開戦二日目


=本部後方 岩壁地帯=

「なあ、サキ。あちこちでモヤモヤしたもんが広がってる」
「モヤモヤ?生体反応は幾つも感知できるけど」
「オレってば、このモードだと悪意が分かるっていうか……って、うわ!!」

ナルトとの会話の最中、目の前に土埃が立ち、綱手とエーが現れた。
二人とも鬼の形相である。そりゃそうだ。
保護拘束と言われていたのに勝手に亀島から抜け出し、あまつさえ戦場に向かっているのだから。

「この戦いはお前達を守る戦いだぞ!お前らが捕まれば――」
「敵の術が完成してこの世の終わりなんだろ!イルカ先生から聞いた!」
「なら何故行こうとする!?大バカかお前らは!」
「そのせいで皆がやられんのは我慢ならねえ!皆が死んで戦争に勝ってオレだけ生き残ったってそんなの意味ねえ!オレは嫌だ!」
「四の五の言うな!お前は行かせん!」

エーは殺意を持ってナルトに襲い掛かった。
立場上綱手はナルトを庇うわけにいかず、ナルトは身につけたばかりの九尾チャクラモードでエーの攻撃に耐えた。
だがまだ不慣れな九尾チャクラモードのナルトの方が不利だ。

「お前はこの場で殺す!そうすれば九尾復活まで一時の間時間が稼げる!敵も計画を先送りせざるを得なくなるしな!」

エーはナルトに再度攻撃しようとしたがその眼前にはビーが立ちはだかり、振り上げた拳はサキの赤縄捕縛により拘束された。

「ビー!お前」
「そういう事なら八尾のオレが死んでも同じ。そうすりゃ敵の計画とやらも台無し。ナルトが戦場へ行けるようオレの命を投資」
「ビーのおっちゃん……」
「ナルトを殺すなんて悪手でしかないですよ、雷影様。時期延ばしは意味がない」
「何だと」
「ここまで動いてるマダラが手を休めるわけがない。今いる尾獣だけでも魔像に取り込んで、忍連合軍も今倒しておけば復活まで邪魔は入らない。長期戦で不利なのはこっちの方です!」
「ぐ、、」

サキもビーも決して折れない。ついには綱手も三人の固い意思を汲み行かせようとエーに説いた。
頑なだったエーも人柱力である弟のビーの説得で心を動かされ、ナルトを試すため全力の雷犂熱刀を繰り出した。
ナルトはかつての黄色い閃光を思い出させるスピードでそれを避けた。
これにはエーもナルトの実力を認めざるを得なかった。

「行ってこい……」

エーが渋々呟くと、ナルトは朝日を背に「オウ!」と答えた。


この岩壁地帯を抜ければいよいよ敵のいる戦場だ。

(絶対に尾獣を取り戻す。そして……)

(マダラ、今度は私から会いに行くから)


***

***


数十分後三人の脳内に本部にいる奈良シカクから連絡が入った。

『綱手様から話は聞いた。このタイミングでお前達が戦場に来たのは不幸中の幸いだ』
『戦況は?』
『敵十万、連合軍八万のうち昨日でそれぞれ半分ずつに減った。だが敵は初代火影様の細胞で動くように改造された植物共に、穢土転生の術で復活したあの世にいるはずのゾンビ共だ。封印しないと止められない』
『だいぶ状況が悪いですね』

シカクの話を聞く限り、こちらが生身の人間である以上そんな不死身集団相手では、もう今日明日にも戦争を終わらせないとジリ貧になる。確かにサキ達が戦場に来たタイミングは良かった。

シカクとの通信途中、前方から連合軍の忍が何十人と現れた。本部の守りを固めるための増援らしい。
だがナルトはサキより前に出て、その増援に突っ込んでいった。

「あれがモヤモヤの正体だってばよ」
「?」

サキとビーには分からないまま、ナルトはその中の一人を蹴り飛ばした。すると男の顔も服もボロボロと剥がれ、真っ白の人形に変わった。

「あれが柱間細胞の改造植物?」

倒れるとその身から木を生やして動かなくなった。
九尾チャクラに呼応するように、九尾チャクラモードのナルトに攻撃された白ゼツはどんどん木に変わる。

サキにはナルトの言う悪意とやらは分からない。
自分の感知能力をも上回る悪意を識別する九尾チャクラモードに敵わないな、と内心思いながらサキはナルトに指示を仰いだ。

「どいつが敵?」
「ナルトの指示した奴だけ負かす!」
「じゃあ全員だってばよ!」
「「オッケー!!」」

サキは纏まっている白ゼツを結界に閉じ込め動きを封じた。そしてその中に細工をしたチャクラを強制的に流し入れた。そのチャクラを吸収し白ゼツはみるみる植物の姿へと変貌する。

「やっぱり。九尾チャクラに反応するのね。これならいくらでも無力化できる」

サキがしたのは"心臓"から練られる自然エネルギーを九尾チャクラへと変換することだった。
悪意の分からない自分では見ただけで白ゼツを見極めることは難しいが、ナルトに全てを背負わせないように、咄嗟に考えた案にしては使える。
ナルトとビーもそれぞれ撃退していた。

『その白ゼツは奪った相手のチャクラごとコピーし、連合軍の内部で混乱を招いている。ナルト――』

シカクからの指示を聞き、ナルトは頷いた。

九尾チャクラモードのナルトを全戦地に派遣だなんて、合理的だけど無茶苦茶だ。それでもナルトは自分の身なんて二の次で十数体に影分身をした。

「こっからは全ての戦場に一気に向かう!」
「……私も行く」

ナルト本体の隣で印を結ぶと、ナルトは驚いた顔で横を向いた。
分身ナルトの横に同じ人数のサキが現れる。サキは首だけ回してナルトを見つめた。

「私には敵の悪意は見えないけど、一緒に戦うから」
「な、、」
「今ナルトが思ってること当ててあげようか。また無茶して、オレが全部やるってばって、違う?」
「う……」

分身のサキはナルトを置いて各方面に駆けていく。分身ナルト達は待てと言ってそれぞれ追って行った。

「無茶するなら一緒にだよ。さあ、私達は引き続きマダラを追おう!」
「おうよ!」
「……ああもう!分かったってばよ」


prev      next
目次



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -