ヒロアカaqua


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第1回戦

スタート直後先に動いたのはB組

塩崎さんを警戒し狙いを定めた時、梅雨ちゃんと切島くんを襲ったのは宍田くんの一撃
モニターを見ている私たちにも音声は聞こえている

『口田氏の索敵に補足されるのは折り込み済みですぞ
塩崎氏を最も警戒するであろう事も!彼女を囮に私は這い寄り近づく!
準備をさせれば上鳴氏の独壇場となる可能性が高い、それ故愚直に攻め入る!
私は鼻が利くのですなァアアアア!!!』

宍田くんの読みはいい、すかさず彼の背中に乗っていた円場くんの個性で口田くんが捕われる

『音を一切通さない独居房だぜ!』

まさに絶対絶命
けれど心操くんが動いた

『よっしゃ蹴散らせ宍田ー!!!』

『任されましたぞォオオ!!!』

『おつかれさまでしたァァーーーーー!!!!』

叫ぶ上鳴くん
けれど目の前の宍田くんは動かない

「今の…心操くんだ…!」

わあっと唄ちゃんが顔を輝かせた
その通りだったようで心操くんがつけているマスクは変声機らしい
それで円場くんの声を出したんだろう
それに宍田くんは応えてしまった

心操くんが捕縛布を繰り出すけれどすぐに円場くんが口田くんと同じ檻を作り出し彼を拘束した
その隙に宍田くんも我に返り上鳴くんを弾き飛ばした

「痛そう…」

ゾッとしている響香ちゃん
宍田くんも上鳴くんに触れたことで感電している
今度はその隙に円場くんを梅雨ちゃんが拘束した

『よっしゃ!牢まで持ってけ梅雨ちゃん!!』

駆け出した梅雨ちゃん
その背後に迫るは感電を振り解いた宍田くん

『ウッソォ!?痺れてよ!!』

けれど宍田くんを行かせまいと口田くんと切島くんが立ちはだかる
その2人の隙間を個性を解除して擦り抜けた宍田くんが再び個性を発動

「うっま…」

唄ちゃんの言う通りかなり手慣れた使い方をするため苦戦を強いられるA組の面々
宍田くんは塩崎さんのいる方向へ切島くんを投げ、残った口田くんの顔面を鷲掴みにする
すぐに上鳴くんと、円場くんを投獄し帰ってきた梅雨ちゃんがフォローに入るけれど宍田くんは彼を連れて投獄に向かった

A組側は上鳴くん、梅雨ちゃん、心操くんの3人
B組は宍田くん、塩崎さん、鱗くんの3人
けれど投獄数はA組の方が多いのでB組が優勢

「早くも削りあい!宍田・円場の荒らしが覿面!!これは残人数は同じでも精神的余裕はB組にありか!?
我が教え子の猛撃が遂に!!A組を打ち砕くのか!!?」

偏向実況をするブラドキング先生
生徒思いと聞いてるし、B組が活躍するのが嬉しいんだろう
けれどあまりにも偏っているので苦笑いしてしまう

「宍田がヤベェ、めちゃ強くね?」

「鼻の精度がシャレにならねえ」

「てゆーかほんっと個性の使い方上手だよねえ」

4番チームと一緒に盛り上がる唄ちゃん
その通りで状況は圧倒的にB組優勢だ

暫しの作戦会議後、動いたのはA組の方

どうやら宍田くんに上鳴くんのポインターが付着しているらしい

『蛙吹氏が3人向かってきてる!!!』

そう言った宍田くんにモニター越しに見ている私たちは不思議に思えてしまった
だってどう見ても梅雨ちゃんは1人で向かっているのは上鳴くんと心操くんと3人

そんな3人を迎え撃つように塩崎さんの茨が向かっていく

『位置を!黙示録の獣よ!』

『十時十二時二時扇状に展開!全員地上を走り接近中!
あとその呼び方やめて頂きたい!私"ジェボーダン"!』

『3人とも接近て位置バレてるよな…そんなサーチ個性向こうにいたか?
…おい黙示録、おまえ…ホラ!何かついてる!』

ようやくポインターに気がついたB組一同
けれどその時塩崎さんの茨が誰かを捕えたらしい

『引きずり出します!』

『誰が来るかわからない!下がろう宍田、上鳴の場合万が一が』

姿を現したのは上鳴くん

『ハイ正解はずれクジー!3人ご一緒仲良く痺れ…な!?』

個性を放つ前に塩崎さんの茨が上鳴くんを囲む
そして塩崎さんの前には茨の盾も生まれた

対応は万全

『なんつって』

かに見えた
けれど上鳴くんの電撃はポインターとの距離が10m以内なら一直線に収束される

宍戸くんへ向かった電撃
しかし間一発のところで鱗くんがポインターを彼から引き剥がした

『次だ!早くツル張り直せ!』

『ええ、宍田さん位置を』

はたと動きが止まった塩崎さん

『おい!今のは俺の声じゃねえよ!!』

心操くんだ
その連携に少し身震いする

『宍田、敵の位置を!』

鱗くんが問うけれど宍田くんは指差しするだけ

『指差し!?喋れよ疑心暗鬼なりすぎ!そっちに1人いるのか!?オイ!喋れよ!!
アイヤー…口元見てりゃ安全だろが!』

鱗くんが塩崎さんを起こそうとするけれど、それよりも早く彼女を持ち上げたのは梅雨ちゃん

『そこからじゃ鱗銃も当たらないわ』

『宍田!蛙吹だ!隠れた!!心操より蛙吹を!位置を!!』

けれど宍田くんは話さない
心操くんの個性で連携が乱されるB組

その隙を突いて透過していた梅雨ちゃんは鱗くんへ強烈な蹴りを入れた

一方で宍田くんも心操くんへ迫っていた
けれど捕縛布を使用し、宍田くんの頭上のパイプを落下させる

『避けろォオ!黙示録ゥ!!!』

梅雨ちゃんへ投げ飛ばされた鱗くんが背後から飛んでくる
けれど心操くんの個性と判断した宍田くんは振り返らない
結局2人はゴンッとぶつかり、その間に梅雨ちゃんと心操くん、そして彼に操られている塩崎さんによって全員もれなく投獄

「第1セット…ぐぬぬぬぬ!A組+心操チームの勝ーーーー利!!!!」

悔しそうなブラドキング先生
帰ってきた第1チームの面々に相澤先生は無表情で告げた

「反省点を述べよ」

「相手にケンカする気がねェと俺の個性は役立てづれぇ、本番だったら捕まった時点でブッ殺されてる」

「虫たちにもっと細やかな指示出せるように…」

「俺は良かったっしょ!?ホレるっしょ!?良いよホレて!大丈夫
恋なんてのはコントロール出来るものじゃないんだ良いよ大丈夫!!」

「2人を失ったこと、誰も欠けることなく勝ちたかったわ…バタバタしちゃった」

悔しそうな切島くん、しょんぼりしている口田くん、何故か自信満々な上鳴くん、しんみりしている梅雨ちゃん
そして心操くんは捕縛布を巻きなおしながら悔しそうに口を開いた

「教わったことの1割も実践できなかった…悔しいです」

「いきなり出来たら苦労しない、それを使いこなすのに俺で6年かかってる
その悔しさを忘れず次も臨め」

「はい」

インターンで本物の現場を体験した切島くんと梅雨ちゃんの気持ちはとてもわかる
ミス1つが命取りになる

あの時個性を消されて落下してきた唄ちゃんを見て血の気が引いた感覚が蘇ってきて身震いした

「切島は正面戦闘を誘えるセットアップを意識する事!
口田は自覚通りだ搦め手を考えていけ
上鳴!序盤の緩み!仲間がやられないと力を発揮できないのか?
蛙吹、ミスよりもミスをカバーできる迅速な対応を」

的確に講評していく相澤先生
B組の強さを目の当たりにして待機メンバーにも緊張が走った

「俺たちも煮詰めよう!」

飯田くんの言葉に頷く

「轟を軸に動こうか」

「俺か」

「海色でもいいけど、どうする?」

ふと考えたB組のメンバー

「(確か闇舞さんって…)」

チラリと見た闇舞さんは唄ちゃんを見てキラキラと目を輝かせている
けれど私の視線に気がついた瞬間、キッとこちらを睨みつけて顔を逸らした

「(あー…めちゃくちゃ嫌われてる…)」

多分あの子は私を狙ってくるだろう
そう思って3番チームの面々に「焦凍くん軸で大丈夫だと思うよ」と告げた







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