忘れてはいけないこと


森の中に入ると懐かしい敵に相対した。

「うちはイタチに、長門!?」

うちはイタチと長門――暁の一員で二人ともナルトとサキを狙ってきた人物、そして二人とも死んだはずの人物だった。
となれば、この二人は穢土転生で蘇ったゾンビということ。

「まさかお前達と闘わされることになるとはな」
「知り合いか?」
「昔戦ったことがあるんです。暁の一員です」

長門もイタチも今は戦う意志はない。
術者に操られているというわけではなさそうだった。

「その姿、九尾チャクラをコントロールしたようだな。まさかここまで成長するとはな」
「流石オレの弟弟子だ」
「ああ、色んな人に助けてもらって、皆のおかげでここまでこれた」
「そうか……ナルト、お前に聞きたいことがある」
「オレもあんたに聞きたいことがあったんだ!」

ナルトとイタチが互いに言うと、それを遮るかの如く穢土転生の術者が裏で印を組んだ。
長門とイタチの雰囲気が変わり、イタチはナルト達に向かって火遁・豪火球の術を繰り出した。
それをビーが鮫肌で真っ二つにし、左右に半分の火球が飛んでいった。

「ナイスです!ビーさん」

サキはイタチと長門の足元に鎖を出し、そして二人は別々の方向へ避ける。飛んだ先でナルトがイタチを蹴り、そのフォローにビーが入り、サキは長門を相手取る。

「随分と力を操るようになったな」
「おかげさまで!ナルトこの二人分断させよう!」
「分かった!サキ一人で大丈夫か!?」
「一度戦ってるんだから大丈夫!」

長門は口寄せ動物を、サキは土ゴーレムを呼び出した。そして互いに上に乗り、ナルト達から離れて戦った。

イタチvsナルト、ビーの戦いも互いに譲らない戦闘を続けている。イタチの瞳術、月読と天照に注意しながら――
拮抗していた闘いもイタチのとある術によりバランスが崩れた。
なんとナルトの口の中からカラスが現れたのだった。

「ううう゛う゛ーー」

そのカラスとイタチの目が合うと、イタチの雰囲気がまたも変わる。その変化を察知したサキはゴーレムから降りてナルトの元に駆け寄った。

「大丈夫?」
「なんで、口からカラスが……あ、そういや、あの時」

サキがダンゾウに捕まっていた間、ナルトはイタチに会っていた。その時イタチの術でカラスが口の中から入ってきたのだ。
『お前にオレの力を分けてやった。その力使う日が来なければいいがな』
イタチに言われたことを思い出し、ナルトは口を拭う。

よく見ればそのカラスの左目も写輪眼だった。

「何するつもり?」
「どうなってんだってばよ」

誰もが状況を飲み込めない中、イタチの天照が発動した。それも対象は長門が口寄せした攻撃すればするほど頭の増える犬。
続けて味方であるはずの長門に狙いを定めた。

長門に天照が当たったことを確認し、イタチはナルト達の元へと飛んできた。

「うわ!来た!」
「落ち着け……オレはもう操られていない。この敵の術の上に新たな幻術をかけた。よって穢土転生の術は打ち消された」
「穢土転生を?そのカラスの写輪眼が関係してるの?」
「ああ。コイツの左目はうちはシスイの万華鏡写輪眼、"別天神"だ。シスイの瞳力は対象者が幻術にかけられたと自覚する事なく操ることが出来る最強幻術、"木ノ葉を守れ"という幻術を仕込みお前に渡していた」
「なんでオレにそんな眼を?」

里を守るためにこの眼を使ってくれ――かつて親友のシスイから受け渡された写輪眼をイタチは木ノ葉のために使おうとし、同じ気持ちを持っていたナルトに託してこの世を去った。

自分が残したサスケがもしも里の脅威になることがあれば、それを正すために。里と弟のことを思って――

「イタチ、信頼してくれてありがとう。もう心配ばかりしなくて良い……アンタは里のために十分すぎるほどやったじゃねーか。後はオレに任せてくれ」
「弟はお前のような友を持てて幸せ者だな」

会話の後ろで強風が吹いた。
天照の黒炎により燃えていた長門が神羅天征で炎を飛ばし、不死身の体が再生していた。

「そうか、あの体封印しないといけないんだった」

穢土転生の体は致命傷を与えようとも時間が経てば復活する。長門程の実力者であれば天照を喰らおうとも動けるようだ。

だがイタチが穢土転生の術から逃れたことで術者も本気になり、長門の体の自由は完全に奪われ容赦なく攻撃をしてくるようになった。
ナルトとビーが先行して、サキも後に続こうとしたが、イタチに止められる。

「お前は封印の用意をしておけ」
「でも」
「隙を作る。一気にやるぞ」
「……分かった」

前まで敵であんなに怖かったのに、味方となると頼もしい。
長門の地爆天星に対し、イタチの須佐能乎"八坂ノ勾玉"とナルトの風遁螺旋手裏剣、ビーの尾獣玉で反撃し、長門の隙ができたところにサキの封印術を当てた。

鎖が絡まり長門の外殻がボロボロと崩れていく。そして元々この術の犠牲になった人間の死体が残った。

「この穢土転生とかいう術、気に食わねえ。戦いたくねえ人間と戦わされる……恐らく他の戦地でもそうなんだろ」
「そうだろうね。この術者きっと頭が切れるタイプだ。こっちが戦いにくい相手をわざとぶつけてきてるかも」
「……穢土転生はオレが止める。マダラはお前達に任せる」
「「!!」」

イタチの言葉にナルトは咄嗟に反論した。

「イヤ……オレが止める!さっき言ったはずだ。後はオレに任せてくれって!」

里のために死んだイタチにもうこれ以上無理させるわけにいかない。
ナルトは影分身の印を結んだが、九尾チャクラモードの使い過ぎによりいつものナルトが一人現れただけ、九尾チャクラモードは完全に切れてしまっていた。

「それ以上分身するな、ナルト」
「一人で無理をしようとするな。この穢土転生を止めるためにオレが打ってつけだ。考えがある」
「……この戦争は全部オレ一人でやる!全部オレが引き受ける!それがオレの役目なんだ!」

ナルトの気持ちは理解できるけど。だが気負いすぎだ。周りが見えなくなっている――
言いたいことがたくさん脳内で溢れたが、今は自分よりもイタチの言葉の方が響く気がして、サキは黙って二人の問答を聞くことにした。

「お前は確かに強くなった。だがそのせいで大事なことを見失いかけているようだな」

「お前は"皆のおかげでここまでこれた"と言ったな。力をつけた今他人の存在を忘れ、驕り、個に執着すればいずれ、マダラの様になっていくぞ」

イタチの言葉でナルトは焦っていた自分、見失いかけていた仲間の存在にようやく気づいた。
そして肩を落とし弱々しい声で呟く。

「……確かにオレが何とかしなきゃダメなんだって、思い込みすぎてたのかもしんねぇ」

サキはそんなナルトの前に回って、下を向くナルトの視界に手を差し出した。

「一緒に戦おう。だからこそ分身ナルトに一人ずつ私をつけたんだもん。ナルトだけに背負わせたりしない」

ナルトはサキの手を取り、そしてその感触に驚いた様に顔を上げた。

「これ、、チャクラ?」
「そう。"十尾の心臓"だからね。九尾のチャクラなら難しい条件なしで変換できる」
「すっげえ……ありがとう、サキ」
「どういたしまして」

そしてイタチは穢土転生の術者を、ナルト達はマダラを追うことで決まった。
イタチを見送り、ナルトはサキから受け取ったチャクラで再び九尾チャクラモードになった。

「サキのチャクラ生成に尾獣チャクラモードって無敵コンボじゃねーか?」
「んー、今のところは……」

魔像が動いてない今、チャクラ生成の主導権がこっちにある場合に限り確かに有効だ。それに他にも不便な点はある。

「でもチャクラ生成も変換も出来るのは本体だけなんだ。各地に送った分身じゃ出来ないよ。だから無茶するならここにいる本体だけにしてよね。二人ともだからね!」
「ういー」
「うっす」


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