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エンデヴァーのインターンと聞いて3人はすぐに頷いた
焦凍くんから頼むらしいけど私からも一応お願いしておこう
ぽちぽちとスマホをいじり、メッセージを打ち込んでいく
エンデヴァーと会うのは職場体験以来になる
焦凍くん曰く変わろうとはしてるらしい
「(どんな感じなんだろう)」
想像つかないなあとぼんやりしているとメッセージが入ったので机に用意していた小包を持ってそーっと男子棟へと向かう
こういう時に全身液状化できるのは便利だ、屋根まで上がって5階の真ん中にある焦凍くんの部屋のバルコにーに降り立てばすぐに窓を開けてくれた
峰田くん曰くこれは不純異性交友に入るらしいけど、せっかくのクリスマスなんだから浮かれることは許してほしい
「寒くねぇか?」
「うん、個性の影響かな?寒いのはへっちゃら!」
部屋に入れてもらって座布団に座れば焦凍くんが「何か飲むか?」と聞いてくれた
その時、持ってきた小包のことを思い出して焦凍くんに渡す
「何だこれ?」
「手土産」
「え」
すると焦ったような顔になる焦凍くんの様子に合点がいったので笑う
きっとこれをクリスマスプレゼントと勘違いして、その上で自分は何も用意してないと思って焦ったんだろう
そもそも今回クラスでクリスマス会をするってなった時も「何するんだ?」って言ってたし想定の範疇だ
「大丈夫だよ、ほんとにただの手土産だから」
包装紙を解いた中には缶
「茶か?」
「うん、前に焦凍くんの部屋に来た時に急須があったこと思い出してこの前買っておいたの
ここのお茶が美味しいって前にお母さんが大絶賛だったから、よかったらこれどうぞ」
「ありがとな」
早速持ってきた茶葉で淹れてくれたお茶を飲む
「はあー、しみるー」
「年寄りみてぇ」
「あ、失礼」
むっとするけれど2人してすぐに笑い合った
「雫」
「何?」
「歳とってもこんな感じでいたいな」
その言葉に飲んでいたお茶を吹き出しそうになったけど勿体ない&他人様のお部屋なのでぐっと堪えた
「…え?」
急に何言い出すんだと焦凍くんを見ればいつものように涼しげな顔できょとんとしている
「何か変なこと言ったか?」
「いや…私たち付き合ってまだ2週間くらいだよね?
その…何と言うか…随分先を見てるなと思いまして」
それを聞いた焦凍くんは「当たり前だろ」と言ってから私の手を握る
「俺はお前以外と恋愛するつもりねぇぞ」
はっきりと告げられたその言葉に胸が高鳴ってしまう
けれど顔が近づく前にバッ!と離れた
「…なんでそんな距離とんだ」
「だって絶対キスする!」
この前のことを思い出して後ずさればしょんぼりした顔をされた
くっ!顔が良い!!!
「ダメなのか?」
「ダメじゃないけど止めてって言っても止めてくれないもん」
「それは…善処する」
こてんと首を少し傾げた焦凍くんはじりじり詰め寄ってくる
なにこの光景、なんで私たち戦闘訓練の時みたくなってるの
「そんなに警戒されると傷つく」
「う…」
「それにもっとお前に触れたい」
「そーゆーとこだって…んっ!」
隙ありと言わんばかりに捕まえられちゅっちゅっと何度も角度を変えてキスをされる
恋愛なんて1mmも知りませんって顔をしてるくせにガツガツとキスしてくるし、何なら舌まで入れられてディープなそれにプチパニックを起こしてしまう
「ちょ、待っ!」
「あんま声出すと障子と瀬呂に気づかれんぞ」
障子は耳良いしなと付け足した焦凍くんに反論するために少し睨んだ
「だって、焦凍くんが」
「お前に名前呼ばれんの好きだ」
「ひょえっ」
不意打ちみたいなタイミングでのデレに変な声が出てしまった
何なのほんと、私勝ち目なくない???
「なぁ、俺のどこが好きなんだ?」
そう尋ねられてスンッと真顔になる
どこ…?え、そんなの1から挙げたらきりないけど大丈夫?
「それ話し始めたら長くなるけど良い?」
「なら今度聞く」
頬に触れた焦凍くんの右手は冷たくて、でも繋がれてる左手は暖かい
指先からも唇からも伝わる熱に溶けてしまいそうな気がした
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