ヒロアカaqua


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第2試合


「それでは頑張れ拳藤!第2チーム!!スタート!!!!」

ブラドキング先生の偏向実況に呆れつつも、作戦会議を中断しモニターに目を向ける

「拳藤ってB組でどういう立ち位置なん」

瀬呂くんの問いに答えたのは鉄哲くん

「ありゃあやる奴だぜ!なんてって委員長だからな!
頭の回転早くてとっさの判断も冷静だ!それでいてクラスをまとめる明朗な性格!
あれがいなきゃ今頃みんな物間に取り込まれてら!
B組の姉貴分、それが拳藤一佳という女だ!!」

それを聞いて正直にすごいって思った気持ちと、へえって少し拍子抜けした気持ちが生まれた
理由は単純明快
百ちゃんだって頭の回転は早い、いつだって冷静、副委員長でもある
何一つ劣っていない

「とっさの判断か…八百万のオペレーションがうまく刺さるかどうか…」

隣で焦凍くんが告げるので彼も同じ気持ちなんだと察する
前みたいな嫉妬はない、焦凍くんも百ちゃんも互いがどういう人かを正しく理解している

「(信頼、かあ)」

私もあの日、神野で爆豪くんが拘束具を外された瞬間飛び出すことも予想できた
それはきっと一種の信頼なんだろう

そう思って焦凍くんをぼーっと見ていると、ハッとした彼が「1番はお前だからな」と告げたのできょとんとしてしまう

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ああ、なるほど、また嫉妬してると思われたのか

「うん、わかってる」

周りのみんなには聞こえないように小声でそう言えば、焦凍くんの表情が和らいだ

始まった第2試合、先に動いたのはA組
常闇くんのダークシャドウが迫る

けれど黒色くんがダークシャドウの中に入ってしまった

おそらく様子見で送り込んだダークシャドウ
それを逆手に取ったB組

常闇くんの元へ戻ったダークシャドウは彼を攻撃する
そして黒色くんが姿を現したが再び影に消えてしまった

『常闇踏陰、おまえは俺が穿つ』

『良いだろう、ホークスのもとで編み出した技"黒の堕天使"で受けて立つ』

中二病全開な2人に遠い目をしながら見守る

「第1戦目と同じ展開…」

「裏の裏か」

2戦連続の単騎突撃は流石に想像しなかっただろう
上手に組み立てている

「(拳藤さんやるなあ)」

黒色くんが狙うは常闇くんのみ
そう見えたが、彼は影を駆使して青山くんのマントを掴んだ

『ヘ…ヘーーーーゥプ!!!』

一瞬で連れ去られた青山君
けれど常闇くんはダークシャドウを纏うことで飛んで追いかける

なるほど、ダークシャドウは常に浮遊状態
常闇くんを抱えて移動しているだけだけれど、機動力は間違いなくカバーできる

青山くんを取り返した常闇くんは彼を抱えたまま飛ぶ

『青山さんネビル・ビュッフェを!常闇さんは自由飛行!!』

百ちゃんが指示を出す
青山くんのレーザーで影が動きまわり、黒色くんが弾き出された

『いました葉隠さん!!』

『よっしゃー!捕まえるぞー!!』

『想定外の事態など、私すでに想定内ですわ!!』

自信ありげな百ちゃんにホッとする
と、次の瞬間、百ちゃんの体にポムっとはえたキノコ

そして一瞬でキノコは辺り一帯を埋め尽くした

「うっわぁ…」

虫ではないけれどキノコだらけなのも恐怖を感じてしまう

「(それにこの状況…拳藤さんは予測してたんだろうな)」

二段構えのオペレーションに感心していると、障害物を突き破ってきた巨大な文字がA組に襲いかかる
吹出くんの個性だろう、擬音を具現化できるとは聞いていたけれど…

それに今の文字の壁で百ちゃんだけが分断されてしまった

『ブレーンを切り離した!あとは力で攻め切る!!』

『盾を!!』

即座に作った盾を易々と弾いた拳藤さん
体勢を整えようとする百ちゃんに更に攻撃を畳み掛ける

『格闘分野に持ち込めばこっちにも勝機はあるってね!考える時間は与えない!』

盾を作り続ける百ちゃんは防戦一方

「これがうちの拳藤さんよ!!」

鉄哲くんが嬉しそうにそう告げるけれど焦凍くんは顔色を変えずモニターを見たまま口を開いた

「最善手かはわかんねェな」

「え!!?」

「八百万を警戒しての分断なら見誤ったかもな」

「え!?」

ぎょっとする鉄哲くん
現にモニターの向こうの百ちゃんの口角が上がっている

「あいつを警戒すんなら4人の総力でまっさきに潰すべきだった」

作り出したのは大砲

『時間が掛かりますの、大きなものを創るのは!』

大砲をぶつけるように向きを変えた百ちゃん
間一発で避けた拳藤さんはそれが自分を狙っているものではないと悟った

『発想が物騒だな!!』

彼女の拳が百ちゃんにヒットするも、撃ち上げられたものは上空に飛んでいく
それを受け取ったのは常闇君

青山くんは投獄されたらしい
けれど百ちゃんからの荷物を確認した常闇くんは全てを理解し敵地へ向かった

一方B組陣地

『向こうは私たちの場所わかってないからこのままみんなでキノコ攻め!』

『お…おう…な、なァ小森…場所わかってない?こっちに向かってきてるぞ!?』

常闇くんが身につけているのはサーモグラフゴーグル
この入り組んだ地形で相手の先手を取れる代物

その様子を見ていた吹出くんが慌てたような顔をする

『オイオイ常闇が小森の方へまっすぐギュンだぜ!?』

『君の方にもね!B組にキノコはえないのへんだと思ってた!』

吹出くんの背後を取ったのは透ちゃん
その体にはキノコは生えていない

先ほど百ちゃんが撃ち上げた袋に滅菌スプレーも入っていたんだろう

『居所さえわかればこちらの間合い、逃れ潜むことすら許されぬ疾風怒濤
ホークス曰く疾さは力に勝るという』

常闇くんの攻撃が小森さんに直撃する

『小森!!』

黒色くんが潜むための黒を探す
それすら察したように常闇くんは自分のマントで彼を包んだ

『移動のしようがなければ恐るるに足らず…投獄に…ゴホッ!!』

急に咳き込み始めた常闇くん

『ごめんね、可愛くないから封じてたけど負けそうなのにやらないのもダメキノコだもん』

「…気管に…っ!」

いつの間に仕込んだのか
常闇くんが苦しそうに咳き込みその場に倒れ込む
訓練だからと抜かった、それ故の機器的状況だ

それに透ちゃんの方も優勢だったけれど拳藤さんの巨大な手が彼女を握った

百ちゃんを気絶させることに成功した拳藤さん
けれど大砲付きで絡み付いた彼女はB組のブレーンである拳藤さんを足止めするためにわざと大きな大砲を出したんだ

「すご…」

目の前のことよりもずっと先を見据えてる百ちゃん
チームのために何が最善かを考えている彼女の成長に驚かされる

「また弱気になんねェといいが…」

「大丈夫だよ」

モニターの向こうの百ちゃんを見つめたまま告げれば焦凍くんがこっちを見たので微笑む

「大丈夫、百ちゃんはちゃんと受け止められるよ」

そりゃあ負けたことへの責任感は感じるだろうけれど、それを次の糧にできる
そんな気がしてならないのは私だけじゃないはずだ

「第2セット!4-0でB組勝利!!」

嬉しそうなブラドキング先生

「被害がえげつないですね」

この状況に少し困惑している心操くん
そりゃあ初めてこんな光景をみたら誰だって驚くだろう

「ヒーロー科の訓練とはこういうもんだ、しかしちょっと壊しすぎたな」

「吹出!拳藤!わかってるとは思うが被害は最小限に!!」

顔を見合わせた両先生は頷く

「ステージの移動も兼ねて」

「少し休憩狭むか」









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