12.


奥の部屋は、椅子が幾つも並べられていた


中心にはピアノがあり、そしてその横には平腹さんが。


「お!斬島に白狐!

見ろよ!ピアノだぜ!俺弾けねーけどな!」

『よく会うね、平腹さん』

「なら、何やってるんだ」

「それがさぁ、黒板見た?弾いてくれなきゃ通してくれないってさ。

力尽くでも通れなかったしー、白狐ピアノ弾ける?」

『弾いたことない…ていうか多分手が届かないなぁ』

「だろー?斬島も無理じゃん?詰んだな!」

「誰かに頼めばいいだろう。打開策を考えろ」

「んー……誰いる?」

「佐疫が習っていたはずだ」


佐疫さんの女子力、何なんだろう。


私絶対、女として負けてるよね…汗


「お!さすが!呼んできて斬島!」

「俺が行くのか」

「? そうだろ?」

「………白狐、平腹と一緒に待っていてくれるか?」

『あ、うん!わかった!』

「直ぐに連れてくる。白狐、待っていろ。平腹、白狐に変なことするなよ」

「しねーしー!んじゃ白狐、なんかしとこーぜー」

『何かって…何を?』


斬島さんの後ろ姿を見送る。この光景2回目だな。


「白狐ってーこっくりさんなんだろ?」

『うん、そうだよー』

「こっくりさんって都市伝説だよねー?俺もなんか質問していい?」

『勿論、いいよ』

「そーだなー。んー…無いな!俺質問ないわ!」

『ないの!?』

「ないない!てか白狐さー、斬島にめっちゃ気に入られてんな!」

『へっ、』

「だってさー、多分俺が白狐だったらあんな優しくしないぜー?あいつ。」

『そ、そうかな…どうなんだろ、』

「でもなー、何となく斬島の気持ちも分かるよ俺!!だってお前ちっさいし、ほっといたらすぐ誰かに踏まれて死にそうだもんな!」

『うっ……よ、避けるから!』

「無理だろー?」ケラケラ

『無理じゃないしっ』

「…そいや白狐、田噛にも気に入られてたよね!」

『田噛さん?1回私田噛さんに失礼なことしちゃって、泣いちゃったんだよね…』

「えっ田噛白狐泣かせたの?それ斬島に言ったらアイツキレるんじゃないの?」

『ううん、その時斬島さんも居たから』

「マジー?んじゃ俺が田噛と斬島怒っとくわ!

あ、白狐さー。この亡者倒したらこれからどーすんの?」

『神社に戻るつもり。折角出来たお友達と会えなくなるのは、寂しいけど…』

「あーそっかー、白狐こっくりさんだもんなー。呼ばれたら行かないとだもんなー」

『そうなの。でも、また遊びに行くね!』

「んー………ウチに住めばいーんじゃね?俺の部屋とか!」

『鳥居が無いと無理だよ』笑

「鳥居なんか作ればいーだろー?うん、そうしよう!肋角さんに今度頼んどくわ!」

『え、え、待って本気?』

「当たり前じゃん!なに、白狐は嫌なのー?俺らと住むの!」

『い、嫌なわけないじゃん…でも、いいの?』

「わからん!だから聞いてみる!」

『そっか……でも、みんなと一緒にくらしたら…楽しいだろうなぁ』笑

「だよなー!?よっし決まり!!!一緒に住もうぜ!」

『楽しみにしとく』笑



それから暫くして、斬島さんが佐疫さんを連れて戻ってきた


「やあ、君はさっきの…さすがにもう落ち着いたよね」笑

『あの時はごめんなさい、見苦しいとこを見せちゃって』

「気にしないでよ。……そういえば、楽譜がないね。何処かにないかな」

「俺が探しに行ってくる」


と言って、斬島さんは下に降りていった


「白狐、佐疫とも知り合いなのー?」

「あぁ、さっき田噛に泣かされたって斬島が連れてきてね。泣き止ませたんだ」

「なるほどー!なー佐疫、白狐を俺の部屋に住ませたいんだけど肋角さん許してくれると思うー?」

「え」

『ひ、平腹さんが俺の部屋に来いって』

「………んー、それは肋角さんより斬島とか田噛を説得したほうがいいんじゃないかな…?」

「そういえばそーだな!田噛に言ったら殴られそうだなー…」

「まぁ、肋角さんは許可してくれるんじゃない?ただ、こっくりさんから鳥居とか…作らなきゃいけないよね?」

『でも、小さなものでいいの。普通の鳥居じゃなくて、…そうだなぁ…その、平腹さんの帽子を横にしたぐらいの高さでいいんだけど…』

「それぐらいなら作れそうだ。平腹、俺が作っておくよ」

「まじでー!?佐疫ありがとう!」

「いいえ」笑


と、ちょうどタイムリーに斬島さんが楽譜を持って帰ってきた


私は斬島さんの肩に乗り、佐疫さんの演奏を聴いた











一言で言って、とても上手かった


まるでホントにこれまで練習してきたんじゃないかって位、うまかった


演奏が終わったあと、何処からともなく拍手が聴こえて後ろの扉が開いた。


『凄いね、佐疫さん……』

「そうだな。アイツは昔からピアノが上手いんだ」

『昔から…斬島さんと佐疫さんって古い付き合いなの?』

「そうだな、同僚の中では1番古いな」

『そっかぁ…いいなぁ、仲良しなんだね』笑

「…まあな。」



そしてまた扉をくぐった



扉の先にはまた長く続く階段があり、その先には血みどろの廊下が。


「白狐、大丈夫か。佐疫の所で休んでいてもいいぞ」

『大丈夫。斬島さんについていく』

「…そうか」


教室も穴や血でいっぱいになっている。


これはあの亡者、マキさんの心の姿なのだろうか。


と、その時何処からか声が聞こえた


「………ま……



き………しま………」


斬島さんのこと、呼んでる……?


突然横のガラスが割れ、両目のない人が顔を出した


「きりしまぁ!!!」


もう、死ぬほど驚いた。


声も出ないし動けなかったもん。


「…………

木舌か。何してるんだ。」


や、斬島さん冷静すぎない?


「ははははは!やっぱり斬島か!

良かったよ!何も見えなくて困ってたんだ!」

「何があったんだ。」

「いやぁ、亡者を追いかけたは良かったんだが

うっかり返り討ちにあってこのザマだよ。」

「なんだ。酒でも呑んでたのか。」

「まさか。1杯やるなら仕事終わりこそいいもんだよ。」


この木舌さんという人はお酒が好きなのだろうか。


やはり眼球のない眼窩が怖くて、ちょっと強く斬島さんの襟元を握った


するとそれに気づいた斬島さんが、


「白狐、大丈夫だ。こいつはちょっとおかしいが、悪いやつじゃない」

「え?他に誰かいるの?

というかおかしいってなに、俺普通なんだけど」

『あ、えっと、…は、初めまして。白狐って言います、』

「ん〜?足音は一人しか聞こえなかったんだけどな…」

『あ、私斬島さんの肩に乗ってるの。』

「小さいんだ。恐らくお前の指ぐらいしかないぞ」

「なるほどね、怪異か。初めまして白狐ちゃん、俺は木舌。そこの斬島と同じ、獄卒だよ」


目のない顔でにこっと笑う


この人は、紳士的な人なのかな。


獄卒さんは皆、目の色と性格が違うんだよね


「ところで斬島、一つ頼まれてくれないか。

こうも前が見えなきゃ仕事にならない

緑の目玉ふたつ、見つけてくれ」

「仕方ないな…。白狐、お前は木舌といるか?」

「そうだね、待っている間暇だし…白狐ちゃんと少し話してみたいな」

『あ、うん!待ってるね』

「ああ、行ってくる」



斬島さんが行った後、木舌さんは割れたガラスから教室の中に入ってくるように言った


「白狐ちゃんは何の怪異なの?」

『こっくりさんの怪異。知りたいことがあれば教えてあげるよ』笑

「あーなるほど、こっくりさんか…しかし、随分と斬島に気に入られてるみたいだね」

『そうなのかな…平腹さんにも言われた』

「斬島があんな優しい顔するのなんて初めて見たよ」

『……そ、そうかな…』







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