ヒロアカanother story


▼ 水の国のお姫様1



水鞠、それはこの超人社会で有名な水系個性の家系
私はその家に生まれた

「雫お嬢様、今日は集会がありますのでお着物もこちらにしましょうね」

お世話をしてくれている侍女が持ってきてくれたのは深い青色の着物
水鞠家の集会は年に数回行われているらしくて、私も今年初めて参加することになった

「この着物は水鞠の由緒正しいお召し物なんですよ」

「ふーん」

着付けられながら話半分に聞き流していると襖が開いてお母さんが顔を覗かせる

「奥様、もう少しで終わりますので」

「いつもありがとう」

お母さんも同じ着物を着ているので先ほどの話は本当なんだろう

着付けが終わってお母さんについて屋敷を歩いて行った先には普段は立ち入らない本邸
水鞠一族はそれなりに歴史のある一族らしく、今では複数の家系が所属している
その家系が皆水系個性の持ち主ということで今では歴史がある上に個性としても注目される家らしい

本邸にある大広間にはずらりと並ぶ私と同じ髪色、目の色をした人達…多分50人くらいはいると思う
時折違う色をした髪や目の人がいるのはお母さんみたいに嫁いできた人なんだろう

「雫、こちらにいらっしゃい」

お母さんに促されて座布団に正座すると、私みたいに今日が初参加であろう子供が数人見えた
同年代の子もいると知って気分が上がるけれど今はちゃんとしていなきゃ

その後暫くしてから数名の人が入ってきて前方の一段高くなった場所にある位置に座った
そこにはお父さんの姿もあって水鞠の実権を握る人たちなんだと察する

「皆、よく集まってくれた」

「(あ…おじいちゃんだ)」

いつもはにこにこしているおじいちゃんが真面目な顔をして中心に座っている

「今日の集会は昨今のヴィランについてだ
どうやらこの水鞠を狙っておるとの情報が入っている」

「失礼ですが狙われるのはいつものことですよ」

「その通り、しかし近頃は手段を選ばん狡猾な者も増えていると聞く
水鞠所属のヒーロー諸君は勿論だが、他の者も用心するように」

前にお父さんから聞いた話によると個性の中でも水、火、雷といった旧社会からあるイメージされやすいものは格段の人気があるらしい
個性を悪用する人身売買なんかもあるらしく、水系個性で有名な水鞠家もその対象とのこと
だからよく狙われる、故に力を磨くことは必須だとお父さんから教えられてきた

私の個性が発現したのは半年前
自分の手の平でふよふよと浮く水の塊を見た時にみんなが嬉しそうな顔をしていたのを思い出す

集会はその後も何か難しい話をしていたけれど、私にわかったのは最初の狙われているという話題のみ
大人になるとわかるようになるのかもしれないけど、まだまだ先になりそう

集会が終わってからお父さんがやってきて私を抱き抱えた

「雫、初めての集会はどうだった?」

「うーん…お話難しかったかな」

「ははっ、確かに退屈だったね」

にこりと微笑むお父さんの言葉に近くにいた他の家の人がくすくすと笑った

「流人、お前まーたどやされんぞ」

「やば、今の秘密にしといて」

「いや、親父後ろにいるし」

「え゛っ」

直後、おじいちゃんが私の体を抱き上げてお父さんに鉄拳が振り下ろされた
かなり鈍い音がしたけれど、お父さんは大丈夫かな…?

「流人、お前はほんっっと…手のかかる馬鹿息子だ」

「ははっ!ほら言わんこっちゃねぇ」

「っーー!!もうちょっと早く言ってくれよ」

お父さんを見て笑ってるこの人はお父さんの従兄弟のおじちゃん
兄弟がいなかったからいつもおじちゃんと遊んでたって言ってたから仲がいいって聞いてる

「そもそもお前はもう少しやる気を出せ」

「やる気…ねぇ…」

面倒臭そうな声を出したお父さんがまたおじいちゃんに殴られる
その光景を見ていた私は周りのみんなが笑っている姿を見て口角が上がっていた

水鞠のみんなは好きだ、この先もずっと平和でみんなが笑顔な日々が続けばいい
心の底からそう思っていたんだ









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