10.



鏡の世界から戻ってから、この世界は何だか


血が、多くなってる気がする。


それに平腹さんも見つからない。田噛さんは帰ってしまった。


私達は漸く、マキさんとまた会えていた


「いつまで逃げる気だ」


マキさんは振り向き、泣きそうな表情で言った


「どうしても連れて行く気なのね」

「当たり前だ。言っただろう、俺の役目だと」

「そう…」

「お前は罪のない生者の命を奪った。罪人には罰を、お前のやるべきことは懺悔だ。」


すると、またマキさんの雰囲気が変わった


「罪のない?

そんなわけない。そんなわけ絶対にない。

だってあいつらは私を傷つけた」

「それは命を奪うほどのことか?」

「うるさい!アンタに何が分かるの!?

あいつらのせいで私は死んだ!!あいつらに殺されたも同然!」



マキさんの心が、痛い


ずっとずっと何かが刺さっている


重い。暗い。痛い。


私は近くにいて、話を聞いてるだけなのにこんなに辛い


なら、このマキさんはどれだけ___




私は人間じゃない。


人間じゃないから、人間の心は分からない


ーー「白狐、…お前…人間じゃなかったんだな」

ーー「騙しやがって……!!消えろ!!」

ーー「お前なんか、」

ーー「お前なんか」

ーー「所詮怪異如きに、人間の考えは分からないだろうよ!」




「あいつらが悪くないと言うのなら」


私だって悪くない


「悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない、私は」





「悪くなんて、ない」










似てる。



私とこの人は、似ている


だからこそ、私には何も言えない


だって私は、勝てなかったから


負けてしまったから


………ダメだな、忘れた筈なのに。


「白狐、大丈夫か?」

『え、あ、……うん、大丈夫』

「無理するなよ。キツかったら言ってくれ」

『ありがとう』



この人なら、


この人なら救えるかもしれない



私には救えないあの子の魂を




何も出来ない私は、せめて


せめて、見守らせてね。マキさん




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