ヒロアカaqua


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第3試合

「轟」

「ん」

後ろにいた焦凍くんを呼び止めたのは常闇くん
休憩中に薬をもらって治したらしい

「情けない姿を見せた、後は託したぞ」

「何で俺に」

「ホークス、エンデヴァー、我々先の戦いの英雄に師事を仰ぐ者故にNo.1、No.2の名を背負う責務」

「…ああ」

そんな受け答えをしてからというもの焦凍くんの表情が固い気がする
飯田くんと目配せして眉を下げた

「轟くん!?大丈夫かい!?随分と怪訝な顔だが!」

「そうか?」

「うん!何か悩みでも!?」

「何でもねェ、ありがとな」

そう告げた焦凍くんに何も言えないでいると、尾白くんが感心したような声を出した

「轟、表情そんな変わらないからわかんなかったな」

「委員長たる者クラスの皆を見て悩む者には手を差し伸べるんだ!」

「いやにハイだな、いつもだが」

障子くんの言う通りとっても元気に見える

「最近ん兄さんの経過が良好でね!」

「わ、良かったね!」

ヒーロー殺しの一件でヒーロー活動を退任せざるを得なくなったお兄さん
その怒りから単身挑んだ飯田くん
もうあれから数ヶ月が経ったけれど飯田くんは前を向いて進んでいる

「ああ!俺もまたインゲニウムの名を背負う者、皆を見るということは皆からも見られているということ
皆に見せてやろう!継ぐ男の気概を!!」

カポっとヘルメットを被った飯田くんに「おーっ!」と腕を上げた




スタート直後、B組の陣地の方から聞こえたのは倒壊音

「向こうの意図はおそらく正面戦闘」

「やるぞ!A組チーム3!!!」

駆け出して音がする方へ向かう

「(それにしても鉄哲くん、さっきの被害最小限にって話聞いてなかったのかな…)」

終わったら先生に怒られるだろうなと思っていると、「くしゅっ!」っという音が聞こえた
どうやら焦凍くんらしい

「大丈夫かい!?キミでも風邪をひくのか!?」

「いや…多分大丈夫だ」

きっとエンデヴァーが噂でもしているんだろう

「そろそろ着くぞ、手ハズ通りに!広がるよ!」

「うん!」

散会した私たち
轟音が響く場所にいたのはB組

「鉄哲くん!相手が馬鹿ショージキに来てくれるハズナイデショ!」

「そうよ!トラップと思われるわ!!」

「いや!俺が向こうなら行くね!
障子で状況把握、轟を軸に攻めるのが1番強い…ひとかたまりでこんな開けたとこいたら…」

こちらの動きを読んだ骨抜くんに口角が上がる
物陰に潜む私たちの眼下には氷結をぶっぱなした焦凍くんの姿

視界を遮る氷塊じゃないそれにフッと口角が上がる

「氷の方向に轟!他は!!」

骨抜くんが地面を柔化させてても氷結で覆ってしまえば問題ない
動きが鈍ったところを一網打尽にする

その作戦のため飛び出したのは機動力の高い飯田くん
レシプロバーストで一瞬で詰め寄る

「来いやあ!!!!」

鉄哲くんは受け止める気だ
けれどたどり着く前に骨抜くんの柔化で氷結が柔らかくなってしまった

「氷結ぶっぱは安い手じゃん、もっと非常に火攻めか海色の津波で来られたら打つ手なかったのに」

「サンキュー柔造!反撃が柔軟だぜ!!」

氷結で身動きが取れなくなる前に発動した柔化
予想外のことに頭を回す

「うわっ!!」

聞こえた尾白くんの声
どうやら足場も柔化されているらしい

「尾白は俺が相手する!!」

回原くんが尾白くんに飛びかかる
それを見て飛び出そうとするけれど、飯田くんが柔化された氷結に沈んだ

「踏みしめる土台あってこその脚力、氷の下の地面も柔いぜ
あんたはとても面倒だ、沈めて固めて放っとく」

「俺たちの連携を断つ気か!!おのれヴィラン!狡猾なり!!!」

と、その時角取さんの角が障子くんを捕らえた

「捜索役の障子クンは安全圏にいるとケイカーイです!そう!例えば轟クンのバックとカネ!」

吹き飛ばされた障子くん
そちらに気を逸らした焦凍くんの氷結をブチ破った鉄哲くんが焦凍くんを押さえ込んだ

「角ダッシュハンマー!!!!てめェよォオ!冷てェんだよなァオイ氷がよォォ!!!
てつてつがきんきんだよ轟ィ!!ステゴロでてめェよォなァ!?俺に勝てるかァ!!?」

全員が分断された

「(まずい)」

せめてこの場にいる焦凍くんと障子くんだけでも守らなきゃ
そう思って咄嗟に飛び出し、宙から角取さんと鉄哲くんへ狙いを定める

「海色サン!!?」

ずっと気配を消していた
そんな私が急に現れたんだから驚いたんだろう
角取さんの目がこちらへ向けられる

「スワロウストライク!!!!」

一瞬でカタがつくはずだった
けれど私の放った水鳥は闇に飲まれる

「アナタの相手はアタシよ!!」

小さな闇
まるで13号のブラックホールのような個性を扱う彼女は闇舞あこ

そしてその個性は…

「雫ッ!!!」

焦凍くんの声が聞こえた瞬間、闇舞さんの小さな闇から放たれたのは私が放った水鳥
それがドッと私を吹き飛ばす

「ナイス闇舞!!」

「ええ!このまま距離を取るわ!」

吹き飛ばされた私が今度は氷結で押し出された
すぐにそれを消そうとするけれど消えない氷結

「(何で、だってこれは氷のはずじゃ)」

押し出された先は全員から距離がある地点
パリィンと砕けた氷結の向こうから闇舞さんが姿を現す

「唄ちゃんと仲良くして…許せない!」

「…え?」

そう叫んだ彼女はムッと頬を膨らませてこちらを睨んできた








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