ヒロアカaqua


▼ 08



2月末


「行ってきます」

玄関まで見送りに来てくれた両親にそう告げて家を出た私は胸の高鳴りを抑えながら目的地へと歩みを進めた
今日は雄英高校の一般入試、実技試験の日だ








大きなホールに集められて受験者たちが一斉にガイダンスを受ける
想像通りとんでもない人数の受験生がこのホールに集められていた

「(大丈夫だって思ってても緊張はする…!)」

この日のためにできることは全部やった、あとは落ち着いて受けるだけだ

定刻になり、舞台にプロヒーローのプレゼントマイクが現れた

「今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!」

多分ようこそーって返事がほしいんだろうけど、受験生たちは静まり返っている

「こいつあシヴィー!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼントするぜ!!アーユーレディ!?

YEAAAAAAHH!!!!!」

一人で盛り上がっているプレゼントマイクに余計に静まり返っている受験生
とんでもないライブを見せられている気分と緊張が入り混じって何とも言えない

「入試要項通りリスナーにはこの後10分間の模擬市街地演習を行ってもらうぜ!!
持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場に向かってくれよな!!OK!?」

どうやら同じ中学の人とは会場は別らしい
同校同士で協力させないことが目的だと思う
凝山からは私だけなのでそんな心配はいらないけれど

「演習場には仮想ヴィランを3種多数配置してあり、それぞれの攻略難易度に応じてポイントを設けてある!
各々なりの個性で仮想ヴィランを行動不能にし、ポイントを稼ぐのは君たちの目的だ!!
勿論他人への攻撃などアンチヒーローな行為はご法度だぜ!?」

この試験のポイントはどの仮想ヴィランが何体配置されているのかを知らさないことだと思う
他の受験生より素早く状況を飲み込み、それに対応出来るかが鍵になりそうだ

「質問よろしいでしょうか!?」

スっと立ち上がったのは聡明中学のいかにも真面目そうな男の子

「プリントには4種のヴィランが記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態、我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!」

確かに手元の資料に仮想ヴィランは4種類記載されている
先程プレゼントマイクは3種類と言った、よく聞いてるなあの子

「ついでにそこの縮毛の君!先程からボソボソと…気が散る!物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」

名指しで注意された男の子はすっかり萎縮してしまったようだ
なにもこんな大勢の前で怒らなくても…

「オーケーオーケー、受験番号7111くんナイスなお便りサンキューな!
4種目のヴィランは0P!そいつは言わばお邪魔虫!スーパーマリオブラザーズやったことあるか?あれのドッスンみたいなもんさ!各会場に1体!所狭しと大暴れしてるギミックよ!」

「(ギミック…)」

本当にそうだろうか?
ここは雄英、日本最高峰のヒーロー科の入試でわざわざそんなものを出す?

「俺からは以上だ!最後にリスナーへ我が校の校訓をプレゼントしよう
かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者と!

Plus ultra!!それでは皆、良い受難を!」

プレゼントマイクのプレゼンが終わり、受験生たちがぞろぞろと移動し始めた
ジャージに着替えてから自分の受験地の区画に入り軽く準備運動をする

大丈夫、今日までずっと特訓してきた
個性が発現してからずっと高みを目指して努力してきた

「(それに焦凍くんと同じ高校に通いたい!)」

恋愛感情を自覚してからというもの多少ぎこちなさはあるけれどいつも通りを装ってきた
元からイケメンな焦凍くんが3割増しにカッコよく見えてしまうので困る
そんな焦凍くんとの許嫁はいずれ破棄される、それでも好きな人と同じ高校というのは憧れるし3年間また焦凍くんと一緒だとしたら絶対楽しい

「(集中して落ち着いて…)」

そう思い、目を閉じていると透き通るような声が聞こえた

「あの、大丈夫?」

びっくりして声の方向を見ると、そこにいたのはとても可愛らしい天使のような女の子だった













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