ヒロアカaqua


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お風呂を出て女子部屋でみんなお話中
今日は何があったとか話すことは尽きない

すると何か面白いことを見つけたような三奈ちゃんがにまにまして唄ちゃんに近づく

「ねーねー、舞羽ぇーそれって爆豪と同じやつ?」

「え?…これおそろいなの?」

唄ちゃんの腕には皮のブレスレットが嵌まっている
シンプルだけれど唄ちゃんの好きそうなおしゃれなデザインなのでてっきり彼女が買ったのかと思ってた

「今日爆豪の足首に同じのついてたよ、ズボンに隠してたっぽいけどバッチリ見えた!」

「ええー、おそろいなんて流石カップルー」

三奈ちゃんと透ちゃんのいじりに唄ちゃんが顔を赤くしてる
その姿が可愛いのでお茶子ちゃんとにこにこしながら見守っていると唄ちゃんが立ち上がった

「ちょっと勝己の様子見てくるね、寝てるかもだし」

そう言って部屋を出た彼女

「爆豪くん意外とプレゼントとかするんやね」

「しかもおそろい」

独占欲は強そうだから分からなくはないけど、おそろいっていうのを伝えてないなんて可愛いところあるなあ

「雫はないんですの?轟さんとのおそろい」

「私はないなー」

期待した目で百ちゃんに尋ねられたけれど首を横に振った
焦凍くんは個性の都合上そういうアクセサリー系は身につけられないし、そもそもおそろいとか気にしなさそう

「てゆーか、さっき峰田から聞いたんだけどさ
海色今日ナンパされたんでしょ?轟がすごい顔してたって」

「ああ、それ私も聞いたけど…初期ろきくんみたいだったって言ってたなぁ」

どういう意味かわからなくてそのままにしてたことを思い出す

「轟くんきっと雫ちゃんがナンパされてるの嫌やったんやろーね」

「そうね、私もチラッと見たけれど雫ちゃんの方を何度も心配そうに見ていたわ」

「ええっ?!」

梅雨ちゃんから聞いた新情報にぎょっとしていると、透ちゃんが「イケメンでも嫉妬ってするんだ」とはしゃいでいた
嫉妬…言われてみれば仮免試験の時も夜嵐くんに嫉妬したって言ってたっけ
多分あの時はまだ恋愛感情とかはなかったと思うけれど

「まあ…焦凍くんは意外と肉食系だからなあ」

心で呟いたつもりだったけれどどうやら声に出ていたらしい
みんなの顔に期待が篭っている

「その話詳しく!!」

「えっ、あ…ほら、明日も早いし」

「雫の話を聞かないと眠れませんわ!」

「百ちゃんまで?!」

いつもなら「そうですわ、今日はもう寝ましょう」って言ってくれるのに何で!?
唄ちゃんがいない分私に集中している恋愛トークに顔が引きつってしまう

「ねえねえキスした?!」

「そんな、婚前ですのに!」

「ヤオモモ、世間一般では婚前でもキスするよ」

「まあ!」

驚いている百ちゃんがとっても可愛い
そうだよね、お嬢様だもんね百ちゃん
今度少女漫画貸してあげよう、絶対ハマると思う

「で?」

「どうなの?」

食い気味な三奈ちゃんと透ちゃんに観念して頷いた

「「「「キャー!」」」」

一気に盛り上がる女子メンバー
男子部屋は同じ階の向かい側なので慌てて「しーっ!!」とジェスチャーするけどこうなってしまった女子はもう止まらない

「どういうシチュエーション?」

「どうって…普通に…」

「イケメンってやっぱキスも上手なの?」

「えっ…あー…」

思い出したのは一昨日の晩のこと
結局あの後も深めのキスをされてしまって解放してもらえるまで結構な時間を要した
流石に翌朝早かったこともあり自分の部屋で寝たかったので心を鬼にして有無を言わせず強制終了したのだ
天然故かドストレートに好意を伝えてこられるのは慣れないしやっぱり照れるけど、おかげで焦凍くんのことで不安になることはなさそうだ
他の女の子にキャーキャー言われていたとしても多分平常心でいられそう
この前のインタビューが放送されてからSNSとかで焦凍くんファンが急増中らしいけれどそれも微笑ましく思えるくらいには心に余裕がある

「海色?」

考え込んでいた私を不思議に思った三奈ちゃんが声をかけたのでハッと意識を戻した

「ごめん、何の話だっけ」

「轟とのキスのシチュエーションだって」

「(話変えればよかった)」





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翌日


今日も海辺でのヒーロー活動を行なっていると昨日ナンパして来た2人組を見つけた

「こんにちは」

「「ヒッ」」

声をかけただけなのに何故かピシッと固まってしまった2人
焦凍くん一体どんな恐怖を植えつけたんだか

「ナンパなんてしてません!」

「今日は楽しく遊んでます!」

「「では!!!」」

すごい勢いで走って行ってしまった2人にぽかーんとしていると「シャボンのお姉ちゃん!」と声をかけられる
振り返るとそこにはお母さんと一緒にいる風太くん

「風太くん、こんにちは」

「こんにちは!」

「昨日は本当にありがとうございました」

「いえいえ、今日も泳ぎに来られたんですか?いい天気ですもんね」

流石の常夏、青空に浮かぶ白い雲が綺麗でまるで絵に描いたようにみえる

「明日のフェリーで帰る予定なので今日は満喫しようって、ね?」

「うん!!よるははなびするんだ!」

手持ち花火を買ったと嬉しそうな風太くんに「よかったね」と微笑む
子供は本当に可愛い、見ていて飽きない

「それじゃあ今日も楽しんでくださいね、何かあればいつでも言ってください」

「はい」

「お姉ちゃんばいばーい」

ぶんぶんと大きく手を振る風太くんに手を振り返しパトロールに戻る
時間はあっという間に過ぎて気がつけばもう夕方
先にあがったメンバーもいるようで私もそろそろあがろうかと屋台の方へ向かう

「お、食いっぷりのいい嬢ちゃん!」

「こんにちは、今日も大繁盛でしたね」

「ああ、おかげさまでね!かき氷いるかい?」

「え、いいんですか!?」

水分補給がしたかったのでありがたくいただくことにする
しゃりしゃりとした食感がたまらない

「(あ、そういえばこれって焦凍くんの氷なんだよね)」

そっか、焦凍くんの氷って食べられるんだ
今度水分補給がてら一粒もらおうかな

もぐもぐと食べ進めている時、少し離れたところにある港の方で爆発音が聞こえた
慌てて外に出てシャボン玉を作って空へと駆け上がれば、フェリーが1隻堤防に突っ込んでなぎ倒しになっているのが見える

「事故…?」

逸る気持ちを抑え、その場にいた梅雨ちゃんと障子くん、尾白くんに情報共有をしに地面へ降り立った

情報共有をした結果事務所にいるメンバーに連絡をとることにしたけれど自分のスマホが圏外になっていることに気がついて他のみんなにも問うけど、全員圏外

流石におかしいと思ったその時、近くで爆破音が響いた

「っ、ヴィランだ」

誰が呟いたんだか分からない、けれど確かにそこにいたのは狼男のような風貌の男
ヴィランの襲撃と判断し尾白くんと私が駆け出す

「フロッピー!テンタコル!」

「みんなの避難を最優先に!!」

救助活動を2人に任せたのは私たちが戦闘向きだからに他ならない

「尾空旋舞!!!」

尾白くんとの技が放たれるけれど、ヴィランは素手でそれをなぎ払ってしまう
尾白くんが離れる瞬間、海水を操作しヴィランへ勢いよく放つ
確かに当たったのに動じないヴィランに冷や汗が伝った








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