▼ 全ての始まり
※爆豪視点
あれはまだ俺たちが5歳になってすぐの頃
幼稚園で出会った唄は弱虫ですぐに泣くような奴だったのに、いつの間にか俺やデクに負けじと食らいつく強気な性格になっていた
「かっちゃん!またいずくんのこといじめてたでしょ」
「別にいじめてねーよ」
「嘘、いずくん泣いてたよ」
「すぐ泣くんだよなアイツ」
面倒くせーなとため息をつくと、唄が頬を膨らませてこっちを睨んでくる
全然怖くねーよと思いつつもテキトーにあしらおうとした時、公園に小学1年生の奴らが入ってきた
そいつらはここら辺で有名な悪ガキで、嫌な予感がした俺はすぐに唄を連れて公園の出入口に向かった
「うわ、すげー異形型じゃん」
横を通り過ぎる時に聞こえたその声に唄の顔色が曇った
異形型の個性はどうしても世間から差別される、別に唄の羽は異形っていうようなおどろおどろしい感じはしないけど悪ガキたちにとってはいいおもちゃを見つけたという感じだったんだろう
すぐに行く手を阻まれて唄の羽をジロジロと見てはニヤニヤしている
「俺異形型だけはマジ勘弁だわー」
「それな、だって気持ちわりーもんな」
ゲラゲラ笑うそいつらを睨みつけた俺は手のひらでバチバチと爆破を起こす
「どけよ」
「は?なんだよガキのくせに」
「お前らこそガキみてーなことして恥ずかしくねーのかよ」
俺の言葉にそいつらは顔を歪めた
たった2個、それでも子供の頃の2歳は結構変わると思う
それでも俺は唄が傷つくのが嫌で喧嘩を売り、見事惨敗した
「ひっく…ぐすっ…」
ボロボロになって仰向けに倒れてる俺の傍で泣きじゃくる唄
夕焼けに染まる空が唄の金髪を照らしていつもと違う色に見えてくる
「(全然気持ち悪くなんかねーじゃん)」
唄は自分の羽が好きだって言ってた
お母さん譲りの羽だと嬉しそうに話していた
「(異形型だからどうとか心底くだらねぇ…羽があるってかっこいいじゃねーか、空飛べるのってすごいじゃん)」
何で唄が傷つけられなきゃいけないのかわからなくて売った喧嘩
複数人の小学生相手には流石に敵わなくて、殴られたところが痛い
「…何でお前が泣いてんだよ」
「だってぇ…ぐすっ…かっちゃんが…!」
涙でぐっちゃぐちゃの顔をしてる唄に呆れて立ち上がる
帰ったら母ちゃんに怒られっかなと考えて帰路につくと、唄がめそめそ泣きながらついてくる
家に着いたら案の定母ちゃんに怒鳴られたし、唄が泣いてたせいで勝手に勘違いした母ちゃんの怒りは余計にヒートアップしてしまう始末
「勝己!アンタ唄ちゃんを泣かせて!!」
「ちげーよ!」
どれだけ違うと説明しても理解してくれないので困ってると唄がかあちゃんの腕を握った
「違うの、かっちゃんは私を守ってくれて…私が弱虫だから…ごめんなさい!」
まだ泣いてるくせに必死に説明する唄の姿に俺は何も言えなくなって、母ちゃんは唄を落ち着かせるために優しく声をかけている
「ほらほら、女の子がそんなに泣くと可愛い顔が台無しだよ」
唄は強い奴だ、俺やデクと出会ってからどんどん強くなるから俺は勘違いしてたのかもしれない
「(そっか…唄って女だっけ)」
俺にとってお気に入りの友達、そう思ってたけどどうやら違うらしい
強くても唄は女、だからいざという時は俺が守ってやらないといけない
そう思うとさっき喧嘩で負けたことも、唄を泣き止ませることができないことも悔しくなる
唄を守ってやらねぇと…そのためにも強くならねぇと…
あれ以来俺は強くなることを追い求め、ヴィランに誘拐された唄を見てヒーローになることを決意する
そして唄もまた、俺やデクを追いかけてヒーローを目指すようになった
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