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寮の前にて練習中のダンス隊
「ここはこう!」
「わあ!雫ちゃん上手だね!」
「本当?嬉しいなあ」
三奈ちゃんが男子メンバーを指導中に女子メンバーへ振り付けを教える
曲はHero tooとのことなので大体の振り付けは決めたけれど、細かい演出等は演出隊に任せることにしているので今は待機だ
ふと茂みが揺れたような気がしてそちらへ目を向けると通形先輩の姿
そしてちょこんと立っているその子はエリちゃん
「エリちゃん!」
緑谷くん、お茶子ちゃん、梅雨ちゃんと一緒に駆け寄る
「素敵なおべべね」
「かっかっ可愛いー!」
あの事件以来会うのは初めて
と言ってもエリちゃんは私のことはわからないだろう
ギャグが滑って俯いている通形先輩の後ろに隠れたエリちゃんは小さく会釈した
「校長から許可が下りた
びっくりしてパニックを起こさないよう一度来て慣れておこうってことだ」
事前にエリちゃんが文化祭に来るかもという話は聞いていたので嬉しくなって目線を合わせるように屈む
「エリちゃん、ようこそ雄英高校へ」
にこっと微笑みながら告げると、エリちゃんがおずおずと顔を覗かせてくれた
「おなじ色…」
その言葉に一瞬迷うけれど、髪の毛のことかと納得して一房摘んで持ち上げた
「おそろいだね!」
今度こそ隠れてしまったエリちゃん
詰めすぎたかなと思うけれど、通形先輩曰く照れ屋さんとのこと
その後先輩は緑谷くんを誘って学校内を回ることにしたらしい
それから1週間後
教室にて緑谷くんに三奈ちゃんが「クビです」と通告した
いや、クビではないので苦笑いして見守る
「クビっていうか厳密には演出隊からの引き抜きです!人手が足らんのだと!」
「何故…?僕に…エリちゃんに…踊るって…言っちゃったよ」
悲壮感ダダ漏れな緑谷くんの誤解を解くために説明した
「フロア全体に青山くんを行き渡るようにしたいんだって、そんな大掛かりな装置もないし人力で動かせるパワーが欲しいんだってさ」
「青山くんが行き渡るって何!?」
ギョッとした緑谷くんに青山くんがどこからともなく現れた
「僕、序盤でダンサーからミラーボールに変身するんだ☆
新技☆ネビルビュッフェ飛距離も抑えられるんだ、僕の為にある職☆
同じタイミングで離脱して協力してほしい」
「つまりクビとは出番が削れるってことね」
内容を理解した緑谷くんに切島くんがパンっと両掌を合わせた
「ワリィ!おめーの練習を無駄にしちまうが…どうか頼まれてくれねェか!?更にいいもんにしてェんだ!」
「私からもお願い」
爆豪くんほどじゃないけれど良いものにしないといけないという気持ちはある
だからこそ切島くんと同じように両掌を合わせた
「んん…出番あるならエリちゃんに嘘ついたことにはならないし…良いものにするためならわかった!」
「メルスィ」
「ありがとう!」
「ありがとう漢だおめェは!!」
「緑谷最近青山と仲いいしきっと良いよ!」
授業後は毎日練習やミーティングを行なっている
本番まではみんなが時間を練習に費やしていた
寮に戻っても同じように、お風呂上がりに共同スペースにて三奈ちゃんと演出隊の面々と共に振り付けを確認する
「ここで男性陣がはけるから峰田をセンターに女子で囲む感じで」
「スポットライトってピンクっぽくできる?」
「フィルムがあるか確認しとく」
「ありがとう」
禪院統一のダンス以外にもパフォーマンスのようなものを考えているのでその際にどう動くのか演出隊の意見も合わせて考えているこの時間は結構好きかもしれない
打ち合わせも終わり部屋に戻ろうとする私の目に留まったのは共同スペースの端で打ち合わせ中の唄ちゃんと響香ちゃん
2人は毎日遅くまで打ち合わせをしていて誰が見ても頑張ってくれていた
「舞羽も耳郎もすごいよね」
声をかけてきた三奈ちゃんに頷く
みんながみんな頑張って、それが合わさっていいものになる
「三奈ちゃん、まだ時間ある?」
「え?」
「もうちょっとだけ煮詰めない?私の部屋で」
それを聞いた三奈ちゃんはニッとはにかんで大きく頷いた
「よーし、やるぞー!」
「おー!」
2人には負けられない、私たちだって頑張ってるんだから!
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