ヒロアカaqua


▼ 106



11月下旬


集まったのは運動場γ
工場地帯を模した訓練場、開けた場が少なく、視界・足場の悪さに定評があるここは以前救出レースをした所だ

そしてみんなのコスチュームは冬仕様となっている

「唄ちゃん袖可愛いね」

隣にいる唄ちゃんのコスチュームは袖が拡がっており、レースがついている
ギルティルージュにはレースなしでと依頼したけれど残念ながらつけられたらしい

「くっ…私の周りはどうしてこんな身勝手な大人ばかりなの…!」

お母さんとギルティルージュのことを言ってるんだろう、悔しそうな唄ちゃんに苦笑いする

私も袖がついたくらいで他に変更点と言えば頭の王冠をティアラに変えたくらいだ
これもデザイナーさんの趣味らしい、特に機能はないとか

「入学時と比べるとだいぶ皆のコスチュームも様変わりしてきたな」

「飯田それで夏耐えぬいたのすごいよな」

砂糖くんの言う通り飯田くんのコスチュームはとっても暑そうなので感心してしまう
とは言え、季節が冬に近づくにつれて私も本調子になっていくので今の環境はとてもありがたい
I・アイランドの頃や林間合宿の頃が最高にしんどかったっけ

「かっちゃんも変えてる!」

「あーーーー!?文句あんなら面と向かって言えやクソナードが!!」

「そのスーツ防寒発熱機能付き?汗腺が武器のかっちゃんにとってとても理に敵った変更で素晴らしいと思う」

「褒めてんじゃねーーー!!!」

じゃあどうしろと言うんだと呆れている私の隣では唄ちゃんが微笑ましそうに2人見ている
あれは唄ちゃん曰くじゃれているらしい、驚愕した

「緑谷が1番変化激しいよな、最近また何か付いたし」

「やれることが増えてきたからさ、すごいんだよこのグローブ
実は既に2代目なんだけど発目さん強度の調整までしてくれて!」

その会話を聞いていた時、突如お茶子ちゃんが「去れ!!!」と叫び自分の顔面を殴った
ギョッとするA組一同、けれど唄ちゃんと私は顔を見合わせる
今の会話の流れ、そして前から気になっていたお茶子ちゃんの恋

「もしかして」

「そういうこと?」

閃いてしまったので2人でにっこりと笑っているとまた別の声がする

「おいおい、まーずいぶんと弛んだ空気じゃないか僕らをなめているのかい?」

そちらを向けばB組の面々

「なめてねーよ!ワクワクしてんだ!!」

「フフ…そうかい…でも残念、波は今確実に僕らに来ているんだよ
さあA組!!!今日こそシロクロつけようか!!?」

思いっきりのけ反った物間くんに遠い目をする
もうほんと毎度毎度絡んでくるなあ

「見てよこのアンケート!文化祭でとったんだけどさァーア!
A組ライブとB組超ハイクオリティ演劇どちらが良かったか!見える!!?」

切島くんが受け取った紙にはアンケート結果が書かれている
ていうかぼく調べって書いてあるけどこれ正確なの?

「2票差で僕らの勝利だったんだよねえ!!
入学時から続く君たちの悪目立ちの状況が変わりつつあるのさ!!
そして今日!AVSB!!初めて合同戦闘訓練!!僕らがキュ!!」

「黙れ」

「ものまァ!!!!」

容赦無く物間くんの首を捕縛布で締めた相澤先生
隣にはブラドキング先生もいる

「今回特別参加者がいます」

「しょうもない姿はあまり見せないでくれ」

その言葉に全員が首を傾げる
するとひょこっと顔を出したのは体育祭で見た心操くんだった

「ヒーロー科編入を希望してる普通科C組、心操人使くんだ」

「「「「あーーーーーー!!心操ーーーー!!」」」」

現れた心操くんは体操服に相澤先生の捕縛布、そして何やらマスクっぽいものをつけている

「一言挨拶を」

「何名かは既に体育祭で接したけれど拳を交えたら友達とか…
そんなスポーツマンシップ掲げられるような気持ちの良い人間じゃありません
俺はもう何十歩も出遅れてる、悪いけど必死です
立派なヒーローになって俺の個性を人の為に使いたい、この場の皆が超えるべき壁です

馴れ合うつもりはありません」

そう告げた心操くんの目は緑谷くんを捉えている
そんな彼を見て唄ちゃんは口角を上げた

「ギラついてる」

「引き締まる」

「初期ろきくんを見ているようだぜ」

瀬呂くんの言う通り、入学当初は焦凍くんもこんな感じだったな

「そうか?」

「「うん」」

自覚なしの焦凍くんに瀬呂くんと頷く

「負けないよ!」

拍手が起こる中、ニッと笑ってそう言った唄ちゃんに心操くんは少し微笑んだ

「(おや…?)」

チラッと爆豪くんを見ればやっぱり眉間にシワが寄っている
一波乱ありそうな様子に私と焦凍くんは目配せした

「じゃ、早速やりましょうかね」

「戦闘訓練!!今回はA組とB組の対抗戦!!
舞台はここ運動場γの一角!!双方4人組もしくは5人組をつくり1チームずつ戦ってもらう!!」

「心操を加えると45名、この半端はどう解決するのでしょうか」

A組22名、B組22名、そこに心操くんが加わり45名
奇数になってしまう

「心操は今回2戦参加させる、A組チーム・B組チームそれぞれ4人組のところに1回ずつ
つまり5試合中2試合は5対4の訓練となる」

「そんなん4人が不利じゃん!」

「ほぼ経験のない心操を4人の中に組み込む方が不利だろ、5人チームは数的有利を得られるがハンデもある」

透ちゃんの抗議にさらっと論破していく相澤先生

「今回の状況設定は「ヴィラングループを包囲し確保に動くヒーロー」!
お互いがお互いをヴィランと認識しろ!4人組のところ、および心操込みのチームは4人、5人組のところは5人を捕まえた方が勝利となる!」

シンプルなルール
けれどシンプル故にこの地形をどう活かすかが重要になりそうだとぼんやり考える

「双方の陣営には「激カワ据置プリズン」を設置、相手を投獄した時点で捕まえた判定になる」

根津校長お手製なんだろう、ファンシーな檻が用意されており遠い目をした

「自陣近くで戦闘不能に陥らせるのが最も効率的…しかしそう上手くはいかんですな」

「4人捕まえた方…ハンデってそういうことか?」

「ああ、慣れないメンバーを入れること
そして心操を入れた5人チームでも4人捉えられたら負けってことにする」

なるほど、だからさっきああいう言い方をしたのかと納得していると爆豪くんがケッと言った

「お荷物抱えて戦えってか、クソだな」

「ひでー言い方やめなよ!!」

「いいよ事実だし」

「徳の高さで何歩も先行かれてるよ!!」

爆豪くんの嫌味をものともしていない心操くん
唄ちゃんが爆豪くんに「ちょっと、言い方ってものがあるでしょう!」と怒っている姿を心操くんはじっと見ている

「(おやおや…???)」

何やら不穏な展開に再び様子を窺っていると、三奈ちゃんが何かを察したのか嬉しそうにしている

その後クジを引いてチーム分け

1番
A組切島くん、上鳴くん、口田くん、梅雨ちゃん
B組塩崎さん、宍田くん、鱗くん、円場くん

2番
A組常闇くん、透ちゃん、百ちゃん、青山くん
B組小森さん、拳藤さん、黒色くん、吹出くん

3番
A組尾白くん、焦凍くん、障子くん、飯田くん、私
B組角取さん、骨抜くん、回原くん、鉄哲くん、闇舞さん

4番
A組砂糖くん、瀬呂くん、響香ちゃん、爆豪くん、唄ちゃん
B組鎌切くん、取蔭さん、泡瀬くん、凡戸くん、豹牙さん

5番
A組峰田くん、三奈ちゃん、お茶子ちゃん、緑谷くん
B組物間くん、小大さん、庄田くん、柳さん

そして心操くんはA組1番とB組5番のチームに入る

「スタートは自陣からだ、制限時間は20分
時間内に決着のつかない場合は残り人数の多い方が勝ち

じゃ第1試合…スタート!!!」

初の合同訓練の戦いの火蓋が切って落とされた








prev / next



- ナノ -