ヒロアカaqua


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12月上旬


A組とB組のクラス対抗戦が明けた週末
今日は朝から雪が降っている

「「「「雪だー!!!」」」」

盛り上がる一同
ソファに座って暖かい飲み物を飲みつつはしゃいでるA組のみんなを微笑ましく見守る
スマホが震えたので内容を見れば今日のニュース
昔からお父さんの真似をして時事ネタにはしっかりついていけるようにニュースを追うことが習慣づいていたので、大きいニュースはこうやって通知がくるようにしている

慣れた手つきで内容を順に見ていけばギルティルージュが新CMを撮影したとの記事も見つけたので唄ちゃんを呼んだ

「唄ちゃん、これ見て」

「わぁ、相変わらず美人」

「ビルボードチャートJPで6位取ってから益々大活躍だね」

どんどん多忙になるギルティルージュ
過労で倒れてもおかしくないだろうに彼女は今日も完璧な自分であり続ける
何だかちょっと前までの私を見ているようだけれど、彼女は見られるプロとして意識してやっているから私とは全く別物なんだろう

ぼんやりと考えていると朝ごはんを食べていた瀬呂くんが唄ちゃんに話しかけた

「爆豪って何時くらいに帰ってくるか聞いてる?漫画の続き借りてェの」

「何で私に聞くの」

「何でって、そりゃあお前カノジョだし」

そう言った瀬呂くん
けれど唄ちゃんは黙り込む

「え、舞羽?」

「いやあ、知らないんだよねえ」

がっくしと項垂れる様子に一同が納得した表情になる

「おい瀬呂謝っとけ、あのかっちゃんが仮免補講のことを舞羽に話すと思うか?」

「そーだそーだ、あのかっちゃんだぞ」

悪ノリする上鳴くんと切島くん
爆豪くんは緑谷くんと唄ちゃんをライバル視してる節があるので仮免補講のことは話してないんだろう
唄ちゃん的には話してほしいんだろうけど、弱い部分を見せたくない爆豪くんらしい

すると緑谷くんが「6時くらいて轟くんが言ってたよ」とアシストしていた

そう、今日は仮免補講最終日、いよいよテストの日だ
これで合格すればA組は全員仮免取得という素晴らしいことになる

「今頃テスト中かねえ、大丈夫かな」

「大丈夫でしょ!爆豪くんも最近感じ良いし!悪いけど!」

透ちゃんの意見に頷いていると砂糖くんが立ち上がった

「ケーキでも作って待ってようか」

「「「やった!!」」」

砂糖くんのケーキは絶品なので女子一同が歓喜する

「砂糖くん、手伝うよ」

「お、助かる!」

料理もお菓子作りも好きなのでそう告げると、唄ちゃんが挙手をした

「私も!!」

そんな唄ちゃんに常闇くんが静かに「ダークマターが生まれる」と言ったので瀬呂くんが吹き出した

「ダー…え、何それ?」

わけがわからない様子の唄ちゃん

「気持ちはありがたいんだけど、俺と海色で十分だよ」

「キッチンって意外と狭いし…ね?」

「大丈夫だから何もするな」

砂糖くんと私がやんわりと唄ちゃんに手伝わなくていいと告げると他のみんなも止めに入ってくれた
唄ちゃんは料理が苦手、林間の時にも思ったけど苦手という言葉で片付けていいのかわからないほどの仕上がりだ

みんなに止められ不服そうな唄ちゃんに苦笑いしつつ砂糖くんとキッチンへ向かう

「それにしても、俺があの2人に唯一勝ってたのが仮免持ちっつーとこだったのになー」

積雪情報を見ながらそうぼやいた上鳴くん

「チンケな事言うなよ」

「おまえだけの良さは多々あろうに」

「上鳴チン気!」

「んだそりゃ!障子ありがとう」

いつも通りのA組、いつも通りの休日
ちょっと違うのはみんなが焦凍くんと爆豪くんの帰りを心待ちにしていることだろう

ボウルやら何やら調理器具を準備する私と材料を確認する砂糖くん
スポンジを焼いたりホイップを泡立てたり、冷やしたりと結構時間がかかるので先に必要なものが揃っているか確認中

「あ、苺足りないな」

「ほんと?あとで誰かに買い出し行ってもらう?」

「なら舞羽に頼むか?さっきしょぼくれてたし」

「そうだね」

きっとお願いしたら唄ちゃんは嬉しそうに行ってくれるだろう
雄英付近にスーパーもあるしそんなに時間もかからないはずだ

と、その時耳に飛び込んできた峰田くんの叫び

「考えてもみろよ!寮内で男女間が互いの部屋で寝泊りしてるなんて考えられるか?!」

脳裏をよぎったのは仮免試験後に焦凍くんの部屋に泊まってしまったこと
間近にあった焦凍くんの整った顔、触れた手の熱さ、一緒に入った布団

"お前の1番仲良い男は俺がいい"

「っーーー!!!」

そう告げた彼を思い出してつい動揺してしまった
持っていたボウルが手から滑り落ちてガッシャーンと凄まじい音が共有スペースに響く

「大丈夫か海色?」

心配そうな砂糖くん
それにみんなの視線も感じる

「だ、だだだ!大丈夫だよ!!!?」

慌てて誤魔化したけどバレてないかな、心配だ





ーーーーーーー
ーーー




2人が帰ってくる時間を少しすぎた頃

「あ、帰ってきたっぽい!」

索敵で足音を聞いた唄ちゃんと響香ちゃんに真っ暗闇の中みんながスタンバイする
ガチャリと開いた寮の扉

「ンで真っ暗なんだ」

「全員出かけてんのか?」

何も知らない2人の呟き、そんな中お茶子ちゃんが「仮免取得ー!」と声を出す

「「「「おめでとーー!!!!」」」」

パァンッ!と一斉に鳴るクラッカー
それと同時に灯りがついて焦凍くんと爆豪くん2人の驚いた顔が見えた

「ケーキ食え!」

「こんなに食えるか!」

4段くらいあるケーキを持って行った砂糖くんにクワっと怒鳴る爆豪くんはすぐにその一部を取って食べ始める

「焦凍くん」

「おめでとう!」

飯田くん一緒に声をかければこちらを向いた焦凍くんが口角を上げて「ああ」と答えた

「やったな爆豪!」

「かっちゃん!これで一緒にヒーロー活動できるね!」

緑谷くんのその言葉にハッとした爆豪くんがケーキを食べる手を止めた
すぐにわなわなと震え始め、怒りの形相に変わっていく

「何上から目線で言ってんだァ!このクソナードがァァ!!!!」

「そういうつもりじゃ…!」

「俺に口答えすンじゃねェエエエエエ!!!!」

2人のやりとりにおろおろした面々が助けを求めて唄ちゃんに目を向ける

「舞羽、あれ止めなくていいの?」

「あれはじゃれてるだけだから」

「いや、どう見ても違う」

にっこにっこしてる唄ちゃん
幼馴染トリオには他の人にわからない絆があるのかもしれない

その後、砂糖くんがケーキをみんなの分も取り分けてくれたので百ちゃんの紅茶と合わせて頂く
本当に砂糖くんのケーキは美味しい、甘いもの好きにはたまらないので噛みしめる

「ねー轟ィ、これ海色も一緒に作ったんだよ!」

ずいっと身を乗り出して焦凍くんにそう言った三奈ちゃんにぎょっとしてしまう

「ちょ、三奈ちゃん?!」

いつものいじりだろうけど、こんな大人数の前では初めてなのでおろおろしていたら
少し驚いたような表情の焦凍くんと目があった
すぐに優しい表情になった彼はいつも通りの声色で言い放った

「そうか、雫は良い奥さんになるな」

その言葉に一瞬全員が静まり返る
あの爆豪くんですら目をくわっと開けて焦凍くんを見て固まってた
勿論私も思考停止

その静けさを壊したのは峰田くんの悲鳴に近い叫び声
峰田くんだけじゃない、女子もみんなイケメンの破壊力抜群のセリフに叫んでいる

「轟テメェそれ無自覚でやってんのか?!」

「何のことだ」

「無自覚だコイツゥウウ!!!」

騒々しい一同
そんな中、恥ずかしすぎて焦凍くんの方を見れない私は誤魔化すようにケーキを口に放り込んだ

「(無自覚天然ってほんとたちが悪い!!)」









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