんかほんと沖縄って感じだね」

「てゆーか見て、まだ海で泳いでる」

今は高台にいるんだけれど遠くの方に見える海にはたくさんの人が見えた
12月なのに海に入れるほどの気温って夏は死ぬんじゃないかとゾッとする

地形把握が完了したら続いて島の人々へ挨拶をしつつパトロールを行う
数人でまとまって動いていると、やっぱり珍しいのか視線を感じた

「ヒーローだ」

「雄英の子だ」

「こんにちは、今日からしばらく駐在させてもらいます」

唄ちゃんがにこっと微笑むと島の人々は優しく受け答えしてくれた
穏やかなこの島は長い間ヴィラン被害にも見舞われていない
あるとすれば助っ人系の依頼ばかりだという話も聞き、夕方にいおぎ壮に戻ってそれを共有する

既に何人かはもうお役立ち仕事をしてきたようで、スタートは上々だ

「本格的な活動は明日からが本番だ!みんなで力を合わせ、このプロジェクトを必ず成功させよう!!」

「「「「おおー!!!」」」」







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ーーー






翌朝 AM9:00


人の多い海辺へ来ていた私は海岸をパトロール中
この島の人はもちろん、観光地としても人気なのか多くの人が海を楽しんでいるようだった

「ママー!」

びえええっと泣いている子供を見つけて駆け寄る

「どうしたの、迷子?」

怖がらないように優しく語りかければ、男の子はこくりと頷いた
大きな目に涙が溜まっていて不安だというのが伝わってくる

「私シャボンって言うの、お名前は?」

「ぼく…風太」

「風太くん、いい名前だね」

にっこりと微笑むと風太くんは少し落ち着いたのかこちらを見ている

「お姉ちゃんヒーローなの?」

「うん、そうだよ
まだまだ修行中だけど」

「すごい…!ぼくヒーローみたのはじめて!!」

キラキラした目を向けられて自分の幼少期を思い出す
個性が発現してから訓練漬けだったわりに両親に喜んで欲しくて一生懸命だったなあと

「ね、風太くん
ヒーローってどんなことをすると思う?」

「しってるよ!!こまってる人をたすけるんだよね!!」

「正解!物知りだねー
私今パトロール中なんだけど一緒にやってみる?」

「うん!」

嬉しそうな風太くんを抱きかかえて海岸を歩いていく
彼を連れていくのは放っておくわけにはいかないから
それにすれ違う人々に風太くんのお母さんがいないか探せるしこの方法が一番効率が良い

「雫何してんだ?」

「あ、焦凍くん」

屋台の方に氷の依頼をされていたはずの焦凍くんがこちらへやってきたので風太くんを抱えたまま振り向くとピシッと固まられた
あれ、もしかして子供苦手なのかな?

「あ!シャボンお姉ちゃん!ママいたー!!」

風太くんが指差した先にはおろおろしている女性の姿

「ママー!」

「風太!!」

駆け寄ってきたお母さんに風太くんを渡して彼の頭を撫でた

「もう迷子になっちゃだめだよ」

「うん!お姉ちゃんもパトロールがんばってね!!」

「ありがとう」

お母さんは何度も頭を下げていたけれどヒーローは人助けをするのが仕事なので気にしないで欲しい
それよりもずっと無言の焦凍くんの方が気になってしまってチラッと横目で見れば何かを考え込んでいるようだった

「何かあった?」

「あ…いや」

どもる様子を不思議に思うけれどずっと立ち話しているわけにもいかないのでパトロールを再開する
この海辺エリアにはライフセーバーとして障子くん、梅雨ちゃん、砂糖くん
遊泳禁止区域の注意喚起に瀬呂くん、海岸警備に私と焦凍くんと尾白くんと峰田くんが来ている
常闇くんも定時パトロールの合間に手伝いに来てくれたようで瀬呂くんを手伝っていた

他のメンバーはいおぎ荘を事務所として、そこで電話応対や海辺以外でのヒーロー活動に勤しんでいる

「屋台の方は?」

「さっき全部補充したからしばらく休んでて良いって言われた」

「そっか、じゃあ私1回水分補給して来てもいい?ここお願い」

「わかった」

焦凍くんに任せ自販機へ向かう
1時間に1本飲んでもすぐに干上がってしまうから水の個性というよりもはや魚の方が適してるかもしれない
水を飲んでふうと息をつけば人々の楽しそうな声が耳に届いた
笑顔が溢れていて微笑ましくなる

「よし、頑張ろう!」




シャボンとしてできることを一生懸命やって多くの人を助ける
心の底からなりたいヒーローになるために








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