Queen of bibi
- ナノ -

紳士的な騎士の導き


「に〜ちゃん!こんな感じの衣装を取り敢えず試作ってことでに〜ちゃんサイズの作ってみたんだけどどうかな!」

数日かけて仕上げていたRa*bits用の衣装を彼らの練習場所に持っていくと、全員顔を輝かせて近寄ってくる。じゃーんと自分で効果音を付けて衣装を広げると、拍手と歓声が上がる。


「ね〜ちゃん凄いぜ!」
「おおっ、イラスト通りだ!Ra*bitsのコンセプトにも合うな!しっかし、これ自分で作ったのか?」
「そうそう!去年舞台用に何着も作ったから勉強してたんだけど、役立ってよかった……おばあちゃんに裁縫学びながら努力した甲斐あった……!」
「同じ演劇部として頭が下がるというか……」
「あはは、私も最初の頃作ってた服なんて……、練習用の無地の布、何枚無駄にしたかな……」
「遠い目してるんだぜ!?」


思い出せば思い出すほど悲しくなる、型紙通りに布を切ってミシンで塗っては縫いすぎたり糸が絡まったり生地が詰まってしまったりと一体ごみ袋何袋分の失敗を重ねてきただろうか。そんな努力がこうして演劇科以外で役立つ時が来るなんて考えたことが無かった。
なずなに気に入ってもらえたからあとは多少サイズを調整して同じものをあと三つ用意するだけだ。それもそれで大変なのだけれども。


「ぼくの校内アルバイト代で賄える位で作ってくれるなんて感謝してもしきれません……!」
「むしろ創くんが頑張ってくれたからこうして衣装も出来るわけだしね」
「創ちゃんのおかげなんだぜー!」
「私も校内アルバイト、時々やろうかなぁ……資金集めというか貯蓄も大事だし」
「アイドル学科の勉強とプロデュースでただでさえ忙しいんだろ〜あんまり無茶するんじゃないぞー。衣装作る時間も割かせてるんだから資金集め位は俺たちで頑張んないとな!」
「に〜ちゃんが本当にお兄ちゃんだ……あっ、そういえば一応考えてみてくれって言われてた練習メニュー作って来たんだけどね」


そんなものまで作って来たのかとなずな達は目を瞬かせるが、名前が取り出した練習メニュー表を見て、一瞬言葉を失った。
分刻み、という訳ではないけれど、一時間の間にやるべきメニューの量が普段自分達がやっているメニューの二倍以上はありそうだし、ステージに立つ体力やパフォーマンスを上げる分には役立ちそうではあるけど、こなすのが難しそうだ。特に一年生が集まっている自分達には。


「うわぁ……すごい、目が回りそうです……」
「こんなメニューやったら創ちんが倒れるって!」
「え、あぁごめんね……そっか……私の悪い癖だ……」


演劇科で今までやっていたような練習方法は良くなかったのだと自覚したばっかりだと言うのに、押さえたつもりでもついその癖が出てしまったのは非常に良くない。謝り、しゅんとしていると、なずながぽんぽんと肩を叩いて笑いかけた。


「出来は悪くないんだけど、勢いが過ぎるんだからなぁ。しょうがないっ、に〜ちゃんがこれを元にアドバイスしてやる!」
「に〜ちゃん頼りになる……!」


彼の気遣いに感謝して、彼と共にアドバイスを取り入れつつメニューを作り直す。そんな経験は初めての事だったけれど、皆と作っている一つのステージというものを実感できて楽しいと心から思えたのだ。

ーー嵐が居ないというこの日、昼休みに昼食を食べる為にガーデンテラスに行くのもいいかもしれないとぼんやり考え、お弁当を手に教室を出る。
偶にはちょっと奮発をして飲み物でも買ってリラックスした状態で練習メニューを考えたり、ステージの案を考えるのもいいかもしれないと温かい紅茶を頼む。以前は紅茶をそれ程飲まなかったが、創に淹れてもらううちに飲むようになったのだ。

ゆっくりと紅茶を一口飲み、お弁当を取り出したその時。「お姉さま!」と声が掛かって顔を上げる。自分にこの呼び方で声を掛けるのは一人しかいない。


「司くん!司くんとここで会うの初めてだね?」
「お姉さまは教室で食べていらっしゃるかと思ったんですが、今日は鳴上先輩と一緒ではないのですね。ご一緒してもよろしいですか?」
「うん、大丈夫。一人で食べようとしてたから。嵐ちゃん居ないとついつい一人でふらっと食べに行っちゃうんだよね。に〜ちゃんの所行くと……部長にからまれるし……北斗くん誘うのも何だか申し訳なくって」
「ううん……お姉さまに連絡をすればよかったですね。私がdigitalに詳しくないですし、個人的に連絡を送るのは失礼かと思いまして……」
「全然!そんなこと気にしなくていいのに。お昼一緒ってそういえば初めて会った時以来だね」


司と会えば話すし、他の人と比べてもかなり話している方だとは思うけれど、特に連絡などを取ったことが無かった。Knightsのプロデュースをしていないのも一つの要因だし、司を含めるユニットメンバーが個人間であまり連絡を取り合わないという雰囲気を知っているから、あまり無用で連絡をするものでもないのだろうと思っている所があった。
しかし、彼は機械に詳しくない為に連絡をそれ程しないだけであって、むしろtricksterとRa*bits以上には名前と交流したいと思っていたのだ。


「私も今日は持って来ているのですが、ここの雰囲気も気に入っているので足を伸ばしたらまさか会えるなんて。足を運んでみるものですね!」
「司くんもお弁当持ってきたりするんだね。……って、これ、本当にお弁当……?」


彼が取り出したお弁当は名前の知る一般的なお弁当というものではなかった。流石は御曹司であるだけあってかお店で見かけるような上等なランチのようで、ついついこっそりと自分のお弁当を隠そうとすると、司は悪気はないのか純粋な気持ちで覗き込んでくる。


「わ、私のは大したことないから!……これでも腕前は上がった方なんだけど」
「お姉さまがご自分で作っていらっしゃるのですか!羨ましい限りです……何にも勝る美味しさなんでしょうね……うう、美味しそうです」
「……食べる?自信は、ないけど」
「いいのですか!?」


じっと見つめては食べたそうにしている司にそう提案すると、素直に目を輝かせるものだからついつい笑みがこぼれて、どうぞとお弁当を差し出すと彼は私のもどうぞと自分の物より明らかに豪華そうなお弁当を渡してくれる。出来栄えの差が心苦しいけれど、こんなに美味しそうな昼食を食べられるなんて幸運だ。
頂きますと手を合わせて一口食べると、その美味しさに言葉が出て来なかった。食堂の料理もガーデンテラスの料理も美味しいけれど、上等な味がする。


「美味しい……食べるのが申し訳ない位美味しい……!」
「Marvelous!お姉さまの美味しいお弁当を頂けるなんて、私は幸せですね……お菓子もそうでしたが、本当に美味しいです。この私にお姉さまのlunchを分けて下さったことが嬉しくて午後も頑張れそうです」
「そ、そんなに?でもちょっと嬉しいかも。ありがとうね」


上機嫌な様子で頬張って美味しいと言ってくれるのだから可愛いもので、食べてもらってよかったと思える。
友也達Ra*bitsの皆に上げた時も喜ばれたものだけど、あれはなずなと一緒に作っていたし、人にあげるものだと意識して気合を入れた所もある。完全に自分用だった物を美味しいと言って貰えるのは嬉しいものだと緩みそうになる頬を押さえる。


「ところで、お姉さまは紅茶がお好きなのですか?頼まれていたみたいですが」
「創君が時々ご馳走してくれるから最近ハマってね!美味しかったからもう飲み終りそうだけど」
「む……でしたら、お姉さまに紅茶とお菓子を添えて振舞わせてください」
「え、いいの?司くんの用意するものってなんだかすごく美味しそう……」
「ふふ、お姉さまが下さるお菓子と比べれば大したことは。お姉さまの貴重なお時間を頂くのです。有意義な時間にすることを保証致します」
「あはは、私も今日は暇だし、そんなに重く考えなくても大丈夫だよ」
「お菓子はお姉さまのように自分が作ったものを用意出来ないのですが……なにせ、料理をしたことがないもので」
「そうなの?じゃあ今度やってみる?」
「本当ですか!……あ、失礼。嬉しくてつい。心から楽しみにしておりますね」


手料理を貰えただけでなく、まさか一緒に料理をしてくれるだなんて。あぁその日が楽しみだと胸が踊る。
話し込んでいると時間が経つのも早く、あっという間に授業が始まる15分前になり、放課後にこのガーデンテラスに来ることを約束して午後の授業へと戻っていく。教室に向かう司の足取りは軽かった。
自分がしていない事を他の一年生が名前としていることに僅かな嫉妬を覚えて我儘を言ってしまったが、それも受け入れてくれるのだから優しい。その優しさに後輩という立場を使って甘えてしまっているが、弟のように可愛がってもらえるのは悪くないのだ。

ーー放課後、ガーデンテラスで待っていると、名前が司の姿を探して辺りをきょろきょろと見渡していた。自分の姿を見付けて笑顔を見せるのだから、可愛いとつい零しそうになるが、可愛いという月並みの言葉を言うのは失礼かとぐっと呑み込む。そして椅子を少し引いて紳士的に席へと案内した。


「どうぞ、こちらへ」
「ありがとう……あはは、ちょっと照れるね」
「おもてなしをする以上、これ位は当たり前のことです。お姉さま、私とChessを一局どうですか?」
「チェス?わ、本物のチェス盤だ!少しやったことある程度だけど大丈夫かな?司くん、チェス得意そうだから相手にならないかもしれないけど」
「お姉さまとやることに意味がありますからお気にせず!しかし、したことがあるのですね。少し意外でした。教えて差し上げようとも考えていたのですが……」


つい残念そうな顔をしてしまい、はっと気付いた司は咳払いをする。今は相手をおもてなしする立場なのだから、本音はともかく困らせてはいけない。家訓に反してしまっている。


「ゲームのアプリでちょっとやってたんだけど、あまり上達しなかったからアンインストールしちゃって。上手い人に教わるいい機会かも」
「なるほど……お姉さまもgameにお詳しいのですね。ふふ、一局終わりましたら紅茶を淹れて、お寛ぎして頂きながらお姉さまさえよろしかったら、お教え致します」
「本当?よしっ、先輩として食い下がらないとね!」


白のピースを触り、やる気に満ちているのか不敵に笑う名前の表情は司が今までに見たことのないものだった。あぁ、こんな一面もあるのかと思うと同時にまた一つ新たな魅力を知った高揚感を覚える。
今だけは騎士として守る役割を忘れ、ゲームに興じよう。真摯に向き合い真剣勝負をすることこそが礼儀というものなのだから。

しかし、チェスを得意とする司相手に素人同然の名前が出来ることも少なく、キングを守るポーンも無くなった名前のキングを取りに、司は最後の一手を打つ。

「Checkmate」

司の流暢な英語と共にキングは取られ、勝負は付いた。悔しいと思う以上に、どうして数手先を読めるのかと感心するばかりだ。そして、それより気になったのが今の台詞だった。


「司くん、今のもう一回言って……」
「今の?Checkmateのことですか?」
「上手い人の英語は聞いてて幸せになるよねぇ……」
「……お姉さまは時々、こう、褒め殺しをしてきますね。狡いです」


聞き惚れてしまうような英語に名前は手を重ねてふふっと笑みを零す。素直な感想なのだろうが、それが心臓に悪いもので、司は照れたのか頬を染める。

気恥ずかしさを隠すように、紅茶を用意するとポットと茶葉を手に席を立ち上がった。
美味しい紅茶を淹れて差し出してくれる司に礼を述べ一口飲むと、素人でもいいお茶だと直ぐに分かるような仄かに甘みのある紅茶だった。そして用意されたクッキーを頬張り、その美味しさに幸せそうな顔をする。


「今日は司くんに美味しいもの貰ってばっかり……やっぱりこういうのに合うのはクッキーとかだよね。美味しい」
「喜んで頂けて何よりです。何時か、お姉さまが作ったお菓子と一緒に頂きたいですね」
「こんなに美味しいお茶があるなら頑張れそう!大仕事前にこんな息抜きさせてもらっちゃって、なんだか贅沢な気分」
「大仕事、ですか?」
「そうそう。今度B1だけど、限られた予算でステージの演出をtricksterの協力で任せられたの!非公式なんだけど司くんも良かったら見に来て欲しいなと思って」
「お姉さまがproduceするのですね!しかし、trickster……」
「あっ、流石に非公式だから誘うのは間違ってるね。生徒会に見付かったら即中止だし、低予算だからそんなに立派なものでもないし……」
「いえ、お姉さまの作るstageを見てみたいですから」


それも勿論本音だけれど、本当は自分達のプロデュースもして欲しいという本音も確かにあって。やはりtricksterや他のチームを羨ましく思ってしまうが、司はそんな負の感情を振り払うように首を横に振る。こうして二人きりの時間を独占出来ているのは自分なのだから。


ーー名前がB1のドリフェスが行われると言っていた日、司は名前が担当するということで話しに乗ってくれた嵐と共にそのドリフェスを見に来ていた。
非公式とはいえ生徒会の干渉がないB1がやはり一番活気がある。

ステージは講堂などで出来ない野外ライブだが、何時ものB1のステージよりも装飾が目を引く。生徒達も集まっているが、tricksterの中に衣更真緒が居るのもあって、生徒会の監視は薄そうだった。
tricksterが相手チームの後に出て来て、パフォーマンスを行う。彼らのパフォーマンスの完成度は勿論だが、それを更に引き立たせるような演出がされていることに二人は気付く。そしてライブが終わったと同時にペンライトは輝き、それと同時にライトも同じ色に光る。


「敵を褒める訳ではありませんが確かに素晴らしいstageでした。しかし、それ以上に……」
「これをあの子が、低予算の中で仕上げたの?何というか、演劇科から引き抜いてよかったのかしらって思っちゃうわね」
「足元の照明や旗を上手く使い、後ろの幕も最後落として終わるなんて斬新というか、つい目を留めてしまいますね」
「フフッ、このままじっとしてたら名前ちゃん、他のとこに引き抜かれちゃうかもしれないわねぇ。司ちゃんはもうその心配、してるみたいだけど」
「……最大の敵は身内にあり……瀬名先輩への苦手意識をお姉さまが解いてくれるといいのですが」


それが最大の壁である。凛月に関しては顔を知っているし、時々寝る場所を教えたりお菓子を上げているらしいから問題はないだろう。
しかし、泉が問題だ。tricksterと親しいということは彼が気に入っている遊木真と親しいということで。もう既にそれを気に入らないと見られているのなら、難しい。頭を悩ませる司を気の毒に思っていた嵐だが、ふと思いついて彼に提案した。


「というか、個人レッスン頼んでみればどう?」
「なるほど!個人的に教わってみるという手がありましたね!knightsでも私は新入りで最年少……個人lessonをしたいとお姉さまを説得するには十分の要素です。しかし、鳴上先輩は宜しいのですか?」
「えー、アタシは必要以上に練習頑張りたくないもの。今は遠慮しておくわ」
「そうですか……頼んでみるというのもいいかも知れません。他の一年生と差を付ける機会ですし」
「うふふ、司ちゃんったら熱心ねぇ。そんなにあの子のことが気に入ったの?」
「……えぇ。未熟な私に色々教えて下さるし、邪険にもせず面倒を見てくださいます。気立てが良く優しいですし、何より、stageへの高い意識も尊敬できますから。素晴らしい先輩です」
「先輩、ねぇ……」


名前に駆け寄って声をかけ、楽しそうに話している司の後ろ姿を見つめ、嵐は肩を竦める。
名前を先輩として慕っているだけなのに独占したいと思っているのは大人びて見える彼の幼さ故なのか、それとも後輩として甘えたい盛なのか。男子の先輩とはまた違って女生徒もなると懐きやすいのかもしれない。
それでも彼が純粋かつ自覚していないのは事実であり、ある意味タチが悪いものだった。


ーードリフェスの後に司に頼まれた個人練習を引き受け、名前は放課後に自分も動きやすいTシャツとパーカーを着て司との集合場所であるレッスンルームへと急いだ。彼の努力家な一面は素直に好感が持てるし、強豪ユニットに所属する一年生としてもっと成長したいと思うのも理解できる。断る理由なんて全く無かった。


「お待たせー!」
「お姉さまの練習着を初めて見ました……!」
「パーカーって動きやすいからね。あっ、これメニューなんだけど……に〜ちゃんに注意されたから、一応気を付けたんだけどどうかな?」
「これは……なかなか、hardですね」
「やっぱり!?ええっと、じゃあここ休憩に変えよう!……に〜ちゃんにも言われたけど、色んな人から見ても詰め過ぎなんだね……ごめんね。ここちょっと変更するから!」
「いえ、寧ろお姉さまが私のことを考えて作ってくださったのかと思うと嬉しいですから、そんな顔しないでください」


胸に手を当てて微笑む司に、名前は瞬く。レッスンルームの鏡に映ってる自分の顔は情けないほどに眉が下がって悲しそうな顔をしていた。
また引かれてしまったらどうしようーーそれで演劇科の時のような練習になってしまったら。そんな不安が頭を過ぎったのだが、司は嘘やお世辞ではなく否定をしなかったのだ。たったそれだけだが、名前にとっては堪らなく嬉しかったのだ。
感無量といった様子で俯くと、彼は焦ったようにどうしましたかと声をかけてくる。


「……ううん、学校受けしない舞台をこんなに練習して何の意味があるんだって言われてたから……そう言ってくれるの、嬉しくて。皆がやりたい学校用の物と私がやりたい物が違ったから」
「それは……」
「あはは、ごめんね。らしくないこと言ったね」


つい弱音を吐いてしまったと申し訳なさそうに肩を竦めるが、今の言葉で司の中で幾つかのことが繋がった。
あんなにも華やかな舞台で演劇をしていたのに一切楽しそうでなかったのには周りとのすれ違いがあったからなのだと。名前が提案し練習を指示していた舞台は一般客には受けたが、学園の評価を気にする生徒にとっては危ない綱渡りだったから嫌がられたのだ。ただ、彼女が結果を出した為に表立って否定こそはしなかったが、受け入れようとしなかったのだ。
それでも弱音を吐かずに、すれ違ったまま一年過ごしたのだ。しかし周りだけが悪かったというだけでなく、名前自身ももっと周りの意見も聞いていればよかったと己の過ちを反省しているし、この学科に来て変わり始めていると言っていた。

人に聞かせることでも無かったのにと、苦笑いを浮かべて誤魔化すように話を戻そうとした名前だが、司は僅かに背を曲げて視線を合わせ、手を差し伸ばした。


「……お姉さま、苦しい時は声にして下さい。少なくとも私は、その声を聞いて受け止め、手を差し伸べたい。未熟者ですが、そんな私でもお姉さまに出来ることがあるかもしれませんから」
「……ぁ、つ、司くんって狡いよね……」
「狡い……?私が、ですか?」
「ううん、気にしないで。ありがとう、なんか元気出たよ」


紳士的すぎて、彼の発言は時折心臓に悪い。でもそれが彼の地であるし、人として、そして彼というアイドルの魅力なのだろうと名前は自己完結をするかのように頷いた。