ヒロアカaqua


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焦凍くんのインタビューが終わった

「技の披露もするのか?インタビューでは?」

常闇くんの問いにMt.レディが壇上の私たちを見て屈んだ

「あらら!ヤだわ雄英生!皆があなたたちのこと知ってるワケじゃありません!
必殺技は己の象徴!何が出来るのかは技で知ってもらうの
即時チームアップ連携、ヴィラン犯罪への警鐘、命を委ねてもらう為の信頼
ヒーローが技名を叫ぶのには大きな意味がある」

その言葉が腑に落ちた
確かに必殺技を見てヒーローを知ったという人もいる
私たちはそういう世界に行こうとしているんだ、と

「ちょっと前までカメラ映りしか考えてなかったハズだぜあの女…」

「Mt.レディだけじゃないよ
今ヒーローたちみんな引っ張られてるんだ、No.1ヒーローに」

それを聞いて福岡市のエンデヴァーの活躍を思い出した
変わろうとしているのは焦凍くんだけじゃない
エンデヴァーも他のヒーローも

「さ、どんどんいくわよ」

みんな続々とインタビューに答えていく
順調でとっても上手だ
私の番がやってきたので壇上に上がればMt.レディがにっこりと笑った

「シャボンさん、最近活躍が目まぐるしいですね!」

「ありがとうございます」

「水系最強と言われてもいますがその点はどう思いますか?」

海色の家系で唯一水以外の氷や水蒸気も操れる個性
他の水系の個性を見ても正直いないのが現状

「嬉しい反面プレッシャーでもあります
ただ私の個性がより多くの人を救けられるのならそのプレッシャーなんてへっちゃらです」

「おぉー、良いわ良いわね!
素直なところがポイント高いわ!」

"素直"と言われ少し驚く
入学当初は焦凍くんにしか素を見せなかったのに気がつけばこうやって自然体でいることが当たり前になっている

「(あ、そっか…変わったのは私もだ)」

変化していくみんなに置いていかれるような気がしてた
けれどちゃんと私も前に進んでる
そのことがわかって微笑むと、Mt.レディが固まった

「…あの?」

「あなた良いわ!ほしい!!!」

ガッと肩を掴まれギョッとしていると相澤先生の「未成年に手を出さないでください」という言葉が飛んできた

「美人だしメディア受けも良い、それでいて個性も強力…ほしい!!!!」

「はい、一旦休憩を挟むわよ」

ミッドナイトがMt.レディを引き剥がして連行していく
残された私は壇上でぽかんと呆気にとられて硬直したままだ

「雫ちゃんモテモテだねぇ」

一連の流れが面白かったのか笑う唄ちゃん
その隣にいた焦凍くんが「それは困るな」と言ったのでみんなの視線が焦凍くんへ向けられた
唄ちゃんも笑顔のまま固まってしまっている

「あ、悪ィ…何でもねェ」

「いやいやいや!今のどういうこと?!」

「お前らまさか遂に付き合ったのか?!」

ざわざわとするクラス
うまく誤魔化そうと思ったけれど、先に口を開いたのは焦凍くんだった

「それは雫に言うなって言われてるから…」

「「「「付き合ってんなァ!!!」」」」

「(どうしてこんな天然なの…!!!)」

言い逃れができない状況になってしまい空を仰ぐ
今日も空は青いです、良い天気です

「お前ら今は授業中だぞ、ほら再開だ
次、舞羽」

「あ、はい」

みんなの視線を受けつつも極力授業に集中する
隣で焦凍くんが「バレちまった、悪ぃ…」と小声で言うので苦笑いしてしまった

「フリューゲルさん、先日のヴィラン退治迅速でしたね!」

「ありがとうございます、速さは力に勝ると教えてくれた友人のおかげです」

常闇くんがフッと笑う
やっぱり鳥同士なにか通ずるものがあるんだろう、最近2人は仲がいい

「確かに凄まじい速さですが、力の面で言うと体術も優れていらっしゃるとか」

「合気道とパルクールを少々」

「まあ!それは頼もしいですね!」

唄ちゃんも技をお披露目し、貴重な治癒要員ということを評価されていた
続いて爆豪くん

「俺ァテキトーな事ァ言わねェ!黙ってついて来い!!」

「1人だとまだマシね…わかった、ソリが合わないのね人類と」

Mt.レディの言葉に唄ちゃんが笑った
そして焦凍くんは申し訳なさそうな顔をする

「ワリィ、俺がいたから丸々カットに」

「思い上がんな!てめーなんぞが俺に影響与えられるワケねェだろが!!」

「そうか」

この2人のやりとりは一体何なんだろう
というかよく3ヶ月も一緒に仮免補講に行ってたなぁ
爆豪くんの番が終わり続いて緑谷くん
うわ、手と足が一緒になってる

「デクくんでしたっけ!?活躍見ました!」

「それは…良かった…良かったです…!」

「ご自身ではどのようにお考えでしょうか!?」

「それは…良かった…!」

ガッチガチの緑谷くんに頑張れとエールを送るけれどダメそうだ

「あなたの技はオールマイトリスペクトが多いように思いましたがやっぱり憧れてる?」

「はい!!!」

「ここは声でかいんかい」

「でもそれだけじゃダメだと思って…自分なりにオールマイトの技をカスタマイズしてみたりもしてます
例えばデラウェアスマッシュはオールマイトのレパートリーにはない州名からつけた技名で、最近では訓練の一環をそのまま技にしたデラウェアスマッシュ・エアフォース」

「ボソボソ長ェー」

唄ちゃんが顔を押さえて俯いた
ほんと忙しいなこの幼馴染トリオ

「そういえば例の暴走…進展があったと聞いたけど大丈夫なの?」

ミッドナイトの問いかけに緑谷くんが集中し始める
そしてぴょろっと出たあの黒い帯状の個性

「よっしゃ!今はピョロっとですが、コントロールの第一歩です、ゆくゆくはこれも」

「「なにそれ」」

Mt.レディとミッドナイトがツッコミを入れた
本当に一瞬出てすぐに消えたのでまだ技とは言い難い
けど何かを掴んだならよかった、そう思いホッとした










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