ヒロアカaqua


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焦凍くんと両思いになった翌日

極力いつも通りに努めてたけれど、昼休みに入るや否や唄ちゃんに連行された
普段は唄ちゃんは百ちゃんや響香ちゃんたちと、私は焦凍くん、飯田くん、緑谷くんたちと食べることが多いので私を連行する唄ちゃんを見てみんなが不思議そうな顔をする

食堂の端っこ、周りにヒーロー科の人がいないところに座った私たち
うずうずしていた唄ちゃんは目を輝かせながらこちらを見た

「それで?!」

午前中の座学から既に早く聞きたいとそわそわしていたのは知っている
まあ昨日完全に巻き込んでしまったので仕方ないか

「あの、えっと…付き合いました」

「やったあああああ!!」

ガッツポーズをした唄ちゃんにぎょっとしたけれど食堂はがやがや騒がしいのでみんな気にしていない様子

「おめでとう!やったね!!」

「うん、ありがとう」

体育祭の頃からずっと応援してくれてた唄ちゃんはまるで自分のことのように喜んでくれて頬が緩む
唄ちゃんのこういうところが好きだ、嬉しい時も悲しい時も一緒になって寄り添ってくれる

「ね、あの後結局どうなったの?」

「えーっと…」

思い出したのはキスされたこと
思いの外押せ押せな焦凍くんにびっくりした

その経緯を唄ちゃんに話すと、彼女は頬を染め嬉しそうに話を聞いてくれた

「うっそ、轟くんまさかの肉食系か」

「もうびっくりしちゃったよー…」

ひそひそと横並びで話す私たち
ご飯を食べ進めながら盛り上がっていると、離れたところにいた爆豪くんと目があった
私の様子を見て付き合ったことを悟ったのか、中指を立ててきたのでこっちもサムズダウンをしておく

「え、雫ちゃんどうしたの」

「ああ、何でもないよ」

別に爆豪くんのことは嫌いじゃないけど絶対仲良くはなれないだろう

「まだ色々話したいのに昼休み短いよー」

「また寮に帰ったら話そう、私も唄ちゃんの話聞きたいし」

「私?」

何で?という表情の唄ちゃんににっこり微笑む

「いやいや、昨日爆豪くんが部屋から出てきたのびっくりしたよ」

そう告げればハッ!とした唄ちゃんが赤くなった
人のことを言えないけどこういう風に照れる姿はとっても可愛い

「い、いやあれは別に何も」

「ねえ、キスした?」

「キッ!!!?」

わかりやすいその反応にもう一度爆豪くんを見ればかなり不機嫌そうにしているのでほくそ笑んでおいた






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ーーー





それから数日後


放課後、寮に帰るや否や共有スペースにはカメラマンとリポーターの方
どうもこの前の仮免取得後、30分でヴィラン退治をしたという焦凍くんと爆豪くんに取材が入ったらしい

これで3本目だけれどA組みんな興味津々で様子を見守る
そりゃそうだろう、何たって焦凍くんと爆豪くんは相性が悪い

天然炸裂、ほけーっとしてる焦凍くん
その隣…1人分座れそうなくらい距離を空けて座ってるムスッとした爆豪くん
見るからに仲良くは見えないし、爆豪くんに至ってはメディアなんだから身なりを整えなよと呆れる

「仮免取得から僅か30分後にプロ顔負けの活躍!
普段から仲良く訓練されてるんでしょうか!?」

完全にタジタジのリポーターさん
カメラマンさんも困惑している

「そう見えンなら眼科か脳外科行った方がいいぜ」

「仲は良いです」

まるっきり正反対のことを言う2人にA組一同は遠い目をした
これが全国放送されると思うと気が気じゃない

「ハァ!?テキトーこいてンじゃねーぞ!!いつ仲良くなったんだコラ!!」

「仮免補講で2人一緒にいること多かったろ」

「何だそのシステムは!時間と親交は比例しねェんだよ!」

「システムって何だ」

「知らねーよ!てめーも脳外科行けやァ!!!」

収集がつかない事態
というか1時間のインタビュー枠なのにほぼ爆豪くんがキレてただけだけど大丈夫だろうか

「私…もう外歩けない」

顔を押さえ俯く唄ちゃん
そっか、体育祭で爆豪くんの幼馴染なの全国に知れ渡ってるもんね
緑谷くんも悟りを開いた顔してるし2人とも大変そうだ

流石に見てられないので出来るだけ物音を立てずみんな自室へ帰っていく
私もうなだれている唄ちゃんを連れて2階に上がった

「今更だけど私さ…彼氏があれって大丈夫?」

何かに気がついた様子の唄ちゃん
このままだと流石に爆豪くんが不憫なので冷蔵庫に忍ばせてあったプリンを差し入れしておいた

こうやって水面下でサポートしていることを爆豪くんはちゃんと理解してほしい
この前私を見放したのは翌日の戦闘訓練でしっかり仕返ししておいたけどそれ以来私たちは表立って対立している

「(まあ、あれだけ強い爆豪くんにライバルとして認められてるのは光栄だけどね)」

緑谷くんと焦凍くん、それに唄ちゃんの3人をライバル視している爆豪くん
強者だけが許されるその枠に入れたことに少し口角が上がった

「唄ちゃん」

「ん?」

プリンを食べていた唄ちゃんがこちらを見る

「私も強くなるね」

それを聞いた彼女は何の話か分からなかったようで首を傾げた









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